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第52話 森の温泉

ベヒーモスと別れ、森を出ようとしている道中のことだ。


 すっかり日が暮れてしまい、辺りは暗くなってしまっている。


「迷ったあああああああ!」


 俺の声は月まで届くかと思うほど響き渡り、驚いた辺りの鳥達が一斉に木々から飛びだっていった。


 バサバサバサ! ザアアアアアア!


「ひぃ!」


 暗い森の中で、凄い音がしたから情けない声が出てしまう。


「あはは。リッタくんってこういうの苦手だよねー」

「しょ、しょがないだろ。怖いんだから! 笑いたきゃ笑ってくれ!」

「別に笑わないよー。苦手なものなんて人それぞれでしょー」


 優しく笑ってくれるローラだが、俺の心は冷静になれない。


「小便漏らしたら世話してくれ!」

「飲んであげるよ」

「むしろ飲ませてくれ!!」

「え? 飲みたいの? 良いよ」


 怖くて、勢いで言った言葉をすんなり受け入れてくれる。

「あ、いや……。うん。なんか冷静になった。勢いに任せて凄いこと言ってごめん」

「あたしはリッタくんのなら良いけど?」


 暗闇に光る琥珀色の瞳は多分マジで言ってそうで、こっちの方が怖い。


『キュオオオオオオ!』

「うおっ! 無理無理無理! この森無理! ローラ可愛い!」

「あははー。しょうがないなぁ」


 ローラが優しく手を握ってくれる。


「これで怖くない?」


 コクリと頷くと、優しく、ギュッギュッと手を握ってくれる。


「でもさ、海賊船の時はそうでもなかったくない?」

「あれは霊的じゃなくて、ちゃんと歴史があるだろ。今のこの不気味な感じが苦手なんだよ」

「あー。自分で想像しちゃう系ね。リッタくんって想像力豊かそうだもんねー」


 ローラのいう通りだと思う。


 俺って結構想像力が豊かだから、現実にないものを勝手に想像してしまう。


 夜眠れない時とかよく母さんのベッドに潜ったっけ。


 そういえば、父さんもこういうの苦手だった気がするな。


「想像力といえば、知ってる?」

「え? な、なに?」


 いきなりの話題提供に怯えた声が出てしまう。


「あははー! 声震えてるよー?」

「今の、流れ的に怖い話しする気だったろ!? する気だったろ!?」

「そんな話ししないよー」


 笑いながらローラが続ける。


「昔、想像を創造するスキルを持った人がいたらしいよ」

「想像を創造?」


 なんだそのスキル。


「凄いよね。剣とか槍とか。未知の武器とか創造してさ。噂では人も創造できるらしいよ」

「なら今すぐに昼にして欲しいわ! マジで、本当に、マジで」

「マジでを本当にで挟むくらいマジで怖いんだね」


 少し呆れた声を出すローラが「ちょっと待ってね」と言いながら手を解く。


 すると地面を軽く蹴り、森の大木よりも高くジャンプした。


「あっ! ちょ!」


 俺の間抜けな声が出ている間にローラが見事に着地を果たす。


「ダメだよ。暗くて何にも見えない」

「バカあぁ。俺を1人にするなんて、もう、バカァ。怖かったぁ」


 言いながら、ガシッとローラの腕を掴む。


「人って苦手なものを前にすると、いつもと全然違う感じになるんだね。でも、これはチャンス」


 ローラが目を光らせて俺を見つめる。


「よしよし。ローラお姉ちゃんがいるからねー。バブバブー」

「あ、あかん。獣臭い」

「よおしわかった。良い加減匂いの件について白黒付けようか」

「ごめん。バブバブーって言ったからそういうノリかと思って」

「どういう解釈!? 普通に赤ちゃんプレイをご所望だよ!!」


 森にローラの声が響き渡る。


「なんでこんな夜の森であたしは性癖を曝け出した!?」

「まぁ人それぞれだから……うん。俺はしないけど……」

「やってよ! 一緒に赤ちゃんプレイしてよ! リッタくんを可愛がりたいんだよ!」

「はは」

「愛想笑いするなっ!」


 ローラは俺を睨みつけてくる。


「リッタくん。きみ、まだ余裕あるね。置いていくよ?」

「ちょ。マジでごめんバブ! もう煽らないから置いていかないで欲しいバブ!」

「はい煽られましたー! ローラは傷つきましたー! 語尾にバブをつければ良い問題ではありませんー!」

「そもそも、赤ちゃんプレイとは?」

「そりゃ……。リッタくん。おっきしたの──もうっ! 言わせないでよ!」

「はは」

「さっきからその笑いやめてよー!」


 そんなことを言い合って森の中を歩いていると、チョロチョロと水が流れる音が聞こえてくる。


 夜の森の中なので音が響き、よく聞こえてくる。


「もしかして泉の方に戻ってきたのかな?」


 ローラが、おかしいなぁと言いながら続ける。


「泉を背に真っ直ぐ歩いたはずだけど」

「迷いの森的な感じなの? 更に怖さに磨きをかけてくるスタイルなんなの? しばかれたいの? 俺にしばかれたいの? むしろしばかれてるの俺だよ? ひゃ!」

「ダメだ。リッタくんがバグった。早くなんとかしないと」


 ローラが呆れた声を出していると、目の前にモヤがかかったような気がする。


 霧にしては薄い。


 なんだろうと思っていると、そのモヤに当たると少し温かった。


「これって」


 ローラがなにかわかったのか、ザッザッと進むので俺は彼女の腕にしがみつきながら、なんとか並行して歩く。


 水の音が近くなり木々をかき分けた先にあったのは。


「温泉だ」


 そこには岩で整備された温泉があった。


 小さな小屋みたいなものも隣に建ってある。おそらくは脱衣所だろう。

誰かが造った露天風呂だろうか。


「なんでこんなところに温泉があるんだろう」


 ローラが心底疑問に思ったことを口にする。


 そりゃ、人も来ないこの場所に、整備された露天風呂があったら不思議と思うのは当然だろう。


「この森を抜けると廃城があるから、昔はそこに向かう途中の休憩場所みたいな感じで造られたかもな」

「あ、なるほど」


 納得をするローラはチラリと俺を見た。


「今はこの森には人は入らないよね? あたしとリッタくんの2人だけ……だよね?」

「赤ちゃんプレイする?」

「いやいやいや! お風呂で赤ちゃんプレイは特殊すぎるでしょ!」

「え? じゃあ獣臭プレイ」

「なんでそうなるの! じゃあ赤ちゃんプレイ1択だよ!」

「1択なんだ……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 弱みを見せられると、きゅんとしちゃうのかしらん/w 授乳プレイとか始まったり/w
[気になる点] とりあえず、まず。サブタイの話数つけ間違いか、一話抜けたか。どちらかだと思います。 あのまま別れるのはちょっと違和感がなくもないので、一話抜けの方があるかな。ご確認をお願いいたします。…
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