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いかにして僕は王国を幸福にして神となったか(後編)

・細かいことは気にしないでください。

 洗脳の手法について詳しく書くと真似されるのでしないのですが、ごく簡単に。

 洗脳のステップは1情報提供でした。僕と僕の家族に都合のいい、国民が畏敬するような情報のみを学校で教えます。


 洗脳のステップその2、価値判断です。

 国民が平和に暮らせるのは王と王妃様のお蔭、貧乏人にも教育と出世の機会が与えられるのは王と王妃様のお蔭だと教えます。

 だから王と王妃様のために働いて御恩を返さなければならないと教えます。

 王と王妃様のために働いて出世してご褒美をもらうのが「正しく幸福」な生き方だと教えます。


 洗脳のステップその3、定着です。

 「王国民の正しくて幸福な生き方」について学校で議論させ、作文を書かせます。

 人間は教えられたことをまず信じますが、自分で考えたことはさらに強く信じ込む傾向にあります。

 だから教師に「正しい」情報を与えさせ「正しい」価値判断をさせることで、各自が「正しい」答えを導き出します。

 もちろん答えは決まりきっていています。

 僕と僕の家族に進んで奉仕するのが「正しく幸福」なのです。

 

 洗脳のステップその4、布教です。

 生徒たちに「王国民の正しくて幸福な生き方」を指導するのは僕が一番最初に教育させた直属官僚団の子供たち(チルドレン)の引退者たちです。

 彼らは僕に奉仕した結果として農地と名誉を手にしました。「正しい」生き方をした結果として「幸福」を手にした人間です。目の前に見本を出すことで生徒たちに明確な将来像を抱かせるのです。


―――――――――――


 こうして、僕の幸福は完璧に守られるようになりました。


 王国内ではありとあらゆる物資が豊富に生産されます。

 僕と僕の家族たちのために働くことを「正しくて幸福」だと信じる王国民たちが毎日12時間働いて生産してくれます。

 そして余剰物資は安く大陸中に販売され、代金が国庫に流し込まれます。


 王国の軍隊は大陸で最強です。

 僕と僕の家族たちのために戦うことが「正しくて幸福」だと信じる王国兵たちが少しでも不審な動きをした周辺国をすぐ攻め滅ぼしてくれます。

 周辺国から搾り取った年貢金と略奪金が国庫に流し込まれます。


 王国民は皆幸福です。

 僕と僕の家族たちのために働いて死にます。戦って死にます。それが「正しい」のです。

 毎日学校が増えていき、「正しくて幸福」な教育が行われます。まだまだ未教育の世代や地域が残っていますが、あと十年で行き渡るでしょう。

 

 僕と僕の家族は皆幸福です。

 王国民は皆僕と僕の家族を愛しています。


―――――――――――


 そして僕は25歳になりました。4人目の子供ができました。


 王都。


 木造で断熱とセントラルヒーティング、換気通風などに気を配らせた新造の宮殿に僕は住んでいます。  

 僕はお兄様と長女、次女、長男とお腹の子供と一緒に、特別に作らせた王族シートに仲良く座って、仲良く政務を見るのです。

 

 隙さえあれば長女や次女がキスをせがんでくるので、お兄様と交代でキスをします。


 可愛いのですよ、あう。 


  


 ズブッ……


 あれ?僕の胸から大きな剣が生えているのです。

 なんで?


「は、はははっ……やった、やったぞ!この悪魔め!」

「えっ……」

 

 振り向くと、お兄様の護衛をしている若い近衛騎士が僕の胸に剣を突き刺していました。

 となりではもう一人の近衛騎士がお兄様の首をはね、返す刀で僕の長女と長男を刺し殺しています。


「謀反人だ!!出会え!!」 

 

 遠くで僕の部下が人を呼び集める声がします。


「よくもお父様と僕の親族たちを皆殺しにしてくれたな!思い知れ!」


 ……そんなどうでもいい理由で僕とお兄様を殺すなんて酷いのです!

 僕は遠くなる意識の中で身勝手でワガママな彼らを非難し続けていました。



―――――――――――



 僕は知らなかったのですが、僕とお兄様、そして僕の長女と長男を殺したのは、僕が粛清した貴族たちの家族だったようです。

 彼らは「目を覚ませ!お前たちはこの悪魔どもに騙されているのだ!」と周囲を説得しようとしましたが、すぐに集まってきた僕の家臣たちになますに切り刻まれました。

 ……もう僕には関係のない話ですが。


 僕が死んでから、僕の主だった家臣、ジョアンやクレアやその配下のメイド隊と子供たち(チルドレン)はかろうじて生き残った僕の次女を中心に国を運営していきました。

 とは言っても次女は5歳、何もわからないので、家臣たちの合議制で政治が進められます。

 僕が作り上げた内政と教育制度はそのまま継続されました。



―――――――――――


 そして100年が経ちました。


 政治は有力家臣の合議制で進められ、僕の次女やその子孫たちは「幸せな生活」をするために政治に介入しません。

 王国は他の国を吸収すると、吸収した国にも僕の作った教育制度を導入しました。僕の家臣たちには「こんなに素晴らしい教育制度は他の国に広めなければいけない!」という使命感があったようです。一つの世代を教育し終わると、次の国を吸収してその国の民も教育していきます。


 そして、王国は大陸を統一しました。


 大陸の隅々に学校が作られ、子供たちを教育します。


『私たちが安心して暮らせるのはアリシア様のおかげです!』

『給食と制服が頂けるのはアリシア様のおかげです!』

『勉強させていただけるのはアリシア様のおかげです!』

『私たちはアリシア様とその子孫のお役にたつのが幸福です!』 



 僕は神として大陸全土で祀られるようになりました。

 教育を受ける子供たちは皆幸せそうに僕に感謝の祈りを捧げます。


 うんうん、幸福なのは大事ですよ。


 ……あれ?僕は何がしたかったんだっけ……


・終わりました

・感想ください

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― 新着の感想 ―
とても面白く読ませていただきました。ありがとうございます。(二周目)
[良い点] 長期連載にしても通るような とても良いお話でしたw
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