イザベリア VS アリア ③
※本作中の挿絵・画像は自動生成AIによるものです。
イメージや雰囲気を楽しんでいただければ幸いです。
なお、キャラクターの容姿や髪型、衣装などは
作中の描写と多少異なる場合があります。
あらかじめご了承ください。
私は、あの女が嫌いだ。
イザベリア・フォン・インペラトル。
帝国では『鮮血皇女』だの『虐殺皇女』だのと恐れられ、それでいて敬われてもいるらしい。
だけど……
そんなもの、要はただの殺戮者じゃない。
自分の気に入らない者を見下し、邪魔な者を排除して、そうやって皇帝の座まで上り詰めた。
ただの独裁者のくせに。
そんな女が、わざわざ身分まで偽って日ノ本へ何をしに来た?
考えるまでもない。
十中八九、御剣家の子種狙いだろう。
…………
あぁ、ムカつく。
嫌いだ。
本当に嫌いだ。
いつもそうだ。
学園では偉そうに振る舞い、力をひけらかして、他人を見下しては嘲笑う。
何もかも、自分の思い通りになるとでも思っているかのように。
その態度も。
あの余裕ぶった笑みも。
人を見下すような目も。
全部……全部全部気に入らない!
私は、あの女が大嫌いだ!
だからーー!
負けるわけにはいかない!
「マジックシールド!!」
アリアが叫んだ。
その瞬間、眼前に半透明の障壁が展開された。
《マジックシールド》
魔法・物理攻撃の双方を一時的に防ぐ、基礎的な防御魔法。
展開された障壁と、イザベリアの魔導銃から放たれた砲撃が真正面から激突する。
ズガガガガガガッ!!
「なっ!?」
一瞬、凄まじい魔力がぶつかり合い、周囲の空気が激しく震える。
そして。
「バッシュ!!」
アリアが一気に前へ踏み込み、展開した《マジックシールド》をそのまま叩きつけた。
ガァン!!
「っ!?」
障壁が魔導銃ごとイザベリアの左腕を弾き上げた。
行き場を失った砲撃が、大きく左へ逸れた。
ズガガガガガガッ!!
紫電を纏った魔力の奔流が地面を抉り、そのまま夜空へと駆け上がった。
「…………え?」
ほんの一瞬。
イザベリアの思考が止まった。
完全に虚を突かれていた。
その一瞬を、アリアは逃さなかった。
大盾を捨て、アリアはイザベリアの懐へ飛び込んだ。
「はぁっ!」
「しまっ――!」
勢いのまま身体をぶつけ、そのままイザベリアを地面へ押し倒した。
ドン!!
すかさずアリアが馬乗りになる。
「このっ!」
バゴッ!!
拳がイザベリアの頬を捉える。
「ぐっ!」
もう一発。
バゴッ!!
イザベリアの顔が反対側へ弾かれた。
「くっ……!」
アリアは荒い息を吐きながら、右手に握っていた剣を両手で掴む。
柄を上に。
切っ先を下へ。
逆手に構えた剣を、仰向けに倒れたイザベリアの顔へと向けた。
そして、一気に振り下ろした。
ギャィィン!!
剣先が地面へ突き刺さった。
イザベリアの首、そのすぐ右横。
あと僅かでもずれていれば、その首を貫いていたであろう位置。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
静寂の中。
額から汗が伝い落ち、アリアの荒い呼吸だけが響く。
しばらく肩で息をしながら呼吸を整えると、アリアはゆっくりと顔を上げた。
そして、自分の下に組み伏せたイザベリアの顔をみた。
「……私の勝ちです。イザベリアさん」
アリアとイザベリアの視線が重なり合った。
「…………」
「…………」
互いに何も言わない。
しばらくの間、二人はただ黙って見つめ合っていた。
やがて、イザベリアの身体から、ふっと力が抜けた。
「……私は、負けましたのね」
そう呟くと、イザベリアは抵抗することをやめ、その身を地面へと預けた。
そして、静かに空を見上げていた。
「…………」
アリアは何も言わず、ゆっくりとイザベリアの上から降り、立ち上がり地面に突き刺さった剣の柄を握ると、一息に引き抜いた。
剣を腰の鞘へと収めると、そのまま踵を返し、先ほど自ら投げ捨てた大盾のもとへ歩いていった。
そのとき……
パチ、パチ、パチ。
静寂の中に、拍手の音が響いた。
アリアが足を止め、地面に横たわったままのイザベリアも、音のした方へ視線を向けた。
そこには、満足そうに拍手を送るエレオノーラの姿があった。
そして、その隣ではセレナが楽しそうに笑っていた。
「いやいや、良いものを見させていただきました」
エレオノーラはそう言いながらイザベリアへ歩み寄り、手を差し出した。
「…………」
イザベリアは僅かに不貞腐れたような表情を浮かべるが、何も言わずにエレオノーラの手を取り、ゆっくりと立ち上がった。
一方。
「よくやった!」
セレナは戻ってきたアリアを迎えると、その頭に手を置き、髪が乱れるのも構わずぐしゃぐしゃと撫で回した。
「だ、団長……」
「一皮剥けたじゃないか!」
セレナは嬉しそうに笑っている。
アリアはされるがままになりながらも、どこか嬉しそうに視線を逸らした。
その様子を眺めていたエレオノーラが、嬉しそうにイザベリアへ尋ねる。
「どうでした、イザベリア様。アリアは強かったですか?」
「…………」
イザベリアは答える前に、アリアへ視線を向けた。
乱れた髪を手櫛で整え、土埃のついた服を軽く払いながら答えた。
「えぇ……。いつものアリア嬢とはまるで違っていて、驚かされましたわ」
負けた時を思い出し、僅かに眉をひそめた。
「……最後には、見事にしてやられましたもの」
「でしょうね」
エレオノーラは満足そうに微笑みながら、アリアへと視線を向けた。
「何しろ当初は私も団長も、アリアが負けると思っておりましたから」
エレオノーラは嬉しそうに、話を続けた。
「正直なところ、姉としては妹に勝ってほしいと思っておりました。
ですが、団長もおっしゃっていました。
あの子はいささか生真面目すぎる、と」
そう言いながら、エレオノーラはアリアへと視線を向ける。
少し離れたところでは、セレナがアリアの頭をぐしゃぐしゃと撫で回しながら、何やら嬉しそうに褒めていた。
褒められることに慣れていないのか、アリアは照れたように顔を赤らめながらも、されるがままになっている。
そんな妹の姿を眺めながら、エレオノーラは微笑んだ。
「案の定、それが仇となって、イザベリア様に足元を掬われましたけどね」
「…………」
「相手の動きに正面から対応して、守って、隙を見つけて攻める。
昔からあの子はそうでしたから。良くも悪くも真っ直ぐなんですよ」
そこまで話すと、エレオノーラはアリアから視線を戻した。
そして、イザベリアへまっすぐと向き直った。
「ありがとうございます。イザベリア様」
そう言って、丁寧に頭を下げた。
「…………」
イザベリアは何も答えず、僅かに目を細めながらエレオノーラを見つめた。
その胸中は、なんとも複雑だった。
負けた。
それも、自分が完全に動きを読み切ったと思った相手に。
当然、悔しくないはずがない。
最後の攻防に入るまで、アリアの行動はほとんど予想通りだった。
距離を取れば詰めてくる。
銃撃すれば大盾で防ぐ。
鞭を振るえば回避するか、盾で受け流す。
そして守りに徹すれば、必ずどこかで反撃の機会を窺う。
身体能力こそ普段とは比べものにならないほど高かったが、戦い方そのものは、いつものアリア・ベルモントだった。
だからこそ、私は最後まで読み切った。
そのはずだった……
あの生真面目で、頭の固いアリアが。
大盾を捨てた。
自ら間合いを潰し、こちらの懐へ飛び込んできた。
そのまま身体ごとぶつかって押し倒し、馬乗りになって、挙げ句の果てには顔を二発も殴ってきた。
あれのどこが騎士の戦いですの……。
イザベリアは思い出すだけで、殴られた頬が疼くような気がした。
騎士道、騎士道と。
何かにつけて騎士としての在り方を重んじ、頑ななまでに騎士道精神を貫いてきたアリアが、最後の最後でそれをかなぐり捨てた。
理屈でもない。
戦術でもない。
ただ……
負けたくない。
そんな感情を剥き出しにして、自分へ飛びかかってきた。
そんなもの、予想できるわけがありませんわ……。
「はぁ~~……」
イザベリアは堪えきれず、大きなため息を吐いた。
その様子を目の前で見ていたエレオノーラが、「ふふふっ」思わずといった様子で笑みを零した。
「……なんですの?」
「ごめんなさいね。少し嬉しくて、つい」
エレオノーラは謝りながらも、笑みを隠そうとはしなかった。
そして再び、セレナに頭を撫で回されているアリアへ視線を向けた。
その表情は、先ほどまで騎士団を率いていた副団長のものではなかった。
一人の騎士としての顔でもない。
ただ妹の成長を嬉しく思い、少し誇らしそうに見つめる。
その表情はまさに、アリア・ベルモントの姉としての顔だった。
エレオノーラ・ベルモント
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
本作に登場するイラストは、自動生成AIによるものです。
物語そのものを補足する「正解のビジュアル」ではなく、
あくまでイメージや雰囲気を楽しむための要素として見て頂ければ幸いです。
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