第53話 混浴風呂って大体こんな感じ
「ふぃぃ」
昔に造られたであろう露天風呂に入り一息吐く。
造られたと言っても温泉は森から湧き出る天然温泉の掛け流し。造られたのは岩でできた浴槽と脱衣所代わりの小屋だけだろう。
岩の浴槽の造りは荒く、座り心地はお世辞にも良いとは言えないが、温泉の成分が良いのか、非常に気持ちが良い。
今日はこの森で大量の魔物と戦った。その傷と疲れを癒してくれるかのような温泉。
「ん……?」
ワーウルフとの戦闘で傷ついた足が治っている?
もしかしたら気分的にではなく、本当に傷を癒してくれているのか。
だとすると、この温泉はものすごいものなのでは?
覚えておこう。
「──にしても、露天風呂で赤ちゃんプレイって……なにするんだよ……」
顔を、バシャバシャと洗い呟いてから小屋の方を見る。
一応、紳士、淑女の教えなのかどうかわからないが、脱衣は別々で行うことにした。
結局、一緒に入るって言ってるんだから同じようなものだけど、そこはローラがきちんとしているみたいだ。
元々、露出度の高い服は服だけど、あのローラの身体の生まれたままの姿というのは……その……うん、ね。
「リッ──ぐふっ!」
「え?」
俺の名前を呼んだかと思うと、明らかにダメージをくらった声を出していた。
心配になり様子を見に行こうとしたところで。
「リッタあ!」
聞きなれた声だが、ここにいるとは考えられない声がした。
「とぅ!」
ザバァァン!
目の前になにかが落ちてきて、激しく水飛沫を上げると、すぐに正面から柔らかい感触があった。
「来た」
「フレデリカ!?」
いつもの正面から抱きついてくれるポジションにフレデリカが現れていた。
最終防衛ラインなのか、ちゃんとタオルを巻いて身体は隠してくれているが、賢者の服よりも圧倒的に薄い。というかほぼ素肌のため、女の子の感触をダイレクトに感じる。
いや、今はフレデリカの感触を楽しんでいる場合じゃない。
「どうしてここに!? というかどうやってここに!?」
素朴な疑問に彼女は端的に答える。
「『エフュージョン』で」
「その魔法は場所とかに使う魔法じゃないのか?」
「フレデリカクラスになると、知っている魔力を感知できる」
はは。すげーや。チートじゃん。
「ま、まぁそうだとして……どうして今の状況に?」
困惑を隠しきれないでいると「それはですね」と月の光を浴びたプラチナの髪の美少女が、バスタオルを巻いてやってくる。
ルナ。
なんでそんな格好なのに神秘的に見えるのか。意味がわからない。
「リッタ様がローラさんのいる森に行ったという情報をマリナさんから入手しまして。そのような状況は見過ごせないと思いフレデリカさんに頼み、みんなで来ました」
ルナは説明しながら湯船に浸かり、俺の右隣に腰掛ける。
「そうしたら案の定です。あの淫乱糞乳娘、露天風呂なんか見つけて裸でリッタ様に迫ろうとしており、既成事実を作ろうとしておりました。許せません。ええ。許せません」
「ええと……。その淫乱糞乳娘は何処へ?」
「はい。獣臭いので天日干ししておきました♪」
「天日干しの意味知ってる!? お日様いないよ!? 今はお月様ですよ?」
「じゃあ、獣はお月見中です。獣臭いし、月を見て吠えているのでしょう。今日は十五夜ですから♪」
「違うよ!? もう色々違うけど、まず今日は十五夜じゃないよ!? 見て! 三日月だから!」
「まぁ♪ こんな綺麗な三日月をリッタ様と見れるなんてルナは幸せ者です♡」
「俺もだわ」
とりあえずまぁ……ローラはしばかれたのだろう……。
「それにしてもフレデリカさん? お風呂で抱きつくのは淑女としてどうかと思います。それでは淫乱と変わりありませんよ?」
そう言いながらも、十分に距離が近いルナ。
自分のことは棚上げ、という言葉の良い例を見た気がする。
「身体に自信がない女の嫉妬は醜い」
「なっ!?」
ルナが声を詰まらせて、キリッとフレデリカを睨む。
「ローラさんに言われるならまだしも、あなたみたいなお子ちゃまに言われるのは心外です。寸胴さん」
「ハンッ」
フレデリカは、これでもかと言わんばかりに嫌味な笑いをして見せた。
「わかってない。リッタはロリコン」
「ちょっと待て。俺はロリじゃないぞ」
「それでいてフレデリカが好き」
だめだ。聞いちゃいない。
「それを言ったらリッタ様だって私のこと好きですぅ。ね? リッタ様」
「う、うん。好きです」
「きゃっはぁん♡ リッタ様ぁ♡」
テンションの上がったルナが俺の手を湯の中で握ってくれる。
かと思うと、仮面を切り替えたみたいに勝ち誇った顔をしてフレデリカを見下した。
「ほらぁ! 聞きました? 聞きました!? 今の2人のラブラブの会話!」
「ははん」
フレデリカは余裕の嫌らしい笑みを浮かべた。
「答えを求めるとか、メンヘラのすること」
「メンっ!?」
「フレデリカラブ+ロリコン。ということはフレデリカのボディがリッタの理想のボディ。この小さな身体を貫きたくて、今もリッタの息子達は疼いている」
「やめてくれない? はっきりそういうのやめてくれない?」
ロリで疼いているかはともかく、この状況で疼かなかったら男じゃないからね。
「そもそも、ルナの身体が1番だめ」
はっきり言われて「はぁ!?」とルナが大きく声を荒げる。
「この体型のどこかダメなんですか!? ええ!?」
「中途半端が1番ダメ。フレデリカはロリという属性。ローラは巨乳という属性。そしてエリスは貧乳属性。それぞれ属性がある。ルナは中途半端」
「あー」
まぁ確かに……。属性を表したい時、ルナの場合どこにも属さない身体ということになるのか。
「リッタ様まで……くっ……屈辱です……」
ぐぬぬぬぬとひ歯軋りを立てて険しい顔を見せる。
「エリスに負けている時点で終わり」
「エリスさんに負けているのが1番悔しい……」
「あんたらああああああ! 黙って聞いてたら王たるわたしを侮辱しやがってえええええええ!」
唐突にエリスがいつものドレスに身を包んだまま現れる。
「あ、やっぱりいたんだ」
「いるわよっ!」
さっきルナが、みんなでって言っていたのでエリスもいると思っていたが、中々現れないのでちょっと心配した。
「それよりそこの小娘2人っ! 妖精王のわたしを侮辱してただで済むと思っているのかしら!?」
「「うるさいヘタレ」」
さっきまで言い争っていた2人とは思えないほど息の合った返し。
「そもそもですよ? なんでお風呂で服来ているんですか? 恥ずかしんですか?」
「チキンの王様。そんなヘタレは卵でも産んで農家の役に立ってろ」
フレデリカの言葉きっちぃ。ルナも若干引いてるじゃん。
「があああああああ!」
あ、エリスが切れた。
なんとも言えない叫びを上げると、エリスは勢いよくドレスを脱いだ。
あら……小さな山2つ……。
「これでどうじゃああああああああ!」
「「あああああああ!!」」
ルナとフレデリカは大きな声を出すと、エリスの方へと向かっていき自分の巻いていたタオルでエリスの身体を覆う。
「エリスさん! ダメじゃないですか! 裸でリッタ様に迫るとリッタ様が困るから、せめてタオルは巻きましょうって約束したでしょ! 裸で赤ちゃんプレイをしようとした淫乱糞乳娘と同じ末路を辿りますよ!」
ローラの赤ちゃんプレイ性癖が勇者パーティ内に知れ渡っている。
「約束は守るべき」
言いながらフレデリカがこっちにポージングして見てくる。
あれ……。もしかして俺ってマジモンのロリコンなのかな……。
「あ! この寸胴めっ! リッタ様ぁ♡ こっち見てください♡」
「ぶっ!」
ルナが自分の方へと視線を向けるように言ってくるので見ると俺の血液が逆流してしまった。
中途半端とか言われてたけど……。
綺麗な顔に綺麗な身体見たら抱きたくなるだろ……。
意識が遠くなり、俺は湯舟に沈んでいった。
「どわっしゃああああ!! 勇者共おおおおおおお! 根絶やしにしてやるううううううう!」
最後に聞こえたのは、裸でブチギレる妖精王の叫び声だった。




