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世界最強を隠したい俺、学校一の冷徹な氷系聖騎士に監視(同棲)されることになった ――中身は激重感情、記録は凍る監視報告書  作者: ざつ
第1章:押しかけ同棲、始まりました

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第1話:氷の聖騎士が監視(同棲)にやってきた。 ――ドアが閉まるまでは、確かに冷徹だったんだ。

 ピンポーン。


 朝7時。土曜だというのに、ボロアパートに不釣り合いな電子音。


「……こんな時間に誰だ?」


 蓮はあくびを噛み殺して玄関へ向かった。


 高校2年生。表の顔は、早くに両親を亡くした地味な一般生徒。


 裏の顔は、数年前に世界中のダンジョンをソロで踏破し尽くして引退した、世界最強のSSS級隠居ハンター。


 ドアを開けると、そこには場違いな『美』が立っていた。


 青みがかった白銀の髪。彫刻のように整った顔。サファイアの瞳。


 我が校の制服を隙なく着こなした、学校中が知る有名人。


 神代雪菜。


 最近転校してきた文武両道の令嬢――にして、国家直属の対魔特務組織『聖騎士団』の若きエース。氷の最高位魔剣士だ。


「……何の用だ、神代」


 眠たげな目のまま、普段通りの「冴えない陰キャ」を装う。


 雪菜は感情を排した瞳で蓮を射抜き、スーツケースの持ち手を握り直すと、蓮の胸元をびしっと指差した。


「烏丸蓮。単刀直入に用件を伝えます」


 周囲の温度を3度下げるような、冷ややかな美声。


「本日より、国家にとって最重要危険分子であるあなたを監視します。監視の即時性と確実性を担保するため――本日より、同棲を開始します。異論は認めません」

「は!?」


 さすがは氷華の聖騎士。妥協という言葉を知らないらしい。


「おいおい、ちょっと待――」

「お邪魔します」


 制止は無視された。


 ガチャリ。


 背後でドアが閉まる。


 外界から遮断された、その瞬間。


「あ、あのっ……!?」


 振り返ると、さっきの『氷の聖騎士』はどこにもいなかった。


 顔を真っ赤に染め、瞳に大粒の涙を溜め、体を震わせる少女がそこにいた。


「れ、蓮様……っ! お久しぶりですっ、私、ずっとお会いしたくて……!」

「……ん!?」

「に、任務なんて嘘です! 監視は口実で、本当はただ一緒に暮らしたくて、職権を乱用してここに配属してもらいました……!」


 スーツケースをその場に放り投げ、雪菜が身を乗り出してくる。冷気は霧散し、代わりに桃色のオーラが押し寄せてきた。


「蓮様にまた会えたら何て言おうって、毎日鏡の前で練習して……! 学校では冷たくしなきゃいけなくて、それがもう辛くて辛くて……! ああぁぁぁああああ、蓮様、生きててよかったですぅ……!」


 ブレザーの裾をきゅっと掴んで涙ぐむ少女。


 学校一の冷徹美少女が、尻尾をちぎれんばかりに振るワンコと化していた。


 数年前、崩落に巻き込まれた彼女をたまたま助けたことがある。どうやらその時から、彼女の好意メーターは100%を突き抜けてバグっていたらしい。


「……まあ、泣くな。立ち話もなんだし、座れ」

「ゆ、雪菜、とお呼びください……!」

「……わかった、雪菜。お茶淹れるから座ってろ」

「はわわわわわ、ゆ、雪菜と蓮さまがわたしを!?」


 泣いているのか笑っているのか、顔を赤くしたり青くしたり、と美少女は忙しかった。


 とりあえず彼女をソファに促し、キッチンへ。


 泣きじゃくる相手には、温かい飲み物が一番だ。


 マグカップに水道水、ティーバッグ。150ミリリットル。この程度なら一瞬で済む。


 指先を水面に向け、極々僅かな熱量を解放する。


 ――【極小火力:均一照射】。


 かつて国を滅ぼしかけた魔神を、炭すら残さず消し飛ばした最上位魔術。


 その世界最強の火力をミリ単位に絞り、茶葉が最も開く98度まで水を均一加熱する。レンジより速い。


「ほら、熱いから気をつけろ」

「あ、ありがとうございます……はふっ、美味しい……って、ええええ!?」


 一口すすった雪菜が跳び上がった。


「今、発動音が一切しませんでした……! この熱密度制御、まさか伝説の『概念破滅の業火』を紅茶のためだけにミリ単位で……!?」

「いやレンジより速いし美味いし」

「世界を滅ぼせる火力をそんなことに使わないでください! 国家レベルの損失です!!」


 驚きつつも、雪菜はカップを両手で包み、はうぅ、と幸せそうに息を吐いた。


「あの、私なんかがここに居座っていいのでしょうか……?」


 上目遣いで少し不安げに。


「いやいや押しかけておいて……。今更帰らないんだろ、お前。……それに、一人だと寂しかったからな」

「れ、蓮様……っ!」


 顔が再び真っ赤になり、足元のフローリングに霜が降り始める。照れ隠しに周囲を凍らせる、氷の聖騎士の悪い癖だ。


「雪菜、寒い。凍らせるな」

「あっ、すみません、嬉しくてつい……!」


 慌てて頬をあおぐ姿が微笑ましい。


「まあいい。……あ、そうだ、言い忘れてた。うち、先客がいるが犬は大丈夫か?」

「犬ですか!? 大好きです!」


 パッと表情が明るくなる。きっと可愛いトイプードルを想像しているのだろう。見た目だけは合っている。


「なら良かった。ココア、おいで」


 キッチンの奥から、トタトタと短い足音。ブラウンのトイプードルが姿を現した。


「わふんっ!」


 ぬいぐるみのように愛らしい――が、その瞳の奥には王者の風格が宿り、小さな体から大地が唸るような覇気が漏れ出ていた。


「え……っ? こ、この子、ただの犬じゃ……ひ、ひえっ……!?」


 さすが最上位聖騎士。ココアの正体――世界最高位の魔獣を一瞬で見抜いたらしい。


 ココアは雪菜をじっと見つめ、フンと鼻を鳴らすと蓮の足元に擦り寄り、「抱っこして」と前足を伸ばしてきた。


 ――この男は私の主様だ。新参者には渡さない。


「シャーーーッ!」


 対抗するように、氷の聖騎士が猫のような威嚇の声を上げる。


 こうして、蓮の平穏な隠居生活は、激甘ポンコツ聖騎士とちょっと魔獣なトイプードルによって、一瞬で賑やかなコメディへと変貌したのだった。


あとがき

本作品にアクセスありがとうございます。

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この作品はカクヨムで先行公開しています。

先が気になる方はぜひカクヨムでも読んでいただけると嬉しいです!


世界最強を隠したい俺、学校一の冷徹な氷系聖騎士に監視(同棲)されることになった ――中身は激重感情、記録は凍る監視報告書(氷結騎士)

https://kakuyomu.jp/works/11054822662040017243


また、同日公開の 瀬尾茜の事件簿 もよろしくお願いします! こちらはサスペンス、ミステリーです。


憑依体質エージェント 瀬尾茜の事件簿 ~ドジな私が「天才」と呼ばれるのは、七人の幽霊さんのおかげなんです~

https://kakuyomu.jp/works/11054822662040745929


その前に、なろうでのブクマと評価もぜひぜひお願いいたします!!

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