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僕らは駄菓子屋で一先ずもてなしの用意でもしておけと放り出された。
まさか窓からとは思わなかったし、べぇだ君と時坂君が、本気で高速移動してそれについていく羽目になるとも思わなかったが、言っても光速移動と、連続テレポートに全力で追随すれば、瞬く間に駄菓子屋に到着してしまった。
なんとなく言われたとおりにお金を出し合い、おもてなしの準備となったわけだが、そこはやはり駄菓子屋であった。
「……気合を入れて買ってしまったが、全部見事に駄菓子だな」
「これって、大丈夫なのかな? 山盛り詰んである駄菓子におもてなしの心は感じ取れるの?」
「それは……僕は嬉しいけど……」
食事用の座敷にある、テーブルに詰まれた駄菓子の量はかなりの物だと思われる。
僕達は顔を見合わせ、女の子をもてなすのにこれはどうなのかと審議する。
「大丈夫なのか……これ?」
「で、でもここ駄菓子屋だし」
「もうすぐ来ちゃうよ! どうする! どうするの!」
「どうするもこうするもないだろ! あーもう普通で行くぞ普通で!」
普通でいいのか、そうなのか。
では僕も出来る限り普通に、お気に入りの駄菓子でも食べながら、座敷に座っているとしよう。
駄菓子屋に近づいてくる気配が二つ。
いつぞやの修行の名残は、まだ少し僕の中にある。
「ここだ。話をするにはまぁまぁだろう。特に秘密の話ならばな」
「……うん」
最初に入ってきたホルスト君。
そして後に続くマリーベルさんは、若干不安そうだった。
確かにこの場所は僕達以外はあまり顔を出さない。僕達以外の生徒に秘密にするには何かと都合がよさそうだ。
さて、ホルスト君とマリーベルさんが座る場所を開けて、駄菓子を置きつつ退散するとしよう。
「じゃあ、僕らはそろそろ……」
そう言って立ち上がろうとすると、僕は背後で裏切りを見た。
「おいおい……ホルスト。随分かわいい客を連れてきたじゃねぇか」
軽く頬に手を当て、足を組み若干キメの角度の時坂君。
「ははっ! こんなところに迷い込むなんて困った子猫ちゃんだな☆」
そしてべぇだ君はいつの間にかホルスト君の部屋から用意したと思われる、エスプレッソを手に持ってウインクしている。
知らず知らずのうちに、展開されたなんだかキラキラした空間と、キラキラした少女マンガのようなエフェクトは、二人の合作だと思われた。
「……」
これが普通だというのなら、早めに教えて欲しい。
だが裏切りは裏切りだというのにちっとも悔しくはなかった。
土壇場であせってしくじったのだろうか? 一体何があったのか視線をはずしていたのが悔やまれる。
ホルスト君はある意味ではとても彼らしい見下しすぎた無表情でしばしこちらを眺め謝罪する。
「……すまんな。おかしな奴らがいたようだ。まったく知らない人のようだし、そっとして出て行ってやろう。店の外にベンチがあったはずだ」
「マテマテマテ! オレもどうかしていた! すぐ出ていくから、痛い人認定だけはやめてくれ!」
「ちょっと受けを狙ってみただけなんだ! その視線は心が痛い!」
「……」
結果、マリーベルさんの前には、お詫びのラムネと小腹に溜まりそうな駄菓子が置かれ、二人だけが残される。
僕らはと言えば邪魔にならないところに素早く退避、外にあったベンチで色つきのジュースをチューチューすっていた。
そして僕の両脇を時坂君と、べぇだ君が固めていて、時坂君は落ち込み気味に、べぇだ君は一気に飲み干してしまったビニールの容器をギリギリかみ締めて僕に言う。
「なんか、ついやっちまったなぁ」
「いいんですかね? ああいうの? モテナイーズとしては?」
「その名前気に入ったの?」
「思いのほか言いやすくって。ただ重要なのはたったひとつの真実だ。ところで山田君、モテナイーズの隊長としてはどうなの? いざとなれば山田公平拳炸裂?」
「僕の拳はそう言う事には使わないので……」
なぜ僕は妙なポジションに。
言いたいことは沢山あったが、あえて黙る。
漢は背中で語れと、師匠に言われたような言われなかったような感じである。




