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大きく陥没し、ひっくり返るロボット。盛大に上がる土ぼこりは渦を巻く。
それをやった女の子に、大和 学は両手を振って叫んでいた。
「かりん! ああ! 大丈夫だ!」
「そう! よかった!」
太陽のような笑顔を浮かべるのは、早乙女かりん。
確か今日は設備のテストとかでピクニックに来れないはずの女子だ。
そして彼女は、今だ六本の足をばたつかせるロボットに向かって舌打ちする。
「こっちは巨大ロボットとか! なに考えてんのよあいつ!」
「おや、こっちに来たのか。予想よりも早かったな」
そう言った薊 マイに早乙女は叫んだ。
「貴女ね! わかってたなら言っておきなさいよ!」
「すまないね。いや実際こんな暴挙に出てくる可能性はそう高くはないと踏んでいたんだがね」
「それにしてもこいつらかったいわね!」
ただ無理な突撃は相応の反動を生む。足がしびれているらしい早乙女に薊は言った。
「ああ、それはそうさ。このロボットは君の攻撃力を想定して作られているだろうからね」
「……向こうにいた人型の中には毒ガスが仕込んであった」
「ああ、それもまた君には効果的だろう。よく研究している」
「あんたなにか策は講じてるんでしょう?」
「策も何も、こっちにはうちの学生がたくさんいるから、戦力的には申し分ないはずだったんだけど、向こうさん本当になりふり構ってないみたいだね」
薊の視線の先には、ぞろぞろと山の風景が金属の光沢の群れに覆われていく。
いったい何体隠していたのか。いや、これは今まさに攻めてきたと言った方がいいレベルだろう。
今まさに戦争が始まりそうな物量に、ここにいる全員が冷や汗をかいた。
「ハハハ。全部細工がしてあったとは、設備的には面白かったのにもったいないなぁ」
「あんたね! チェック位ちゃんとしときなさいよ! そんなこと言ってる場合?!」
「ん。今後は気をつけるようにしようと思うよ」
早乙女 かりんは援軍として強力である。
それを差し引いてもあれだけの戦闘機械の群れ、相手にするのは骨が折れるだろう。
身を隠していたホルストとべぇだは案外余裕のありそうなやり取りを眺めつつ、ようやく正気を取り戻した。
「おっと、いきなりで不意を突かれたな。 早乙女の奴も中々やる」
「でも敵がぞろぞろ出てきたよ?」
「ふむ……これは大変なことになったようだ」
「そうだねー。でもこれで確実にトラブルだとわかったのは大きいよね?」
べぇだはにやりと笑う。
もし仮にここで、体をエネルギーに変換して、機械内部に入り込める宇宙人と、広域破壊に優れた太陽のファラオが登場すれば、大きな戦力として歓迎されるに違いない。
これは間違いなく登場のチャンスだった。
「これはもう行くしかないみたいだね!」
「そのようだ。私の手を煩わせるとは。この貸しは高くつくぞ」
「あぶなぁあああい!」
「……」
「……」
今まさに二人が颯爽と登場しようかというそのタイミングに突風が吹いた。
聞き覚えがあるようなないような野太い声が聞こえた気がする。
だがそれにも増して重要なのは今まさに襲いかかろうとしていた対象達が木っ端微塵に砕かれたことだろう。
巨大な拳の凹みが出来たと思ったら、後は衝撃で粉々である。
ピクニックの一行は何が起こったのか分かっていないようだったが、遠距離から、拳の型衝撃波が放たれたことをこの場にいた二人だけは理解していた。
「このでたらめさ……」
「これはまさか?」
山田公平という名の一見すると地味な少年の姿が、二人の脳裏によぎる。
何よりこのでたらめさのみで、誰が来たかはっきりと証明していた。
「いかん!」
「いいとこ見せられず終わる!」
ばっとホルストとべぇだは同時に振り向いた。
ドシュドシュドシュ
やけに重い足音は彼らの背後からやって来たからだ。
「やぁみんな大丈夫だった?」
「……ん?」
「……だれだ?」
ただそこにいたのは筋肉だった。
頑強という言葉に足が生えたような、むきっとした身の丈二メートルはありそうな大男が、なんか知り合いっぽい反応でこちらに手を振っている。
どうやら知人らしいというのは勘違いだったと二人は同時に考えた。
「僕だよ山田公平だよ!」
「「うそだ!!」」
「嘘じゃないとも!」
叫んだ二人は野太い声に勢いを殺された。
よく見れば山田と似たような顔のパーツが散見されるが、だからと言って本人だと認めるには弱すぎる。
いや、他が濃すぎるのか。とにかくホルストは半信半疑で尋ねた。
「い、一体何があったらそんな事になる?」
「ここ数日修行してたんだ!」
「な、何のために?」
そう恐る恐る尋ねると、山田公平は、無駄にくどいサンオイルのような笑顔で事情を話し始めた。
「とある人から僕の資質を認められてね! そして僕は厳しい特訓の末、免許皆伝をもらい……新たな流派を起こす許可をもらったんだ! 厳しい特訓の末に!」
「がんばったのはわかるけどさ」
「一応聞いておこうか」
べぇだは別人と成り果てた山田公平から目をそらし。
ホルストはさすがに引きつった表情で続きを促すと、筋肉は岩の様な拳を握りしめて自らの流派を名乗った。
「その名も山田公平拳!」
「まんまだな」
「まんまだね」
「どうだろう? 今や僕は山田公平拳開祖、この力はもはや正体不明なんかじゃない! 厳しい特訓によって得られた物だといえると思うんだ! だからもう怖くない!」
二人は顔を見合わせ、しばし考えた後筋肉に言った。
「正直……前より怖さは増したな」
「意味わからなさも倍増した感じがあるな」
「インパクトもボクはビームくらいの方が会ったかもしれない」
「ああ! それはいえているな! 素手でぶっ飛ばすのはなんというかシンプルすぎないか?」
「……!!!???」
衝撃の展開と動揺。
誰も報われない結末の中。ピクニック組の声が聞こえる。
「な、何がなんだかわからないけど……これで終わり?」
「なんだかわからないけどいきなりばらばらになったな」
「……」
みなぽかんとする中、早乙女はすぐに叫んだ。
「ごめん! 私すぐに戻らないと! じゃあ学! また後で!」
「かりん! ありがとな! 今度はまたみんなでピクニックいこう!」
「――! うん!」
ひとまず終わり。そう終わりだった。
山は粉砕された瓦礫の山となり、ピクニックなどもはや不可能。
男達のピクニックは参加する前に、終了が確定した。
長い沈黙の中ポジティブナ発言が出来る元気がある奴は、残念ながらこの場にはいない。
「……えっと。もうあいつらも帰るみたいだからこっちも帰るか?」
「うん……そうだね」
「……無駄? いや逆効果……だと?」
今日の打ち上げは、密かに作った弁当で決まりだった。




