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では大和君の方を観察してみよう。
「あ……おー」
大和君と目が合う。
大和君はこちらに手を振ろうとしたらしいが、その瞬間女の子達のバリケードに完全にさえぎられ、言葉を飲み込んでいた。
そうなるともはや脱出は不可能。
すまなさそうな顔をして、大和君は女の子達と話し始めた。
「ねぇねぇ! 私と手合わせしてみない! 昔とは全然違うから!」
「それより、私の魔法を見せたいなー。学なら絶対物にできると思うんだけど!」
我先にと言い寄ったのは早乙女さんと、リオンさんだった。
だが彼女達の楽しげだった表情は一瞬でなくなり、お互いをにらみ合う。
みんなで楽しくやればいいのにと、そんな事を言えば、とんでもないことになりそうな予感がした。
「……」
僕はなんとなく気まずくなって目を逸らす。
男子勢の話し合いがそろそろ纏りそうかなと確認すると、彼らはすでに座り込んではいなかった。
「だめだな、とりあえずなんかすっか。なにすんよ?」
「おいおい時坂どんいいんですかい?」
「誰が時坂どんだ。昔話の登場人物みたいな呼び方するんじゃねぇ。いい案がねぇんだからしかたねぇだろ? そうだ。お前はさっさと女子にでも混ざってこいよ。チャンスだろ? あわよくば事の真相を探ってこい」
「は! そうか! それなら合法だ! ちょっといって来る!」
バチリと電気のように体を崩して走っていくべぇだ君を見送って時坂君は仕切りなおした。
「さてうるさいのがいなくなった」
どうやらもうちょっと不毛な話し合いには飽きてきたらしい。
そしてべぇだ君の扱いが何気にひどかった。
「時坂君……」
「それもそうだな」
でも僕は思った。あの調子なら、べぇだ君もすぐに戻ってくることになるだろうなと。
男子のテンションがようやく通常運転に戻りだしたのだが、女子の方はかなりヒートアップしてきているようだった。
「ちょっと! 学から離れなさい!」
「あら? 何でそんなことあんたに決められなきゃいけないの?」
「何ででもよ!」
ズズンと、地震が起きている。その震源は女の子のパンチである。
石つぶてを箒を片手に、不思議な光でさばいているリオンさんもまた、隙あらば飛び出す謎の触手でからめ取ろうとしているが、それくらい容易に引きちぎる早乙女さんの怪力だった。
「こんなもん効くわけないでしょ!」
「……馬鹿力」
「なんですって!」
「な、なぁもう少し仲良くした方が……」
「「学はだまってて!」」
チュボムと衝撃に巻き込まれる大和君。
「あ」
「……ふ、二人とも。ホントに落ち着こう」
吹っ飛ばされつつ、けなげに立ち上がり仲裁に入る大和君はタフだった。
大和君はかなりがんばっているようだが喧嘩は止まる様子がない。
続く轟音に、摩訶不思議な光。しかしこうまで派手に暴れていれば、さすがに周りの女子達も止めに入ってもおかしくない。
そう思ったのだが。
「あ、あの学様? 私と一緒に訓練を……」
シーラさんがいきなり抜け駆けしていた。
ギロリと、殺気の混じった視線が彼女に集中する。
その中には、早乙女さんとリオンさんの他に、マリーベルさんも混じっていて。
頬を膨らませた彼女の周囲から、恐ろしい勢いで、樹木が飛び出て暴れ始めた。
「ぐぇ!」
「「「学!」」」
大和君が引っかかる。
天高く宙吊りになる大和君にさすがに慌てた悲鳴が上がった。
「ち、ちょっとなにやってんの! マリーベル!」
「もがもがもが」
肝心のマリーベルさんは、自分の出した樹木の間に挟まって動けないらしい。
「暴走してるんですの!」
「ちょ! これどうやってとめればいいの!」
樹木は完全に暴走状態。
さらに数秒後には魑魅魍魎があふれ出せば、もう止まる気配など皆無だった。
「……」
あとべぇだ君も派手に吹き飛んでいたが、まぁ自分から突っ込んでいったのでこれは仕方がない。
助けようかとも思ったが、少なくとも新しい能力開発という趣旨にまったく反していないし。
大和君もまだがんばっているので、もう少しだけ止めるのは後回しにすることにした。




