43
「君達の能力には個人差がある。この授業は、君達が積極的に交流することで新たな能力開発を促すためのものだ。比較的能力が近い物から教えを乞うのもいい。また全く畑違いの者と触れ合うことで、新たな発想を得るのもいいだろう。ぜひ積極的に参加して欲しい」
とは大和君のお姉さん。礼先生による檄である。
運動場の端まで通る声だが、ジャージを着た小学生ががんばっているようにしか見えない。
「えっと……具体的になにをすればいいのさ姉さ……ガフッ」
言いかけた大和君は、竹刀の一撃で一撃され、地面に沈んだ。
「先生だ」
足には来ているようだったが、すぐに復活するあたりタフだった。
「何をすればいいんですか礼先生……」
「よろしい。それは自分達で考えるように。一応、スポーツで使う危惧一式は用意してあるのでそれを使ってもかまわない」
「……スポーツってそんなんでいいんですか?」
「正解は無い。君たちが話し合って決めるのだ。では始め!」
という感じに始まった授業だが、つまり何をすればいいのかというと、よくわからない。
ふと視線を彷徨わせると他のみんなも困惑していた。
「そうは言ってもねぇ。こんなところで能力開発も何もなぁ」
とは時坂君の台詞だった。
確かにスポーツ用具一式をわたされて有効に活用できたとしても超能力が強くなるとも思えない。
「いや、この授業の意義はあるだろうさ。確かに個人の能力に開きはあるようだしな」
そう言うホルスト君の視線の先には女の子達がいた。
ここで自然に視線が集まるのはこの間能力を暴走させたばかりのシーラさんだ。
彼女はしかしもう吹っ切れているのか視線を受けてもひるみもしていない。
だが、ホルスト君が見ていたのはその隣にいた小柄でおどおどしている女の子だった。
べぇだ君は真っ先に視線に気が付いてホルスト君に忍び寄る。
「あれはマリーベルちゃんだね! なになに? あの子が気になるの?」
「いや? 今はいい。それで大和の奴の秘密はどう確かめる? お前が忍び込んで探ってくるか? 謎のエネルギー体は伊達ではないんだろう?」
「おいおい君ね? ボクを覗き魔扱いしないでくれるかな? ある程度のモラルはもっているつもりなんだよこれでも?」
「いやお前、個人情報抜き出してきた分際でなに言ってんだ。お前俺の持ちもんになんかしたら、本気で殺すからな?」
「さわりのところだけだから! へんなところは見ていない! 物理的な覗きなんて宇宙的にもありえないから」
「そうなの?」
「そうだとも! だから、ことは慎重に運ぶ必要があるよ?どう切り出す?」
腰を落としジェスチャーで慎重をアピールするべぇだ君だったが、そんな大げさなことではないと僕は思った。
「……普通に聞けばいいんじゃないの?」
僕がそういうと目を細めたホルスト君に一言言われた。
「ばかか」
「えぇー」
「直接言って答えるわけねぇだろ?」
「うまくごまかされて終わりだ」
「そうだよ! 奴とてそれが明るみに出れば八つ裂きにされることなどわかっているはずだ!」
「いや、そこまでのこと?」
「「「そこまでのことだ!」」」
どうやら僕以外の意見は完全に一致しているようで、自分の認識の甘さを再認識した。
結果次第では、大和君は八つ裂きにされてしまうらしい。
これは大変だと思ったが、呆けていた僕は三人に戦力外だとみなされたようだった。
「山田はダメだな」
「……それで。お前女子に友達いるって言っていたろう? それとなく聞き出して来い」
「……嫌だよ。それこそ、べぇだが忍び込んでみてきたら一発解決だろうが」
「……だからやらないってば」
彼らは端っこの方で座り込んで、ものすごくこそこそ会議をし始めた。
仲間に入れて欲しい。
いやしかし、会議の内容からして、僕は中立の立場でいるべきだと踏みとどまった。




