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ep12.悪女と3人のご令嬢

 第一皇子が別件で私と離れて他の貴族と話している間、私はバルコニーで休憩をしていた。


 このまま平和に終わることの出来るパーティーなんていつぶりだろうと、少し穏やかな時間を過ごしていたが、やはりそう簡単にパーティーは終わらないようだ。


 扇子を片手に、もう片手にはワインを持った貴族令嬢を真ん中にし、両サイドに2人の令嬢を引き連れてこちらへやってきた3人組の令嬢だ。


 1人で来られないのなら初めから来なければ良いものをと思ったが、言うと余計面倒くさくなりそうなので黙った。


「ご機嫌麗しゅう、ウェルズリー公爵令嬢」


 えーっと、教育係に習わなかったのだろうか。

 自分よりも上の貴族には、自分から声をかけてはいけないのだと。


 それとも、自分が下に見下しているものには声をかけても良いのだと身勝手なルールでもお作りになったのか。


「私の名前と爵位をご存じなのですね。でしたら、今貴方たちがなさっていることの失礼さ、分かりますわよね?」

「…っ、うるさいですわ!調子に乗るからこんなことになるんですのよ!」


 パシャっと、赤い何かが自分の元へとかかったのが分かった。


 本当に、面倒くさいことばかりをしてくれる。


 ドレスを汚して怒られるのは私かもしれないと言うのを是非とも視野に入れて欲しい。


「あなた如きが第一皇子殿下の婚約者など、身の程を弁えなさい」


 冷ややかな行動や発言に、私は一斎動じることはなかった。


 むしろ、笑って見せた。


 お前たちがしたことは何の意味もなさないのだという思いと、そんなことで私が逃げるほど弱くはないという意味を込めての笑みだった。


 私は何も言わなかった。


 ただ笑顔を作って彼女たちを見ていると、もう耐えられないというように逃げて行った。


 おそらくあまりこういったことはしたことがなかったのだろう。それで気まずさのあまり逃げてしまったと言うところだろうか。


 どれも魔力の揺れ方を見て推測しただけだから確証はないのだけど。


 それよりも早くドレスを着替えなければダンスの時間に間に合わなくなってしまう。


 急いでバルコニーを出て、誰にもバレぬような素振りで待機場に戻り着替えようとすると、パシッと誰かに腕を掴まれた。


 こんなに急いでいる時に誰がこんなことをと勢いよく振り向くと、正体は第一皇子だった。


「どこへ行くつもりだ」


 鋭い視線を向けながら尋ねてくるので、私はため息をついて返事をした。


「…見て分かりませんか?」

「……、っ!」

「着替えてきてもよろしいでしょうか」

「…ああ」


 ようやく察したのか、第一皇子は私が着替えに行くのを許可した。


 待機場に戻ると、エリーたちにすごく驚かれたが、本当のことを言うとまたとんでもない形相でとんでもないことを言いそうだったので自分が誤って溢してしまったということにした。


 エリー、アルマ、レティはそれぞれお色直しをしてくれ、私は何事もなかったかのように自然に会場へと戻った。


 その後すぐ、ダンスを踊る時間へと移った。


 ダンスの配置は、もちろん第一皇子と私を真ん中に、周りで他の貴族たちが数組踊るというものだった。


 私も第一皇子も、自分の魅せ方を分かっている。


 私は妖艶な笑みで、第一皇子は少し口角を上げて踊る。その間に、私たちは短い会話をした。


「…すまなかった……」

「?、なにがです?」

「ダンスを踊らないつもりなのかと勘違いして強く止めてしまった」


 ああ、だから腕を強く引っ張られたのか。

 納得出来た。


「それなら気にする必要はございません。私が勘違いさせてしまう行動をしてしまったのが悪いのです。殿下は謝らないでください」

「…そ、そうか」

「はい」


 そこからはダンスに集中した。


 ダンスを見る人も、ダンスをしている貴族たちも魅入るようなダンスの出来栄えだったらしく、「お美しい…」「私たちもあんなふうに…」と、その時だけは、私が私生児だということを忘れて発言していて少し面白かった。


 2度目のダンスからは各々懇意にしたい独身の貴族と踊った。


 私の2度目のダンスは、アイヴァー伯爵とだ。


 普通に仲良くしたかった。


 その後も何度か踊り、パーティーはお開きとなった。


 ようやく終わったと肩の力を抜こうと思った時、第一皇子が話しかけてきた。


 やっと休憩出来ると思ったのに…、でも我慢。

 明日は侍女のみんなも昼食を取ることが出来るのだから、これくらいやってやるわ。


 自分に気合いを入れて、私は声を出した。


「どうかしましたか?」

「…先程の伯爵の件と言い、ワインの件と言い、本当にありがとう。そしてすまなかった」

 

 なんと、皇帝の座を継承するであろう第一皇子が、私に頭を下げて謝ってきたのだ。






 


最後まで読んで頂きありがとうございました!

次話も見てくださると嬉しいですm(_ _)m

次回第一皇子サイドのお話となります!

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