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ep16.悪女の頑張り

 常連さんの家に行った後日、調査を始めて3日目。肉屋の女店主の元へお見舞いの品を届けてきたことを伝えると「ありがとう」とお礼を言ってくれた。


 それから私は昨日常連さんの娘さん、帰り際に名前を聞くと、「リリアーナです」と教えてくれた。


 私が思う伝染病の原因として食材が関係しているのではないかと思った。


 リリアーナから先日聞いたお母さんが食べたものはどこで売られていたのか、今日はその場所を探った。


 なんとか帰りの時間までに場所を特定することが出来た。


 4日目は食べたものを売っていたお店から、その食材がどこで作られたものなのかを聞いた。


 分からない食材があれば、その食材は徹底的にどこで育てられたものか、作られたものなのかを探した。


 全部の食材の出所を明らかにするのに丸2日かかった。ちなみに、欠かさず肉屋の女店主のところにも挨拶に行っている。


 食材の出所が分かった後は、食材が育てられている、作られている近辺で何か病気の根源となるものはないかの調査が必要だった。


 これに1番の時間を要した。


 本を探すのは侍女たちにも手伝ってもらったとはいえ、流石に全てを任せるわけにはいかない。


 それに、見落としがあっても困る。


 この作業には1週間もの期間を要した。



 そして調査を初めて2週間が経つ頃、ようやく、原因を突き止めることが出来た。


 原因は鉛中毒だ。


 そもそもこれは伝染病ではない。


 どうやら最近、土地を開墾するべく山を削ったのだそう。だが、これが良くなかったのだ。


 山を削る際、稀に、岩石に鉛が含まれていることがある。


 今回は開墾を行おうと山を削っていた近くで育てていた畑農家の野菜を食べてしまったことが根源だった。


 早く伝えなければ大変なことになると思った私は急いでエイハムさんに伝えた。


 エアハムさんに伝えることは簡単だ。あまり私を敵視していないし、肯定的に首肯してくれる。


 だが問題は私を敵視している皇族たち。


 それでも立ち向かうしかなかった。


 第一皇子、第二皇子、第一皇女、皇帝陛下、皇后陛下を呼んで、一通りの事情を話した。

 

 やはりと言うべきか、簡単に納得はしてもらえなかった。


 どうやって分かったのか

 どんな調査をしたのか

 嘘をついているんじゃないのか

 陥れようとしているんじゃないのか


 疑われるのはどうしようもないと分かっていたけど、それでも少し悲しかった。


「それについては、今まで私の監視をしていた方々が全て事実だと証言なさるでしょう」


 唯一、エイハムだけは、私の味方でいてくれたみたい。


 そのための監視役だったわけかと納得した。確かに証言する人をつくっておけば、疑われたとしても彼らが証言してくれるだろう。


 私は何1つ嘘を言っていないのだから、不安に思う必要なんてないはずなのに。


「たった2週間で、どうやって原因を突き止められた?皇宮にいる調査員は皆優秀だ。にも関わらず、原因は突き止められなかったんだぞ」


 皇帝陛下が疑いの目でこちらを見てくる。


「私、昔から読書を嗜んでおりまして。速読術を身につけているのです。時には過去の文献を見るのも大切なことですわ。彼らはおそらく、文献を読まなかったのでは?確かに人に聞くことも大切です。けれど、過去を振り返るのも大切なことですわ。皇帝陛下」

「……分かった。エヴァ嬢の意見を認めよう。だが、これで病が終息しなければ、それは嘘の情報を流したとして重罰を受けてもらう。その覚悟が貴方にあるか?」


 覚悟も何もない。


 私が重罰を受けることは100%あり得ないのだから。


「もちろんですわ。その時は喜んで罰をお受けいたします」

「…もう下がって良い。調査ご苦労であった」

「それでは、失礼いたします」


 もう限界


 調査を始めてから途方もない量の文献を寝るまを惜しんで読んでいた。


 過去なんて何百年何千年と続くのに、その文献を1から漁らなければいけない大変さを、彼らは、彼女たちは考えたこともないのだろう。


 少しくらい寝ても良いだろう。


 離宮に着くと、私のエネルギーは完全に切れた。


◇◇◇


 皇族のみんなが鉛中毒の対策を国民に取るよう、具体的には山の近くで育てている野菜の販売を中止するという指示を出して1週間が経った。


 当たり前だが、その間もグータラしている訳ではなかった。


 今日は私の言葉が真実か、はたまた虚言かを伝えるためだけに皇帝陛下の執務室に呼ばれたらしい。是非とも帰らせてほしい。


「失礼致します」

「ああ、よく来た。座ってくれ」


 入ると、皇帝陛下だけだと思っていた私の予想は見事に外れ、皇族が全員揃って私を待っていた。


「…あの、皆さんはお座りになられないのですか……?」


 おそるおそる聞くと、皇族みんなが、私に向かって頭を下げてきた。


「貴方を疑って本当にすまなかった。おかげで病にかかったと言う人はいなくなった。心から感謝する。これ以上被害を被っていれば、国の危機だった」


 私はギョッとした。


「なっ…!やめてください!皆さんお顔を上げてください!」


 私のあたふたとした声に皇族は揃って顔を上げた。


 私は困ったように説明した。


「貴方方は皇族です。国民をまとめる立場にあるのです。そんな人たちが簡単に人質に頭を下げてどうするのです?私ごときに頭を下げるなど、あってはならないことです。もう少し頭を下げるべき人がいるでしょう」

「…それは、どういうことだ…、?」


 どういうことも何もない。


 これのどこが戦闘国家なのだろうか。


 ただ国を守るためだけに戦力を上げただけの、良い人たちではないか。


「ネイハムさんはずっとこの病の原因を探してくれていたでしょう。それと、国民です。発見が遅れ、かなりの不安と不満が溜まっていると思います。もしかすると、もうじき暴動が起こるかもしれません。その時は私を呼んでください。何とかしますので」

「…分かった。だが、本当に助かった。心より感謝する」

「…私に感謝など、しないでください。それでは、失礼します」


 国一の悪女にはお礼も謝罪も言ってはいけないでしょう?


 間接的に義母を殺したのは私なのに、そんな私が『すまない』とか、『ありがとう』とか、言われて良いはずがなかった。




 


 








最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいですm(_ _)m

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