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第40話 ルナと花火

「すみませんリッタ様。愛が溢れてしまいまして」

「物理的な愛情表現どうも……」


 エリスほど優れてはいないが、ルナにやられた右腕はすぐに彼女の回復魔法で治癒してもらった。


 罪悪感でもあるのか、ルナは右腕から離れてしまった。


 まぁ俺が意地悪をしたのが原因なので彼女は悪くはない。ただ、やはり勇者。物理攻撃力は桁違いだ。


 そんなやり取りをして歩くこと少し。小腹も満たしてやってきたダイセンの浜辺。


 昼間は遊泳する人がいるが、夜に遊泳するのは危ないので禁止されている。そのため、夜に浜辺を訪れるのは散歩する人くらいだろうか。


 いつもなら夜に集まることのないダイセンの浜辺には沢山の人で賑わっていた。

 それというのも、ここが花火大会の会場だからだ。


 大通りと同じく、浜辺には簡易的に建てらてた屋台がずらりと並び、夜だというのに小さな子供も、わいわい、きゃっきゃっとはしゃいでいるのが伺えた。


「この景色もダイセンの花火大会の醍醐味だよなぁ」


 つい出てしまった言葉を明後日の方向にいた人に拾われてしまった。


「これもリッタさんと勇者パーティの皆様のおかげですよ」

「クイダンさん」

 紳士的な笑みを浮かべて船乗りのクイダンさんがこちらに歩み寄ってくれている。


 孫なのか、小さな男の子と一緒に手を繋いでいた。


「お孫さんですか?」

「ええ。息子の忘れ形見。大切な私の孫息子です」

「そう……でしたか」


 詮索は失礼だから深くは聞かないが、この時代だ。クイダンさんの息子さんは魔王軍に勇敢に挑んだのだろう。


「すみません。いきなり暗い話しをしてしまい。そうではなくてですね。リッタさんとルナさんをお見受けしましたので、改めてお礼をと思いまして」


 そう言うと深々と頭を下げてくれる。


「この度は我が町の海を救ってくださり、まことにありがとうございます」

「クイダンさん。頭を上げてください。礼は以前に散々頂いたではありませんか」

「そうですよ。私達は深々と頭を下げるまでのことをしてはいません」


 俺とルナがクイダンさんへ言うと、重い頭を上げてくれる。


「しかし……。ここまでしていただいてなにもしないというのも……」

 クイダンさんが困っていると、手を繋いでいたお孫さんが深々と頭を下げてくる。


「お兄ちゃん。お姉ちゃん。ありがとう」


 その姿を見て、ルナが膝をついて「どういたしまして」と彼の頭を撫でてあげていた。


「小さな子の将来を守れただけで僕たちがしたことに意味があるのならそれだけで十分です。別に見返りが欲しくてやったのではありません。クイダンさん達が本当に困っていて、将来の子供達にも影響があり、僕たち自身もダイセンの海を守りたいから動いただけですよ」


 そう言うとルナが立ち上がり、クイダンへ言ってのける。


「リッタ様の言う通りです。クエストだけが全てではありません。困っている人を助けるのも、将来の子供達のために動くのも勇者パーティのお仕事ですから」

「リッタさん……。ルナさん……。ありがとうございます」


 クイダンさんはまた頭を下げてしまった。


「ねぇ。お兄ちゃんとお姉ちゃんは強いよね?」


 頭を下げているお孫さんが聞いてくるので、今度は俺が膝をついてお孫さんと視線を合わせてあげる。


「強いよぉ。特にお姉ちゃんなんて最強の勇者パーティの剣士様だ」


 頭を撫でながら言ってやると「だったら……」と小さく続ける。


「だったら、まおうぐん、を倒しておとうさんを早く帰らせてあげることもできるよね?」


 拙い言葉の意味を瞬時に理解した時、ルナがガバッとお孫さんを抱きしめた。


「必ず倒します。必ず」

「お姉ちゃん。ありがとう」


 ルナはしばらくお孫さんを抱きしめてあげると、名残惜しそうに解放し、クイダンさんとお孫さんは去って行った。


「改めてリッタ様の言う通りですね」

「ん?」

「魔王じゃない。魔物じゃない。そんなものは関係ありません。世界を、人々を、あんな小さな子供までも苦しめている者の存在がいるのが事実。理解はしていましたが、クイダンさんのお孫さんの発言で改めて気を引き締めることができました」

「そうだな。将来の子供達のためにも、元凶を倒さないと」


 グッと自然とグーを作り、握った拳に力が入ってしまう。


 それを見てかどうかわからないが「そういえば」とルナが妙に明るい声を出す。


「子供と言えば」

「言えば?」


 なにか関連する話しでもあっただろうかと首を傾げてしまう。


「先程のお孫さんとの会話で、私、子供が欲しくなってしまいました」

「い、いきなりですね」

「えへ。私、体力はある方なので、無限に繋がれます♡」

「いや、割と冗談になってないからね。それ。うん」


 この子の体力を考えた場合、夜の営みがものすごいことになるだろうな。比喩表現じゃない、まじの朝までコースになるんじゃないの?


 ルナと朝までとか……ルナの味がなくなっても営みができそうだな。


 それはそれで良き。


 じゃない!


「ほら! ダイセンの花火見るんだから邪なこと言わない!」

「はーい」


 理性を保つためにそう言っておくと「ん?」となにかに気が付いたルナが新たなる質問を投げてくる。


「そういえば、お聞きしたかったのですが」

「なに?」

「以前は誰と花火を見たのですか?」

「あー。それは──」

「もしかして……私と出会う前に違う女と……?」

「いや、違うって。前は──」

「まさか! 元カノ的な!?」


 言いながら、ぐいっっと近寄って来る。


「誰ですか!? その命知らずの畜生豚娘は! 聖なる光でその豚を浄化させてやります!」

「誰だよ畜生豚娘って! てか、話し聞いてくれない!?」


 話しを聞かずに、ぐいぐい来るもんだから答えようにも答えられない。


「あ、す、すみません。つい、カッとなってしまって」

「元カノとかいないから」


 本当にいなくれ良かった。いたら、まじでその子浄化されてただろう。


「家族だよ。父さんと母さんと……3人で見たんだ」

「家族……でしたか」

「ああ。父さんが旅行好きでな。小さな頃からアスガイアを見て回ったよ」

「お義父様は旅行好きだったのですね」

「今の明らかに義父の意味だったね」

「当然です。リッタ様の家族は私の家族です」


 もう籍を入れた気でいるよ。


「リッタ様を育てたご両親様です。さぞ素敵な方々なのでしょう」


 言われて、父さんと母さんの顔を思い浮かべる。


 逞しく陽気に笑う父さんと、優しく微笑む母さんの顔が浮かんで消えた。


「素敵……だったな……」

「あの……リッタ様……」


 少し申し訳なさそうに名前を呼んでくるルナを見る。


「リッタ様と出会って長いです。私のこともあり、あまり家族の話題を出してくれずにいたのですよね?」

「そうだな。もちろんそれもある」

「お気遣いありがとうございます。ですが、今回リッタ様の旅の目的を話していただけてルナはとても嬉しく思います。差し支えなければお母様のこともお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 それはルナなりの1歩ということで良いのだろう。


 聞かれてもいなかったし、言う必要性は今までなかった。


 だけど、もう彼女とも長い日を共にしている。


 言っても良いと思える程に信頼関係にある。


「母さんは、父さんが行方不明になった日に死んでしまった」

「そう、だったのですね……」

「俺は行方不明の父さんを探して旅をしている。ルナと出会った時も旅の最中だった。あの頃からずっと探している。もう随分と長い間探しているから死んでいるのかもしれない。でも、探し続ける」

「どうしてですか?」

「母さんを殺した犯人が父さんでないと証明するため……かな」


 母さんは殺された。誰に殺されたかはわからない。それと父さんの行方不明という点を考えると、父さんが怪しい。 


 でも、あんなに仲の良かった家族なのに、父さんがそんなことをするとは考えたくもない。


 だから父さんに会って直接真相を聞き出す。


「それが俺の旅の目的。時間と労力をかけている割に中々進展はないけどな」


 言うとルナは少し考えてから胸に手を置いた。


「誓います。私『ルナ・ハルヴァクス』はリッタ様の目的が達成されるまでこの身を捧げることを」

「ルナ」

「改めて誓わせてください。今までリッタ様の事情を話せなかったのは私に気を使って……。いえ、他の勇者にも気を使ってのことだと思います。ですが、リッタ様と過ごす日々の中で、『辛い過去の記憶』を『壮大な経験』に変えることができました。リッタ様。あなた様はわたしの英雄です。今度は私の番。あなた様の側であなた様のためだけに剣を振るい、あなた様の近くであなた様の目的を達成させるよう努めます。どうかルナをあなた様の側においてください」


 誓いの言葉を受けて返事をしようとすると、ルナが先に折れるように、ふにゃりとしてしまう。


「まぁ、どう言われても私はリッタ様から離れませんけどね」


 えへへ。なんて、ちょっと調子の良い照れ笑いを浮かべた時。


 パァァァン。


 パアァと夜空に綺麗な花火が開いた。


「わぁ」


 続いて、暗い海の向こうから打ち出される一筋の閃光が見えたかと思うと、また夜空に花火が咲いた。


「リッタ様。綺麗ですね」


 花火の光で見えるルナの横顔の方が綺麗だけど、キミの方が綺麗だなんて言葉が出なかった。


「ずっと一緒にいて欲しい」


 そんな言葉を放っていた。


 ちゃんと届いた俺の言葉にルナはギュッと手を握ってくれた。


「はい。もちろんです♡」


 その笑みは花火なんかより、もっと、もっと、綺麗で、俺の瞳は花火になんか向かなくて、ずっとルナの顔を見てしまっていた。




 ここまでお読みいただいてまことにありがとうございます。


 ここで2章の区切りとなります。


 勇者パーティと島国での出来事はいかがだったでしょうか。


 やっぱりイチャイチャしておりましたが、2章では世界のことが少しだけ明るみになってまいり、ただただイチャイチャしてるわけじゃないぞぉ、って言いたかったのですが、結局イチャイチャしまくりでしたねw


 ヒロインレース(ヒロインレースと呼べるのか……)では、今回はルナちゃんとの絡みが多いなぁと思いましたね。最後の方はルナちゃんとイチャコラ乳くりあって、うらやまけしからない。


 ここまでお読みいただいて、面白かったと思ってくださった方は下の☆にて評価をしていただけると幸いです。(できれば☆5が良いですねぇ。切実に)

 ブックマークもしていただけると、タップダンスするかもしれません。


 また次章からもよろしくお願いいたします!


 すずと。

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― 新着の感想 ―
[一言] 2章お疲れ様でした。 ちょっと前のイスラムでは4人まで妻を持てる、の話。昔の中東では戦いで男が良く死んだから、その分重婚が許されたという話もあったりなかったり。この世界でも、そういう意味では…
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