何度も振り下ろしてはいけない
初投稿です。よろしくお願いします。
王都の広場は、やけに賑わっていた。
焼き菓子の甘い匂い。香辛料の刺激。笑い声と呼び込みの声が重なって、露店の布が風に揺れる。
市の日か、とアルノーが思った瞬間、父の手が肩を掴んだ。
「見るな」
「父上?」
「目を閉じろ」
命令だった。
反射的に従ったが、耳は塞げない。
――ゴッ
鈍い音が、空気を叩いた。
祭りの賑わいの中に、その音だけが妙に浮いていた。一度。間があって、
――ゴッ
もう一度。
三度目は、少しずれた。
――ゴ、ッ
「――ぁ、あ゛あ゛あ゛あああッ!!」
悲鳴が弾けた。喉の奥から無理やり引きずり出したような、濁った声。
(やめろ)
歯を食いしばった。
――ゴッ
また。
――ゴッ
また。
回数を、数えてしまう。
「まだだ!」「しっかりやれ!」
誰かが笑っている。野次が飛ぶ。歓声に似た声が混じる。
(なんでそんな、楽しそうなんだ)
――ゴッ
頭の奥が、じんと痺れた。
切れてない。
理解してしまった。
まだ、生きてる。
「ひ、ぃ……っ、あ、あ……」
声が、もう声になっていない。擦れた空気みたいなものだけが漏れている。
(やめろ)
胃の奥がひっくり返る。
(こんな終わり方は)
こんなのは。
絶対に、いやだ。
そこで、意識が途切れた。
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この話以外、残酷系描写はありません。




