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第28話 勇者パーティへ報告

「「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!!!!!」」


 ダイセンの港に戻って来た俺達は手と首を、ぶんぶんと振りながらの帰還を果たした。


 俺とフレデリカの最大魔力を使ったので、船事逃げ帰ることが出来たので、もちろんルシオさんもいる。


「なんでダイセンの東の海に魔神がいんだよ!」

「反則」

「てか、クイダンさんもテンション上げて言えよっ! なんだよ強力な魔物って比喩表現!」

「その言い方は中級魔法でやれる程度だった」

「フレデリカの言う通りだわ! 鼻歌混じりでやって来て、いきなり海の頂点の魔神出てきたらそら逃げるわっ!」

「リッタの場合はゲボ混じり」

「どっちでもいいわっ!」


 本物の恐怖体験を果たして俺達は早口でやり取りをしてしまう。


 そして、お互いの顔を見合うと「ぷっ」と吹き出して「あっはっはっ!」と笑い合う。


「しかし、なんだ。神話でしか見たことない伝説の魔神だったけど」

「なんか、思ってたより蛇だった。残念」

「そうそう! こう、なんか……。もっと神々しいと思ったけどさ。おまっ、え? 山で見たことないか? カサカサッ! って、山にいてるのと同じじゃ? みたいなノリだったな」

「爬虫類が海にいてるだけ」

「それそれ!」


 言い合ってまた笑い合う。


 恐怖体験をした後ってどうして笑ってしまうのだろうか。


 心理的に、笑うことによって恐怖を打ち消そうとしているのだろうか。


「あ、あんた達……ど、どうして、あ、あんな化け物を前にした後なのに……」


 ルシオさんを放置したままだった。


 俺はルシオさんへ手を差し出す。


 彼の鍛え抜かれた太い手は小刻みに震えていた。


 その手を掴んで起こしてあげるが、未だに放心状態であった。


「大丈夫ですか?」

「あ、ああ……。あ、いや、ダイセンとしては、大丈夫じゃないかも」


 まだ続いている恐怖体験の影響か、言葉の文脈が少しわかりにくかったが、言いたいことは大体わかるので反応してセリフを返す。


「すみません。大見栄きった割に逃げてしまって。このままじゃ漁に出れませんよね」

「い、いやいや。あんたらは、なにも……。しかし、どうしてあんな化け物が……。くそ……。あんなのがいたんじゃダイセンは終わりだ……」


 悲壮感に覆われるルシオを見て、フレデリカと顔を見合わせる。


 そして、一緒に頷いてルシオさんへ声をかける。


「正直、リヴァイアサンなんて魔神は勇者パーティでも勝てないかも知れません。しかし、勇者パーティの目的は『海のオーブ』の回収です。ダイセンの海にリヴァイアサンがいる限り立ち向かうはずです」

「次は全員で挑む。安心して。勇者パーティが揃えばリヴァイアサンは怖くない」


 フレデリカが俺の服の袖を掴んで言い放つ。


「勇者パーティにリッタもいてくれれば、リヴァイアサンなんてただの爬虫類」


 言い切るフレデリカの顔は自信に満ちており、ルシオさんからすればそれが希望の光となったのか、絶望の顔から希望に満ちた顔に変わる。


「む、無茶だけはしないでくだせぇ。あっしはクイダンさんに今日のことを伝えにいきます」

「お願いします。俺達も勇者パーティへ今日のことを伝えに戻ります」

「明日、また出る」


 ルシオさんはクイダンの下へ戻って行き、俺達は勇者パーティの宿泊している宿へと戻った。





「リヴァイアサンって……。また凄いものを引っ掛けて来たわね」


 ローラの泊まっている部屋に全員が集まり、先程のことを説明すると、エリスがゆっくりと瞬きをして言い放つ。


「神話の魔神……ですか」


 ルナは口元に指を持っていき視線を伏せて緊張したような声を出す。

「リヴァイアサンって強いよね! あたしとどっちが強いかな?」


 二日酔いが治ったのか、ローラはガシンッ! と拳と拳を合わせて悠長なことを言っていた。


「あんたよりずっと強いわよ。てか、さっきまで、オエオエ吐いていたのに随分と元気ね」


 エリスが呆れたもの言いでローラに言ってのけると、ピースサインで返した。


「全快! あれだよ。なんでも治った後ってテンション上がらない? 足の痺れが治った後とか、打ち身で痛みが引いていった後とか、なんかテンション上がるよね」

「わかりみが深い」


 フレデリカがローラの意見に賛同をする。


「さっすがフレデリカちゃん。わかりみ♫ わかりみ♫」

「誰のおかげで治ったと思っているのやら」

「もちろんルナちゃんとエリスちゃんのおかげだよ。ありがとね。エリスちゃん」


 なんの濁りもない笑顔を向けられてエリスは頬を赤く染めた。


「べ、別に……。感謝されるほどではないわよ」

「エリス……そっち?」


 ローラ×エリスか。


 こりゃ薄い本があつくなるな。


 どっちが攻めで、どっちが受けなのか……。意外とエリスが受けの方がしっくりくるかも。


「ばっ!? このお子ちゃま! わたしが好きなのはリッタよ!」

「焦って普通に告白してる」

「はっ!?」


 エリスは気恥ずかしそうに口元に手を持っていき、乙女の顔を見せた。


「告白定期おばさんは置いておき──」

「ちょっとルナ! わたしはまだ18だっての!」

「それよりも真面目にリヴァイアサンです」


 キッパリと言われてエリスも黙り込む。


「確認ですが、私達の目的は『海のオーブ』の回収。海のオーブはダイセン近くの海溝に眠っている。しかし、ダイセンの東の海にリヴァイアサンが現れました。これでは海のオーブの捜索どころではありません。そこで、なんとかリヴァイアサンを討伐、もしくは放逐を優先したいと思うのですが。何か意見はないでしょうか?」


 ルナの意見に俺とローラ、フレデリカは特に意見はなかった。


 しかし、エリスが小さく手を上げて意見を申し立てる。


「ルナの意見にはもちろん賛成よ。リヴァイアサンのいる海でのんびり海のオーブなんて探せないのだから、そっちを優先させるのは当然よね。でも、簡単に狩ったりとか追っ払うことなんてできるのかしら。神話の魔神が現れたのだから、王都に戻ってレイドクエストとして申請した方が良いんじゃない?」


 他の冒険者達と手を組んで大勢で挑むのか。そのやり方の方がまだ安心はできる。エリスの意見も最もだと思う。


「確かにエリスさんの意見も最もですね」


 ルナも再度考え込む。


「でもエリス。それだと申請に時間がかかる。その間ダイセンの人が困る」


 レイドクエスト申請には時間がかかるし、集まるのも時間がかかる。それにここは島国。現場に来るのも時間がかかるので、その間ダイセンの人は漁にも出れず食料問題に発展してしまうだろう。フレデリカの意見もまた最もであると言える。


「そうね……。そこの配慮が足りなかったわ」


 エリスは何よりも安全を優先して発言したのだろう。


「リッタくんって古代文字に詳しいからかっこいいじゃん?」

「え? あ、ん? まぁ普通の人よりは詳しいよ」


 いきなりローラがかっこいいとか言ってくれるから照れて鼻をかいてしまう。


「神話には詳しくないの?」

「神話は……そこまで……。おとぎ話で知ってる程度だな。実際、リヴァイアサンも見たのも初めてだし。そもそも本当に実在したってことで驚きもある」

「もっと神々しいと思ったら、思いのほか蛇」


 再度、フレデリカが言うので笑いながら乗っかる。


「そーそー。蛇だったな。想像以上に蛇」

「蛇ってあんたら……」

「神話の魔神を見て蛇と言えるリッタ様とフレデリカさんの精神力に脱帽です」


 エリスとルナが若干呆れた声を出すとローラが笑いながら言う。


「2人の言ってる感じだったらさ、あたし達だけでもいけそうじゃない?」


 楽観的に言ってのけるローラに俺達の視線は向かった。


「ここでグダグダと言っても仕方ないよ。実際に現場を見ないとわかんないじゃん。やばかったら逃げたら良いし」


 あっけらかんと言ってのけるローラにルナが笑みをこぼして口を開いた。


「ローラさんの言うとおり、机上の空論を並べても仕方ありませんね。彼女の言うとおり、みんなで挑みましょう」

「それもそうね。わたし達みんなで行けば良いのよね」

「フレデリカ達が揃えばこわいものなし」

「しゃー! これはいつものやつだよね!」


 ローラが手を出すと、全員がその手の上に手を重ねた。


「ほらぁ! リッタくんも入って、入って!」

「そうですよリッタ様!」

「早く来なさい! リッタ」

「リッタには1番上をあげる」


 4人の美少女に誘われているのに断ったら男が廃る。


 俺は素直に応じてみんなの手の上に手を重ねた。


「それじゃ行くよー!」


 今回は二日酔い後でテンションの高いローラが指揮をとるみたいだ。


「勇者パーティ……」

「「「「「最強!!!!! オー!!!!」」」」」


 そして全員でハイタッチをかわす。


「「「「「イエー!!!!!」」」」」


 神話の魔神に挑む前なのに勇者パーティ仲良すぎだろ。アオハルかよ。

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[一言] いや、エリスは総受け、でしょう/w
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