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第73話『私の半身』

アリス視点です。

私の半身ーーー


それは私であって私でない私に最も近しい存在ーーー


私の半身ーーー


近すぎる存在、故にあらゆる異変に勘づきやすい存在ーーー


私の半身ーーー


それは同時に似た思考を持ち、時には傷つける存在ーーー


私の半身ーーー


でも……どこか、根っこの深い…深い所で繋がっている存在ーーー


私の半身ーーー


それはーーー……この世界でたった一つの私の………






『生きがい』といえる存在ーーー『だった』






あの男と出会うまではーーー











4年前ーーー………

私は今の学生寮から遠く離れたとある田舎町で暮らしていた。

両親は私が幼い頃に私と双子の妹を父方の祖母に預けて渡米したので日本にはいない。顔もよく覚えていない。そういった経緯があってその田舎町に住んでいたのだが、実質の育ての親である祖母も既に他界してしまい、その頃は私と双子の妹の2人で田舎町の家屋で暮らしていた。無論、まともな生活ができるはずもなく私は生活費のために毎日学校に通いつつ、朝夕の新聞配達のアルバイトに勤しんでいた。私の双子の妹もやりたそうにしていたがさすがに妹までにさせるわけにもいかず、代わりに家事の手伝いをしてもらっていた。

「………はぁ、きっついわ……」

朝の新聞配達が終わり私はボロチャリをキーコキーコと鳴らしながら家に向かって走らせていた。

「ていうか、上がり坂でこのボロチャリは本当に辛いわね………はぁ…はぁ………」

辛い事はこれだけじゃない。家計も本当に辛い。新聞配達のアルバイトなんてたかがしれているし、光熱費、ガス代、水道代、食費ですぐに吹っ飛ぶ。やってられない……

「せめて、仕送りとかあったらねぇ………」

両親は外国にいるので催促などできやしない。恨みたくもなる、この境遇に。

「あぁ〜〜〜!!!もぅ!!!さっむいわねっ!!!!!」

朝のやけに涼しい風が汗が染み付いたシャツに当たり私の体温をドンドン下げていく。あー、早く帰ってシャワー浴びたい………






そんな苦しい中でも私はその頃の生活に充分満足していた。






「たっだいまぁ〜〜〜………」

ようやく我が家に到着した私は古いガタついた戸を開き、中へと踏み込む………

「……なによ、この匂い………」

我が家に入ると、鼻を突くような匂い……あれだ、プールの殺菌剤に近い匂いが立ち込めていた。

「うっ……気分悪っ……」

この先の状況を目の当たりにしたくないがそうも言ってられない。早く朝食を作って学校に行く準備をしなくては………そして、私は覚悟を決め、我が家に踏み込む………グニ………?『グニ』……?

「………って、うわっ!?せ、先輩っ!?」

床を見るとうつ伏せで先輩もとい八尾麻里先輩が倒れていた。

「ちょっ……どうしたんですか!?しっかりしてください先輩!?」

「うぅ………この声は……アリスちゃんかい………?」

私を虚ろな目で見つめる先輩はなぜか瀕死状態だった。

「あちしは………あちしはもう……もぅ、だめだじぇ………」

「一体何があったんです!?」

「………にゃはは……最後は……アリスちゃんの胸の中で死ねるのは………あちしの本望だじぎゃばっ!」

ダバダバダバダバ〜〜〜〜〜!!!!!

「うっわっ!?」

いきなり先輩は吐血(?)し、その場で力尽きた………何よ、この超展開………(汗)

「この先に一体何があるっていうのよ………」

………いや、知っている。正確には私はこの先の状況が予想できる、けど………その予想は当たって欲しくないというのが本音だ。………そしてそんな複雑な気持ちを抱いたまま私は問題の匂いの源がある台所に踏踏み込んだ………











「あっ♪お姉ちゃん、おっかえり〜〜〜♪♪お姉ちゃんが新聞配達行ってる間に私が朝食作っておいたよ〜〜〜〜〜♪♪♪」






爽やかな笑顔を振りまく我が妹、エリスがフリフリのエプロンを身に付け料理という名の悪行を行っていた。











「………で?エリス?何か言う事は?」

「………うぅ、ごめんなさいだよ………」

「えぇーーーーー!?ちょっ!?アリスちゃん!?今日は朝ごはん食パン1枚だけぇーーーーー!?ひどいひどいひどいよぉーーーーー!!!!!こんなの幼児虐待!幼児虐待!!幼児虐待ぃーーーーー!!!!!訴えてやる訴えてやる訴えてやるぅーーーーー!!!!!うぇ〜〜〜〜〜ん!!!!!麻里ちゃんしんぢゃうーーーーー!!!!!」

「先輩はちょっと黙ってて下さい、いや黙りやがれクソガキ」

てかあんたは幼児じゃないだろ。

「で、でもでも!!!お姉ちゃん!!!私、努力はしたんだよ!?前よりはちょっぴりおいしくできたかな〜〜〜???って自分で思うんだよ!?(汗)」

「………で♪努力して味噌汁を学校のプールに変えちゃうんだ〜〜〜♪♪すっごぉい、エリスちゃん♪♪♪」

「えへ♪」

「うふ♪」

バン!!!!!

「って、褒めて無いわよ!!!!!反省しなさい!!!!!って言う意味よっ!!!!!」

「ひっ!お姉ちゃん!!!鬼畜!!!」

「どこがよ!?その家事を少しでも手伝いたいっていうあんたの気持ちは分かるわよ!けどね!!結果が伴わなくちゃ結局意味なんて無いのよ!!!周りが迷惑を被るだけっ!!!!!分かった!?」

「………ごめんなさい」

エリスはシュンと顔を伏せた………しまった、また言いすぎちゃった………はぁ、やっぱりイライラしてるのかしら?私?ついエリスにきつく当たってしまった………エリスの気持ちは嬉しいんだけどね。今のやり取りから分かるように我が双子の妹、エリスは料理が壊滅的に下手だ。というより家事全般が苦手だ。なんていうか……要領が悪いのよね、この子は。けれど、少しでも私の負担を減らそうと積極的に進んで家事をしようとするので私も断るに断れない。はぁ………仕事が余計に増えるのは正直言って辛い(汗)

「……はぁ、もう済んだ事は仕方ないわね……さぁ、さっさと食べるわよ」

エリスの料理(?)を後片付けしていたおかげで朝食を作る時間がなくなったので今日は食パンと牛乳といういたってシンプルなメニューになってしまったのだ。

「………うん」

しかし、私に怒鳴られたエリスはまだ気にしているのか顔を伏せたままだ………はぁ、仕方ないわね。

ワシャワシャ

「……え?お、お姉……ちゃん……?」

私はエリスの頭を撫で………

「はぁ、もう気にして無いわよ………だから元気だしなさい」

「……!う、うん!!!」

さっきまでと違いパァーっと明るい笑顔になるエリス………やっぱりこの子は笑顔が一番ね。容姿は私と同じ銀色の髪で髪の長さは私とは違いショートへアーだ。

「ぶー!ぶー!」

エリスの隣でぶー垂れているのは1つ年上の麻里先輩で私と同じ中学校に通っている。なぜか毎朝私の家に来て図々しく朝食を食べる。かなり厄介者だがいつの間にかそれが習慣になってしまった。1番最初に餌付けしたのが間違いだったか………

「先輩にはジャムもバターも恵んであげませんから」

「アリスちゃんひどいっ!!!!!(泣)」






最後の食パンのかけらを口の中に放り込んだ私は学校へ行く準備をするために一旦自分の部屋に戻った。






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