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「残念です。せっかく一緒に準備しましたのに」
「仕方ないわよ。そういうこともあるって」
シーラの白い頭がしょんぼりとうなだれる。早乙女は困った顔でそう言った。
「まぁがんばってくれ。くれぐれも油断しない様に」
「……薊さんが一緒に行くのは、釈然としないんですけど」
ただ薊にそう言われるのだけは、納得いかなかったらしい。
そして薊もまた、当然だと頷いた。
「そうだろうね。私も無念だ」
「貴女ねぇ……」
「大丈夫だよ。君の力は君が思っているよりも強い。今回のテストも素晴らしい成果を残せるだろう」
「そういうの正直どうでもいいんだけど……」
「そういうな。とても大切なことだよ? 人類の進歩には」
よくわからない励ましをして、薊は早乙女の肩を叩いた。
それになにかを感じ取ったのか、未練を完全に捨てて、早乙女は頷いた。
「……まぁいいけど。貴女のことだからどうせ何か意味があるんでしょう?」
「どうかな? たまには息抜きをしたいだけかもね」
「まぁせいぜい楽しんでくれば。貴女いつもすごく忙しいでしょうし」
「まぁそうだな。そうするよ」
面倒ごとを押しつけられた割にはあっさりした別れ。
これからシーラと薊を含めた、他の女子と大和はピクニックへと向かい、早乙女は一人、新設備の実験へと駆り出されるわけである。
「……なんで俺はこんなところに来てしまったのだろう?」
そして時坂は、そんな見送りの光景を、意識して追いかけているわけだ。
自分で言いだした手前早めに切り上げられるなら、少しくらい手伝ってもいいかな?
そんなことを思ったり思わなかったり、でも話しかけそびれたり、そうでなかったりしたわけだが。
気の毒になんて思っていないと時坂は言うだろう。
しかしその結果こそこそと、それはもうみっともなく適当な物陰に隠れる姿は、みっともなさ全開だった。
「ホントに何してんだ?」
今日は男子の馬鹿共から、ものすごく早朝からでかけないかと声をかけられたが断った。
その上で何をしているかと言えば、地面に這いつくばっているのだから、この姿は見せられない。
「……あいつらがどこ行ったかはなんとなくわかるけどな」
予定通り大量のトラックと、スーツ姿の長身男が一人駐車場で待つ早乙女の元にやってくる。
男は名刺を差し出して挨拶していた。
「どうも始めまして。貴女が早乙女かりんさんですね?」
「はい、今日はよろしくお願いしますね」
「ええこちらこそ。今回テストさせていただきますのは、私どもが開発しましたアンドロイドです。従来の物よりも遥かに強力で、人体を超えた動きを実現しております。従来型の戦闘型アンドロイドよりも30パーセント反応速度もアップしていまして、皆様の戦闘訓練もより高水準なものになること間違いありません……」
「はぁ」
「ああすみません。あまり興味はありませんよね」
「いえ、そんな事は」
「いや、無理もありません。つい自分の専門のことになると話しすぎてしまいまして」
それは予定通りだった。
「ええ本当に……お気になさらず」
「はぁ」
「一先ず、第一運動場の方で今日のテストは行わせていただきますので、早乙女さんはなるべくリラックスしてテストに望んでもらえればいいですから」
男は早乙女に微笑み、準備に向かう。
おかしなところは無かったが、何か手伝えることはないかと出て行こうとした時坂は、そこでいったん踏みとどまった。




