EP6 戦い終わって・・・
「・・・・・・・・」
あ――・・・・・この状況どうしよう?
今俺の目の前には、傷だらけになった少女、いや正確には先程まで戦っていた銀狼が倒れている。
改めて確認すると、肩まである銀色の髪とお尻に小さい尾が特徴の少女だ。
ただ・・・・・・
「眼のやり場が・・・・・困るな。」
その姿が全裸でなければなおさらよかったのだが・・・
「とはいえ・・・・このままじゃ良くないよな・・・」
そう考えた俺は、少女に近づいて容体を確認した。
見る限り、胸が上下しているのを見ると、生きてはいるようだが結構な重症だった。
というよりかは・・・
「この傷って俺がつけたんだよな・・・・」
そう思うと、なんか罪悪感がわいてきたのだが・・・
とりあえず、このままではいけないと思い、幻想創造で少女の身丈以上のマントを作りかぶせておく。
「さて・・・・・・どうする?」
俺はこの後の事を模索する。
が
「と言ってみたものの・・・・・」
少女をこのままほっとくわけにはいかなくなってしまったし、日は落ちて夜になってしまった為、夜間に歩くのは危険な状態。
正直手詰まりになってしまった。
「しかたない・・・・今日は此処で野宿するか。」
結局俺は異世界で初の野宿をする事になった。
それから一時間が経って・・・
「ふう・・・野宿って久しぶりだな。」
焚き火に木をくべながら、俺は一人呟いた。
野宿すると決めてから、とりあえず場所を移すことにした俺は、狼の少女を抱きかかえて戦った場所から、少し見晴らしのいい丘に場所を移動した。
戦った場所から離れたのは、戦いの臭いを嗅ぎつげた動物などからの追撃を防ぐためだ。
その後、近くにあった枯れ木などを集めて焚き火を作り、今を過ごしている。
「とはいえ、火すら幻想創造を使わないと使えないのはちょっと辛いな・・」
火を絶やさないようにしながら、俺は近くで横たわっている少女に目を向ける。
少女が何故、俺を襲ったかはわからないが、あのままほっとくわけにもいかず、一応動ける程度までは幻想創造で治しておいた。
もし完全に治してしまって、又襲われたらたまらないので、あくまで一応である。
「まぁ、理由は起きてから聞くか・・・」
そう思って、俺は空を見上げる。
「綺麗な夜空だな・・・」
空に見える夜空を見ながら、俺はそう呟いた。
今の空は雲ひとつ無い綺麗な夜空で、更に街灯すら無い為、小さい星さえ鮮やかに見える。
前の世界なら、余程山奥に行かないか、周りに光の無い場所に行かなければ見れない光景だ。
「あいつが見たら、どう思っているのだろうな・・」
少し考えに拭ける。
もしあいつが、この夜空を見たらなんていうだろうか?
綺麗と言うだろうか・・・
若しくは、なんとも思わないだろうか・・・
「・・・・はぁ。」
そこまできて、俺は考えるのをやめる。
そう思ったって、あいつはもう戻ってこない・・・
そうだろう?
俺は夜空に向かって問いかける。
今は無き、あいつが俺を見ていると思って・・・
そんなの自分で考えなさいよ!
「・・そうだよな。」
偶然か、それとも空耳かはわからなかったが、あいつの声が聞こえた気がした。
「う・・・・・・・ん・・・」
近くにいた少女の呻く声が聞こえてきたので、俺は視線を少女に戻す。
少女の体が微かに動き、瞼が少しずつ開いていく。
「・・・・・あれ?」
目を覚ました少女の口から、疑問が呟き漏れた。
「おう、起きたか?」
「!!!」
俺が一声かけた瞬間、少女は俺に視線を向けると飛び上がり、尾を膨らませて噛み付くような視線を向けてきた。
「うわぁ―――。よっぽど嫌われてるなこれ・・・」
厳しい視線を向けてくる少女を見て、俺は今更になって自分がしたことを反省した。
とはいってもだ・・・
あの銀狼が、こんな少女だったと誰が思うだろうか?
「・・・・・・・・」
少女が着ていたマントで体を隠しながら、俺から視線を離さない。
「・・・・はぁ。」
もう何度目かわからないため息をついた。
このままでも良くないのは、俺でもわかっている。
そう考えると、打開策は一つしかなかった。
「しかたないか・・・・」
そう言うと、俺は右手を彼女に向けってかざす。
刹那、彼女の視線が更に鋭くなる。
無理も無い。
先程、この直後に起こった事が彼女にはわかっているからだ。
しかし今回は違う。
「我望むは・・・」
俺が詠唱を始めると、彼女の表情が青ざめて、彼女は目を瞑る。
だが何度も言うが・・・・
今回のは、攻撃用の詠唱ではない。
「彼女の傷が治る事を望む。」
唱えた瞬間、彼女の傷が一瞬にしてなくなった。
まるで無かったかのように。
「・・・・・・・ふぇ!?」
彼女が驚愕の表情をする。
同時に、どうして?といった顔で俺を見る
「まぁ、こんなもんでいいか?」
俺は少女を見ながら、彼女の容態を確認する。
幻想創造のおかげで傷自体も完全に治療されており、傷跡すらない。
「さてと、とりあえず・・・・・話そうか?」
驚く少女を見ながら、俺はそう切り出した。