第19話 勇者パーティと麗しき水着姿
「──なるほどね」
「なにか知ってるか?」
聞くと、首を横に振られる。
「ごめんなさい。その話を聞いたのは初めてね。もしかしたら先代の女王が知っていたかもしれないけれど。先代はもう……」
「ああ、いや。すまない。知らないなら良いんだ」
少しだけ重い空気になったが、すぐにエリスは切り替えてくれる。
「雷の魔法ならフレデリカに頼めば良いんだけど、研究を考えると連発……。でも、雷の魔法を連発ってのは流石のフレデリカでも無理でしょうね」
「だよな……。うーん……」
「気になったのだけど──」
「そおおおい!」
「きゃあああ!」
ザボン!
いきなりエリスが青空へとテイクオフすると、そのまま海へ緊急着陸した。
「なにすんのよ!?」
遠くからこちら側に文句を言っている声が聞こえてくる。
「そこはわたしの場所だよ! エリスちゃん!」
べー、と可愛らしく、あっかんべーをエリスにして見せたローラがこちらを向いた。
「えへへ。リッタくんどうかな?」
シンプルなビキニに着替えたローラ。
彼女の自慢の体を邪魔しない地味目な水着だからこそ、彼女の良さが際立つ。
シンプル過ぎるが故にエロい。
ローラだからこそできる着こなし。完璧なチョイスだ。
「ありがとうございます」
「お、お礼!? それってのは似合ってるっていうこと?」
「ああ。凄く可愛い」
「それって水着が?」
「水着だけじゃ可愛くなんてない。その水着をローラが着るから可愛いんだ。その水着はローラの可愛さを引き立てるためだけに作成されたと言っても過言じゃない。ありがとうございます!」
「あはは。良かった。気に入ってくれて」
言いながら、俺に抱き着いてくれる。
いつもより露出が多いから、彼女の感触がほぼダイレクトに感じる。
やばいよね。この子の体。俺の中央のフレキシブル部が究極に反応している。
「あれ? もしかしてあたしで興奮しちゃった? ふふ。水着なんていらない? なら脱いじゃおうか?」
いつもは可愛い元気な声なのに、こういう時の彼女の声は色っぽくて、更に反応してしまう。
「淫乱糞牛交尾中毒めっ!」
「いつものパターン入ったねー!」
お約束と言わんばかりに吹き飛ばされたローラ。
ジャボンっと水飛沫を大きく上げると、すぐに浮かび上がって来る。
「よくもやってくれたわねローラ!」
「抜け駆けクソエルフに言われたくないよ!」
海では拳の勇者と妖精王が争っていた。
「まったく……。身体でしか自慢できないのですからローラさんは」
呆れた声を出したルナの姿に見惚れてしまう。
彼女の水着はビキニはビキニだが、フリルの付いた爽やかで可愛らしい水着。
水着が可愛くて、そっちにいってしまうが、着ている人がおそろしく美少女なので、良いバランスで着こなしている。
レベルの高い水着をレベルの高いルナが着ることによって最高の姿となる。
似合っているとか、エロいとか、そんな次元じゃなくて、彼女自身が芸術品となりて、浜辺に降臨したと言えるだろう。
「すみません。頭が高くてすみません」
俺は土下座をするしか選択できなかった。
ありがとうございますとか、そんなことを言える次元じゃない。
「え? あれ? ええっと、リッタ様?」
「ははぁ……。ルナ様……。なんなりと……。なんなりとわたくしめにお申し付けください」
「え、えと、えと。じゃ、じゃあ……。愛の営み……セッ──」
「お前もかっ」
「あーれー」
風の下級魔法がルナを包むと、2人が争っている渦の中に吸い込まれるようにルナがダイブ。
「聖騎士風むっつりスケベだよ!」
「中途半端セイクリッドサキュバスめっ!」
「さいてーです! 許しませんっ!」
海の中では三つ巴の争いが始まってしまった。
「年増はバカばかり」
短く非難していたのはフレデリカだ。
珍しい水着を着ている。エリスのようなワンピースタイプだが、紺色で胸の部分に『フレデリカ』と書かれていた。
「店主イチオシ。フレデリカにはこれしかないと言われた。その名も『すくみず』というらしい」
「『すくみず』」
父さんから聞いたことがある。
古来より選ばれし者のみに装着が許された幻の水着。その水着を着た者を見た者はなんだかイケない気分になると言われる、伝説の究極の一着。魔物すらも困惑させるとかなんとか。
それを語っていた父さんは息を荒くして気持ち悪かった。つまり、これはそういうことなのだろう。
なるほど……。それを着こなせるのは杖の勇者様だけってわけか。
納得せざるを得ないな。
俺をはぁはぁさせるなんて、全く末恐ろしいぜ。
「息が荒い……。大丈夫? リッタ」
「はぁ……はぁ……。俺……どんな顔……?」
「正直、きもい」
「だよな……」
俺も父さんを見た時、殺しそうになった。
「でも、気持ち悪いリッタも好き」
そう言って『すくみず』で抱きしめてくるフレデリカ。
父さん……あんたの気持ちがわかったよ……。
こりゃ……ええわ……。
「ぶっ!」
「「「あ……」」」」
天罰だろうか。
顔面になにかがぶつかって俺はそのまま気絶した。