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「さて、諸君。準備は出来ただろうか?」


 大和君のお姉さん、礼先生はやはりジャージファッションで僕達の前に現れた。


 相変わらず小学生にしか見えない先生は、今度は画面越しではなく、生身である。


 その背後では体育館の床部分がゆっくり分割され、土のある地面が現れた。


 どうやらこれが試験用のバトルフィールドのようだった。


「能力によっては、地面がなければ困る者もいるだろう。攻めても、守ってもいい。各々よく考えて行動すること」


 礼先生のよく通る声は、僕にも聞こえていないわけではなった。


 しかし反応はできない。僕は、深く深く自らの疑問を考え続けていた。


 瞑想。案外素晴らしい。


 瞼を閉じて考えるのは己の事。他人の事。


 空気を読むとは、他者を知ること。


 己を深く知れば、おのずと他人の事も見えてくるはず。


 そのためにはまずは自分一人になることも必要だろう。


 石ころのように静かな心が必要だった。


 この時僕は、今まで到達したことのない境地に達しつつあった。


 外に内に感覚が研ぎ澄まされて、周囲の状況が自然と察することができる。不思議な感覚だった。


「それでは何か質問はあるか?」


 礼先生質問の後、どこかで手が上がる。


「……はい、先生」


「なんだね? 時坂君?」


「山田が瞑想から戻ってこないんですがどうしたらいいですか?」


「集中力があるのはいいことだが。授業だ。すぐに連れてきなさい」


 きっぱり言う礼先生。


 しかしまた手が上がった。


「……はい先生」


「なんだね? ホルスト君」


「無理やり連れてこようにも光に包まれているんだが?」


「……何かの能力だろう。多少の能力を使ってもかまわないから、連れてきたまえ」


 困惑しつつも、きっぱり言う礼先生。


 それでも更に、新たな手は上がった。


「……ハイせんせー」


「今度はなんだね? べぇだ君」


「山田君の周りに、床突き抜けて草生えてきてます。なんかこんなのアニメとかで見たことあります」


「……」


 いい加減自分の目で確認し言うべき言葉を失った礼先生は、僕の方をじっと見て。考えを改めたようだ。


「うん。先生も動かすべきではないと判断した。そっとしておいてあげなさい」


 たしかにそう、その判断はとても助かる。


 後一歩。そう後一歩で何かつかめるような気がしてきたからだ。


 満場一致で触れてはいけないもの認定されたことなどもはや取るに足らない。僕は暗闇の中から、一筋の光を見た。


 なんとなーくしょんぼりと沈んできた自らの心。


 そして、周囲から感じ取れる残念な波動。


 嗚呼 何も語らずとも、こんなにも人は多くを語っていたのかと。


 これが空気。そしてこれがその流れ――。


 どこからともなく、神社とかから聞こえてきそうな楽器の音色みたいなものが、聞こえた気がした。


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