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ep49.第一皇子サイドのお話(6)〜第一皇子の罪〜

「すみません…、泣くつもりはなかったんです」

「うん、分かってる。大丈夫、謝らなくて良いんだよ」


 泣かせたのは私だ。


「むしろ、私が謝るべきだよ。本当にごめんね、エヴァ」

「っ!やめてください!クラウス様のせいで泣いたのではありませんから」

「…うん、やっぱり君は優しいね。今日は疲れただろうから、もう寝ると良い。明日は気分転換に別の場所に行こう。大丈夫だよ、私がずっと側にいる。だから、安心して眠っていい」


 本に集中して睡眠不足なのもあり、嫌なことを思い出してしまったのだろう。


 エヴァは察しがいいから、私が話して欲しいと思っていることに、気付いてしまった。結果、泣かせてしまった。


 久しぶりに夜早くに自室に戻ることになり、私たちは静かな廊下を歩いた。


「エヴァ、今日は一緒に寝よう。大丈夫、本当に眠るだけだから、安心して」

「…クラウス様がよろしいのであれば、私も、今日は隣で眠ってほしいです」


 拳を密かにぐっと握った。もちろん、嬉しいからではない。


「うん、そうしようか」


 普段は人に頼ろうとしない彼女が、私に一緒に眠って欲しいと言うほどに、気持ちを追い詰めてしまったということ。


 私の方の部屋へ入ってもらい、寝る準備をすると、すぐに横になって眠る体勢へと入った。


 始めは身体の強張っていたエヴァだったが、だんだんと眠気が襲ってきたようで、抗うことはできず、だんだんと意識はまどろんでいった。


 30分もする頃には、彼女は眠っていた。


 私は、先程の自身の発言にとてつもない後悔を覚えた。


 エヴァの人生を思うと、私は周りの人間に恵まれていると、エヴァに出会って思うようになった。


 それと同時に、自分がどれだけ阿呆で、愚かで、人生を甘く見ていたのかをこの身に知らされた。


 私は比較的良い両親、そして、周りの人間に恵まれていた。皇族なりの苦労はもちろんあった。


 勉強量は基本的なマナーや知識からマイナーなものまで全て学ばされる。


 ダンスは自分と踊る相手も含めて目立つように立ち回らなければならないし、マナーは自国と親しい国との両方をマスターしなければいけない。


 さらには、自衛のための剣術や魔法においても。護衛など必要ないほど、10人ほどが束になってかかってきても負けないほどには強くならなければいけなかった。それでも、私は周りに恵まれていた。


 優しくもあり厳しくもある父上や母上がいてくれたからこそ、教育は最後までやりきることが出来た。大事で愛らしく、私を思ってくれる弟や妹がいたから、人を慈しむ気持ちを忘れずにいられた。


 隣で静かな寝息を立て、小さな肩をほんの少し揺らしている目の前の愛おしい彼女の人生とはまるで違う。


 自分が泣いているかどうかも分からずに話している姿こそが、エヴァの本当の姿のように感じられた。


 何年も何年も、彼女は家族に助けを求めていたはずなのに見てもらえることすら叶わず、人質としてここへ送られ、ここでも私、…私たちが、何年も無下に扱ってしまった。


 エヴァの深い傷が、このたった数ヶ月で癒えるはずもない。今でこそ小川のように落ち着いて眠っているが、ほんの1ヶ月前くらいまでは悪い夢を見ているのかよく冷や汗を流して怯えた顔をしていた。


 今日話を聞いて、夢の内容に予想がついた。


 おそらくエヴァが見ている悪夢は、メイドたちに虐待を受けていた時のことだ。思い出しただけでも腑が煮え繰り返りそうになる。


 エヴァは望まないだろうが、私は、彼女の人生を滅茶苦茶にしたウェルズリー公爵家の人間たちとそのメイドをそのまま野放しにするなど到底出来はしない。


 罪のない隣国の人間に何かしようとは思わないが、彼らは別だ。今やこの国の英雄である彼女を傷つけた罪は何を持ってしても償うことなど無理だ。


 だがそう、エヴァは望まない。だから、ウェルズリー公爵家には鬼のように働いてもらうし、メイドたちには彼女が味わってきたものと同等の苦痛を受けてもらう。せめてこれくらいはさせてほしい。


 彼女の顔にかかっているこめかみをそっと掬い上げながら心の中で願った。


 『どうか、エヴァが幸せだと思えますように』

 

 









お待たせしてすみません!(˙˙;)

ストーリーが思いつかず長い期間開けてしまいました。また少し空いてしまうかもしれませんが、今作品を何卒よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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