第71話『俺と彼女の選択』
「…なんであんたがここにいんのよ……」
恐ろしい形相で俺を睨むアリスさん……
「ご、ごめんなさい(汗)」
あ、あれ!?ここで謝るのはなんかおかしいだろ!?俺、超へたれ〜〜〜!!!
「…まぁいいわ。…で?なんでここにいんのよあんた」
俺の反応を察してかアリスは少し顔を緩め、俺に問う……女の子に気を遣ってもらう俺って一体……(泣)
「い、いや…なんか麻里さんが俺をここに呼び出して……」
デートの事は伏せた。なんか言ったら殺されそうだから。
「………やってくれたわね。あの子……」
そう言うとアリスさんは俺に背を向け歩き出す。
「……え?ちょ、ちょっとアリスさん……?あ、あの……ど、どこへ赴かれるのでしょうか?」
俺の声に反応したアリスは振り向き……
「ついて来ないで」
それ以上は話すことは無いとばかりにこの場から離れようとするアリス……だが俺は……
「ちょっと待てよ!!!アリス!!!」
なぜか身体が自然にアリスの方向へ動いた。自分でもよく分からない。
今から俺がしようとしている事ははっきり言ってお節介かもしれない。
けど………今、ここで俺がアリスを止めなければ………
もう二度とアリスと会えないようなーーーーー………そんな気がしたから。
「!?」
だから俺はーーー………いつの間にか俺の左手はアリスの右手を握っていた。
………
手は柔らかくて温かかった。あぁ……アリスはやっぱり女の子なんだ……これが女の子の手なんだなって……
………
ふと、アリスの顔を見ると………怒っていると思ったが驚きの表情をしていた。
………
そしてふとある記憶が俺の脳内を駆け巡ったーーー
『………アリスちゃんはね。男性恐怖症なの』
「………っ!」
パチン
俺の手がアリスによって払われた。
「あ…ご、ごめん………」
俺は………バカだ。なんで……なんで俺はあんな大事な事を忘れていたんだろう………
こんな俺が……俺が何が出来るってんだ……これじゃあ、ただの変態じゃねぇか………
……でも。さっき感じた違和感はなんだ……?俺から離れていくに連れてこの世界から消えていくような……
そんな不思議な………………俺の感じた感覚は…………
「………」
アリスは……震えていた。なんだ……その弱々しい瞳は。こんなアリス……今まで見たことがない。
………
そっか……俺は禁忌を犯したんだな………俺は取り返しの無い事を………
ははっ、なんだ……俺、何やってんだよ………助けるとか勝手なこと考えておいて挙句の果てにはその機会を自分で潰すって………というより何を助けるのかも未だにわかんねぇのに………俺は何やってんだ………は、ははは………もう、やめよう。俺にその資格は無い………
「………もう、帰るよ。俺………」
「………」
最後に俺はちらっとアリスを見た。その瞳はすでに光を失っていた………
俺は……結局、何も出来なかった。……いや、何も始まっちゃいなかった。
けど……今となっては………もういい。考えるのはよそう………
結局、俺は何がしたかったのか?
俺は……俺自身が分からない。けど……何かおかしい。
これで本当によかったのだろうか?いや、これでよかったとそう信じたい。
これがたとえ、それが『逃げ』の選択肢であったとしても………
もう、俺に選択肢は無い。俺が決められない。全てはアリスに委ねられた。
もう、俺は………俺は………
「………ちょっと、待ちなさいよ………」
アリスが俺の『選択』を覆した。