16話『メガネ君とブラックサンタクロース』
「めっがねくーん!」
「・・・黙れ、喧しい。用もないのに来るな」
「ひっどーい!決めつけないでくれる?今日は用があって来たの!」
「何だ?」
「クリスマス、私と一緒に過ごしてくれない!?」
「くれない。冬休み中は朝から晩まで予備校の冬期講習入れた」
「うっわ、枯れてる!青春真っ盛りな高校生がクリスマス返上で勉強なんて!」
「・・・赤点補習で冬休みを潰す君には言われたくない」
「がーん!」
「むしろ、補講の先生に同情する」
「ががーーん!ひ、酷い・・・。せっかくサンタさんにプレゼントに『メガネ君を下さい』って手紙書いたのに・・・」
「生身の人間を物品扱いすんな。つーか、君の所にはクネヒト・ループレヒトしか来ない」
「くね・・・?何??」
「ドイツの言い伝えにある、黒いサンタクロースの事だ」
「黒いサンタ??」
「そう、普通のサンタクロースは良い子にプレゼントをくれるが、悪い子にはクネヒト・ループレヒト・・・つまり悪魔がやってきて、石炭やジャガイモをプレゼントし、豚の臓物などを部屋に撒き散らすという」
「うわっ!嫌がらせだっ!」
「一説には悪い子を袋に詰めて拐っていくともいう」
「怖いよ!子供泣くよ!!」
「そうだな。クネヒト・ループレヒトは『悪い事をすると怖い物が来る』という脅しの存在だ」
「・・・ドイツのブラックサンタクロースは、日本のなまはげなのね」
「そういう事だ」
「ちぇっ、メガネ君はクリスマス予定ありか。じゃあ仕方ないから私もバイト入れちゃお。せっかく彼氏と過ごすからって無理矢理シフト外してもらったけど、人手不足だし」
「・・・無謀にポジティブな未来予想で他人に迷惑を掛けるなよ」
「“彼氏の予定が合わなくて、クリスマス空きました。バイト入れます”っと。メール送信!」
「・・・“彼氏は居ないからクリスマス空いてます”だろ。事実を書け」
「ちょっとくらい見栄張らせてよ!」
「嘘つきにはクネヒト・ループレヒトが来るぞ」
「しくしく。あーあ、クリスマスは寒空の中、ミニスカサンタでケーキ売りかぁ・・・」
「またケーキ屋のバイトか」
「そう!メガネ君も予備校の帰りに寄ってよ。夜はケーキ半額になるよ!」
「・・・その前に完売するように頑張れよ。つーか俺、そんなにたくさん甘い物食えないし」
「えー。私、5号のケーキくらい一人で食べちゃうよ!」
「・・・そういえば、ホールケーキのサイズって1号2号って呼び方なんだよな。イマイチ大きさが理解出来ん」
「え、知らない?ケーキのサイズって、1号が3cmの事なんだよ!」
「・・・そうなのか?」
「そう。日本のケーキはシャッカンホーが元になってるの」
「しゃ・・・?ああ、尺貫法か」
「それそれ。号数はケーキの直径の事で、1号は一寸なの」
「一寸・・・約3cmか」
「うん。だから、2号なら2×3cmで直径6cm!」
「成程な。・・・初めて有馬に知性の光を見たぞ」
「誉めて誉めて!遠慮なく誉め称えて!!」
「君の食い意地には感動した!」
「・・・誉めてないでしょ、それ。あ、バイト先からメール来た」
「ん?」
「今日、一人来られない子が出たからシフト入ってくれって。じゃあ、行くね!クリスマスはお店に寄ってねー!」
「あ、おい!・・・だから、店の場所知らないっつーの」
・・・・・・
「5号のケーキ一人でって・・・凄くないか!?」




