36
「……何が起こってるの?」
「……知るか」
べぇだとホルストの二人は誘われもしないのに、裏山に来ていた。
その名も偶然訓練をかねて登山に来ていたらばったりクラスメイトにあっちゃって、仕方ない一緒にお弁当を食べようか? 作戦。
もちろんあわよくばピクニックに参加するためであったが、そこではなぜか重火器を満載した巨大ロボットが大暴れしていた。
ホルストはそんな恐ろしくも心躍る事態に目を輝かせる。
「さすがは世界最高峰の能力開発設備を謳うだけはある。まさか巨大ロボットまであるとはな。対怪獣訓練か?」
「ありそうなこと言わないでよ。で? どうすればいいの?」
「ふむ、倒すのはもったいないな。ああいう巨大ロボットも嫌いではない」
「おや? ホルスト君、ロボット好きなの?」
「ああ。ジャパニーズアニメーション大好きだぞ? 通販で本物を一台買った」
「……セレブ! ってそうじゃなくってアレ倒した方がいいの?」
「いやいや待て待て。あせるのはまだ早い。アレもピクニックの一部かも知れんぞ? 全員能力持ちなんだ、ちょっとしたハプニング気分ということも考えられる。誘われてもいないのに壊したらまずいだろう」
「えぇー。戦闘訓練じゃないよ? ピクニックだよ? 何で巨大ロボットなの? 足六本はえてるし、大砲が山ほど付いてるけど」
「そりゃ付くだろうよ。ロボットなんだからな」
「えー」
簡単に言うと異常事態ではあったが動けない。
彼ら二人にして見たら、尾行してこっそり付いてきたストーカー野郎という評価こそが最も避けるべきものだったからである。
そしてかなりの距離をとりつつ、監視に留めた。
「ボクの秘密の能力で声だけ聞こえるようにしよう」
「おまえ、そんな事まで? プライバシーもなにもあったものじゃないな?」
「波を読むのは得意なの! 音も波なんだから細かいことはいいいでしょ! でもこれ秘密!」
「まぁこの際都合がいいけどな」
大和達はどうやらかなり慌てているようだった。
「なんあんだこいつ!」
「これってロボット……よね? 今日は訓練の予定は入れてなかったでしょ?」
「……逃げ場がない。囲まれてる」
「やれやれ」
大和 学を含めたここにいる全員が事態を正確には把握していない。そんな口ぶりだった。
べぇだはフンスコと鼻息を荒くした。
「みんなアレに驚いてるみたいだね! 驚いてる顔もかわいいな!」
状況を吟味した結果、ホルストは頷いた。
「ふむ。狙ってやったのではなかったか。これは、少し手を貸したほうがいいかも知れんな」
「だね! いや、ここは颯爽と登場してカッコいいところも見せちゃう場面なのでは?」
そんな話し合いが行われ、ちょっとだけかっこよく飛び出していこうかと思っていたその時、二人は完全に出遅れた。
今来たばかりの登山道を、それこそミサイルみたいな速さで駆け抜けた人影には、まるでためらいなどなかったからだ。
「おおおおおおおりゃああああああ!!!」
ズドンと一撃。
飛び上がり、両足をそろえて、巨大ロボットの真正面に突き刺さるドロップキック。
金属で覆われたボディの中心にキックは命中。ビルのような高さのそれは浮き上がって横転した。
「学! 無事!」
土ぼこりを盛大に撒き散らせ、ロボットが沈むように倒れると、空から女の子が着地した。




