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第49話 ゴリラの本当の名は……

「よいしょ! っと」


 ローラが『鳳凰煉獄脚』を利用して薪に火をつけてくれる。


 たき火が完成すると、泉で魚を取ってきてくれたゴリラが、魚を串刺しにして並べてくれる。


「この食べ方が1番美味しいウホよ」

「やっぱ、そうだよな。この食べ方が良いよな」


 うんうんと頷いてたき火の前に腰を下ろすと、隣にローラが座ってくれる。


「たき火ってなんだか見てると心が洗われるよね」

「うん。なんか悪い気を浄化してくれる感じ」

「それにロマンチックだし。このままリッタくんと2人で繋がって……」

「なんだか神秘的なプレイだな」


 そんなことを言い合っていると、ゴリラが「おいおい」とツッコミを入れてくる。


「邪な感情が出てるウホよ」

「あはは」

「そうだねー」

「まったく……」


 呆れた声を出しながらも、焼けた魚の串を俺とローラに手渡してくれる。


「ほい。できたウホよ」

「お。ありがとう」

「わぁ。ありがとう」


 お互い受け取り、魚を食べる。


「「おいしい♪」」


 俺とローラの声が森に響き、ゴリラは満足そうな顔をしていた。


「じゃねーよ!」


 食べ終えた魚の串を地面に叩きつけて、思いっきりツッコミを入れてあげる。


「醤油派だったウホか?」

「ちげーわ! 塩派だわ!」


 そんなことはどうでも良い!


「なんで、シレっと一緒に魚食ってるんだ!?」


 ビシッとゴリラに指を差す。


「はい小娘。おかわりウホよ」

「わぁ。ありがとうゴリラくん♪」

「コミュ力!」


 ローラのコミュ力が高いため、なんの違和感もなく一緒に魚を食べている。


「ああ。ごめんウホね。一緒に食べている理由は」

「お腹減ったからじゃないかな?」

「仲良し!」


 いつの間に一緒にご飯を食べる仲になった!?


 今までの中でそんな仲になった覚えはないぞ。


「落ち着くウホよ。青臭いガキ」

「さっきからちょくちょく口悪くない?」

「そうかな?」


 美味しそうに2匹目を食べている小娘は気にならないらしい。


「まぁまぁ。同じ人間同士仲良しなのは良いことウホ」

「「そこだよ!」」


 ビシィと俺とローラの声が上手に重なった。


「あれ? さっきからこっち寄りだった小娘もそっちに行っちゃうウホか?」

「あたしは元々リッタくんの味方だけど」

「悲しいウホ」


 ゴリラは寂しそうな顔をしていた。


「いや、真面目な話しなんだけど……。お前は自分を人間だと思ってるのか?」

「どっからどう見ても人間だろ? ウホ」

「どっからどう見てもゴリラなんだよ」


 俺の言葉にローラも「だね」と頷く。


「ま、まぁ……百歩譲って人間としてもさ……。争うのは良くないとか言いながらも、先に仕掛けてきたのはそっちだぞ?」


 ゴリラはこちらの言葉に素直に頭を下げた。


「それは本当に申し訳ないウホ。事情を聞いて欲しいウホ」


 素直に頭を下げるゴリラを見て、俺はローラと顔を合わせる。


 なんとなくわかってはいたが、どうやら悪いゴリラではなさそうだ。


「我はこの森で静かに暮らしているウホ。それなのに最近森で暴れている奴がいるウホ。そいつは凄い勢いで森に生息するものを倒していっているウホ。このままじゃ森の生態系が狂ってしまうウホ。2人がものすごい魔力の持ち主だったから、そいつだと思って奇襲を仕掛けてしまったウホよ」

「あ、あははー」


 ローラが苦笑いを浮かべて頭をかいた。


 そして小さく手をあげて、申し訳なさそうに言ってのける。


「ごめんなさい……。それ、あたしかも……」

「あー……」


 言われてみれば、最近修行しに来てるローラが当てはまるな。


「でもゴリラ。ローラは襲って来る魔物を倒していただけだぞ」

「ううーむ。襲われたのなら仕方ないウホが……ここらの動物は気性が荒い──って、魔物?」


 言葉の途中でなにかに引っかかったゴリラがこちらに疑問形を投げてくる。


「この世界に魔物なんていないウホよ?」


 そう言われてローラと顔を見合わす。


 どこかデジャヴ的な要素を含んだゴリラを見ると、少し小馬鹿にした感じで笑われる。


「魔物は数十年前に絶滅したウホよ。ぷぷ。そんなことも知らないウホか」

「なんだこのゴリラ。ムカつく」

「あはは。まぁまぁリッタくん。それよりも、そのセリフってことは」

「まぁそうだな」


 この世界に魔物なんていない。


 そんなセリフを吐く人間? なんて存在しないだろう。


 そのセリフを吐くということは──。


「もしかして魔神『ジズ』か?」

「ファイナルアンサー?」


 なんかゴリラがムカつく感じで聞いてくる。


「ファイ……なに?」

「わからん。が、少なくともジズじゃない感じがする」

「本当に我がジズと思うか? って聞いているウホよ」

「じゃあ、最初からそう聞けよ」

「いやいや! ウホ。人間だって言ってるのにウホよ? そう言っているのに『あなたは空の魔神ですか?』って聞くウホかねぇ?」

「じゃあ『ベヒーモス』?」

「ファイナルアンサー?」


 さっきからムカつくなこのゴリラ。思いっきり殴りたいわ。


「ふぁいなるあんさあ」


 ローラが答えると「でんででんでんででんでん」とお手製のドラムロールを口ずさむと、大きく手を叩いた。


「せいかーい! ウホ!」


 陽気に手を叩くゴリラを見て、こいつが『魔神ベヒーモス』かと、肩を落としてしまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 投げ捨てるのは、食べ終わった串。けして食べ物を無駄にしないよゐこ/w ゴリラも魔神でしたか。海の魔神、陸の魔神と。海の魔神ほど圧倒的ではないか。対立しないに越したことは無いのだけれど。
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