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第48話 影の正体

 ローラを『アッパーコンパチブル』しているおかげで、吹き飛ばされても大したダメージはない。


 しかし、俺を吹き飛ばした奴は相当な筋肉バカなのか、勢いは止まらずに森の奥へ、奥へと飛ばされてしまう。


 木々をなぎ倒して少しずつブレーキをかけながらも、ようやく勢いがなくなってくれたのは、大きな泉の上であった。


 ザブゥゥン!


 吹き飛ばされた運動能力を失い、俺はそのまま下に落下する。

大きな水しぶきを上げて泉の中へと強制ダイビングをする羽目となってしまった。

ブクブクと口から息を吐いて、泡が水面目掛けて上昇していく。


 ローラやマリナが、綺麗だとか、魚が美味しいだとか言っていた理由を実感できる。


 水質の良い水は、口の中に入った瞬間に美味しいと感じた。天然の味というか、なんというか。とにかく美味しかった。


 透視度が高いため、水の中をよく見渡せる。


 視線の先には様々な魚が気持ちよさそうに泳いでいるのが伺える。


 まるで天然の水族館だ。


 なんて、呑気なことを言っている場合ではない。


 落ちた場所がまだ浅いところだったので、すぐに足が着くところまで辿り着く。


 ふんっ!


 水の中で跳躍して泉の中を出た。


 ザバァァァ!


 上がる時の方が激しく水しぶきが上がり、泉を出た。


 跳躍の勢いで森の木よりも高くジャンプしてしまったので、すぐに重力に体を預ける。


 スタッと華麗な着地を見せる。誰かに見せたいくらい華麗に決まった着地。


 地上に降り、濡れた髪をかきあげると、すぐに森の中から黒い影がやってくる。


 ドオオオン。


 黒い影の突進を前腕で受け止める。


 そこでようやく相手の姿が確認できた。


「ゴリラ……」


 ゴリラっぽい魔物ってのは沢山いる。


 でも、このゴリラは普通のゴリラっぽい……んだけど、なんかどっか人に近いような。


「ウホ」


 うん。いや、ゴリラだな。


 人間はあんまりそんな声を出さないもん。


 ゴリラとの間合いを取るために、前腕を振り抜くと、相手が軽くだけ後ろに吹き飛んでくれた。


「うりゃああああああ!」


 どこから跳躍したのか、ローラが森の木々よりも高い位置から現れると、落下を利用してゴリラ目掛けて脚を突き出す。


『鳳凰煉獄脚』


 脚に炎を纏い、落下を利用した強力なローラのスキルがゴリラへ。


「ウホン!」


 しかしゴリラは、変な声を上げてローラの脚を掴んだ。


「グホっ!」


 ローラのスキルはゴリラが予想しているよりも強かったみたいで、ダメージを受けている。


「ウホオオオオオオ!」

「きゃああああああ!」


 しかし、気合いの声と共にローラを、ぶんぶん振り回す。


 ローラの脚に炎が纏ってあるので、なんだかねずみ花火みたな綺麗さがある。


 ローラは、悲鳴とが違い、どこか楽しんでるな。あれは。


「ウホンヌッ!」


 そして、こちら側にローラを投げると、彼女は華麗に俺の隣に着地する。


「なかなか楽しかったよ♪」


 やっぱり楽しんでたか……。


「でも、そんなこと言ってる余裕はないかもね」


 彼女はすぐに戦闘態勢に入る。


「だな」


 俺も彼女同様に構える。


 あのゴリラと俺達の実力は、ほとんど互角だと思われる。


 だからアッパーコンパチブルをせずに、このままローラの能力で戦えば勝てるだろう。


 あんな魔物は見たこともないので、倒さずに調べてみたい気はするが、そんな余裕はおそらくないだろう。


 こちらの戦闘態勢に対し、ゴリラの方は予想外にも手を前に突き出した。


「人間同士、争うのは良くない」


 俺達を説得するように言ってくるその声は。


「うわぁ。イケボー」


 ものすごいイケメンボイスで耳に心地良かった。


 しかし、そんなことよりもセリフが気になりすぎてイケボとかどうでも良かった。


「え? な、なんて?」


 耳に手を持っていき、相手のセリフをもう一度聞いてみる。


「人間同士、争うには良くない」

「いやいやいやいやいやいや!」


 ブンブンブンブンブンブン!


 いやいやの数に対して、ブンブンと手を振る。


「お前みたいな人間がいてたまるか!」

「でもリッタくん。人間の言葉喋ってるよ?」

「確かにっ!」


 納得せざるを得ない状況なのかもしれない。


 魔物は人間の言葉を発しない。動物だって発しない。だとすると、こいつは本当に人間なのかもしれない。


「そうウホよ。人間ウホよ」

「ローラ。こいつやっぱ魔物だ。人間は語尾にウホって付けないもん」

「ええ? そうかなぁ。あたしもたまに付けるウホよ?」


 可愛い顔してウホだなんて……。変なノリ方してるなぁ。


「あれか? 獣くさいから仲間意識芽生えた?」

「なっ!? においの話しどんだけ引きずるんだよ! かがすよ!?」


 そう言いながらローラが抱き着いてくる。


「ほれ! ほれほれ!」

「好きなにおいです。はい。てか、ローラが好きです」

「ちょっ!? なっ、んで、いきなり、こんなところで……。もうっ! リッタくん好きっ」

「あのー。ちょっと目の前でイチャつくのは……」


 目の前から第三者の戸惑った声が聞こえてくる。


「ちょっとゴリラくん! 今、良いところなんだから邪魔しないでくれる!?」

「あ、はい。すみません」

「そうだ、そうだ! ローラと獣臭プレイを楽しんでるんだから邪魔してくれるな!」

「獣臭プレイってなに!? それだったら獣プレイしようよ! もう獣認定されて良いから、獣のように交わろうよ!」


 ローラが怒った口調で言ってくると、ゴリラが焦っていた。


「ちょ、ちょっと……。乙女が獣プレイとか言わないほうが……」

「うるさいよ! 獣に言われたくないよ!」

「獣……。我……獣……」


 獣が獣と言われてショックを受けている。ウケるわ。草生える。


「まぁ元はと言えば、お前が語尾にウホって付けたのがいけないからね。反省しろよ」

「そーだ! そーだ! あたし達は獣イチャイチャするんだから、そこで見ててよね!」


 獣イチャイチャってなに? ハードプレイの隠語みたいな感じ? なんか興奮するやん。


「す、すみません。黙っておきます」


 素直に謝ってくれると最後に我慢できなくなったのか「ウホ」と付けやがった。


「あ! また言った! 言うなって言ったのに! ダメだろ! いけないって言ってること言うの!」

「人間厳しぃ」


 ゴリラは頭をかきながら小さく縮こまった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 勇者パーティ、ごりらぞろいと言っていたけれど、本物のしゃべるゴリラが出てきた。 類人猿だろうけれど、本当に人なのかなあ。ローラの未来の姿だったり/w
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