第3話 太陽、施設の女子にも大人気
施設に戻ってきたオレは、まず洗面所に向かう。
手洗いうがいをする傍ら、集まった子供達の顔ぶれを確認。
みんなワイワイと顔を洗ったり、歯を磨いたりしていた。
個々の名前を呼んで朝の挨拶をしながら、みんなの身体の魔力をチェック。
魔力の巡りを視る事で病気や怪我をしていないかを判断しているのだ。
オレの朝の欠かすことのない日課のひとつ。やはり仲間には健康であって欲しい。
この施設には中学生が男1人女3人で合計4人。小学生が男3人に女2人の合計5人。未就学児童が男女各2人の合計4人。総数13人の子供達が生活を共にしていることになる。
親父殿(施設長)がガキ共を起こすと言っていたが、学校に行っている子供達は自分で起きてきていて、たまに幼児の内誰かが寝坊している事があるぐらいだ。
朝食の為洗面所から食堂に行くと中学生の女子3人が駆け寄ってきた。
「太陽おはよー。う〜ん、今日も可愛いね〜。どれどれお姉さん達にハグさせなさい。朝イチの元気補充しなきゃね〜」
中学生女子3人にもみくちゃにされる。字面が酷いが、日課の一つだ。これがないと彼女達が元気が出ないらしいので仕方がない。
前世でも美人のシスター達に囲まれて育った為、自分自身思うところはないが親父殿に言わせると異常らしい。普通は照れるぐらいはするらしいので。
と、そこに乱入して来る幼女が。
「あーーっ、おねーちゃん達ばっかりズルい!太陽くんはエリのこいびとなのにー!」
自称オレの恋人、幼年組の1人同い年の「杉下エリ」だ。
濃い茶色の髪を横で纏めて垂らす、いわゆるツインテールにしていて、髪の色、目鼻立ちがはっきりしているところからおそらくハーフである事が予想される。将来はかなりの美人に育つだろう。
エリもオレと同じく親を知らない棄児なので、立場が一緒のオレに懐いていつも後ろをついて来ている。
3人の中学生を押し退けたエリは、そのままオレの頭を掴み口と口のキスをしてきた。流石にこれは日課ではない……稀にあるが。
「エリ……何回も言ってるけど、女の子が簡単にそんなことしちゃいけないよ。」
中学生3人娘のジト目を流しつつエリに説教をし始めるのだが、彼女はどこ吹く風で「結婚するからいいもーん」とまったく取り合わない。
ホント朝から疲れる……もしオレが物語の主人公なら「やれやれ」と溜息をついただろう。
その後も、3人娘に追加でもみくちゃににされたり、小学生組や幼児組にからかわれたりとしている所に中学生組唯一の男子「壇 康隆」(だん やすたか)が入ってきた。
「おら、朝食できたぞ!手の空いてるやつは運べ。」
本来、食事の準備は専属の調理師さんがやってくれるのだが。彼は中学卒業と同時に料理人になる事を決めており修行も兼ねて調理補助をやっていたりする。
皆が手伝いの為にわらわらと厨房に向かう中、彼はオレの頭を撫でながら先程の騒動を労ってくれた。
「さっきはお疲れ。ホント太陽はすごいな。普通はそれだけ女の子にモテると周囲から嫉妬されたり、嫌がらせされたりするんだけどな。太陽の場合受け入れられてるし。オレも正直お前にかなう気がしないよ。5歳児なのになぁ」
「何言ってるの、康隆兄さんの方がすごい人だっていつも言ってるでしょ。中学2年で将来の事を決めていて、その為にやるべき事をやる。僕らみたいな環境で腐らずに前を向ける事がどれだけ難しい事か。」
「ははっ、そういう所が敵わないんだって……さっ、とにかく飯を運んじまおう。今日のサラダはオレが1人で準備したからな。出来立ての内に食って感想をくれ。」
オレはこの人を偽りなく尊敬している。
彼も棄児で、しかも引き取られた家で虐待まで受けていたにもかかわらず腐ることもなく、この施設の子供達をまとめ、最年長としての責任を果たそうとしている姿勢は非常に好ましい。
彼の将来、何か困難があれば全力で助けになれればとも思う。
そんな彼が初めて1人で作り上げた料理だ、しっかり味わって厳しい意見をしてあげないとな。
食事の準備が終わり、子供達、施設長、指導員(職員の事)が席に着き食事が始まる。
「康隆兄さんこのサラダ美味しいよ。ゆで卵を細かくして散りばめてるから優しい味わいだし色合いもいい。あえて言うなら、ドレシングは上からかけるだけではなく最初に和えてからの方が味が均一でいいかもね。」
「太陽は相変わらず的確すぎるだろ。頼むから料理人にはならないでくれ。間違いなくオレより美味いモン作りそうだ。」
「あんた何情けない事言ってるのよ、追い付かせないぐらい言いなさい。まあ太陽は天才だからしょうがないけど、ね〜、太陽♪」
「そうだよ、わたしのだんなさまだもん!お料理も絶対おいしいよ!でもしょうらい結婚したらエリがごはん作ってあげるからね〜。」
康隆兄さんが苦笑しながら突っ込み、3人娘達が注意し、エリがノロケる。
いつもの光景。
ほのぼのとした一日の始まりの団欒、そんな平和なひと時に波乱が飛び込んできた。




