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今日も何かを食べています  作者: 弓軸月子
第二章

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48 ムサカ/冷蔵庫整理ご飯


「ガガガッ・・・・・・」


 ブレンダーで玉ねぎを細かくしながら、どうして唐突にそんな事を思ったのかな? と思った。

 最初はある物でなんとか。

 ある物とその中かから食べたい物でなんとか。

 佐藤さんのためにと思って作った日もあるし、戴いたからと出したものもある。

 こだわっているのは普通の生活で、食生活にこだわっている訳ではなくて。


 じゃがいもを茹で、茄子をスライスして水にさらし、さて、次のブレンダーはミックスベジタブルから人参を入れて、と。


 自炊をしなくなったのも、そう言えば似たような感覚だったかもしれない。

 余った食材だけ使った料理や、賞味期限ぎりぎりの食料を消費して、なんだろうな? と思ったのだ。

 一人暮らしのやらなければならない事は、全部自分のための事ばかりで、別に食に限った事ではなく、生活の必要最小限のルーチン化も、そんな考えがあったのかもな。


 ご飯をレンジに入れて、と、セロリとニンニク、長ネギも粉砕か。ブレンダー大活躍。


 さて、今日来そうな人の顔を思い浮かべていく。

 アケル君は、何を食べても美味しそうにしてくれるけど、食材が良く分かってないんだよね。

 お洒落なレストランで出そうな物はピンと来ないみたいだし、たくさん食べられる物が好きそう。

 ピラフやお茶漬けのご飯物は好きそうだったし、炒飯なんか良いかもしれない。丁度ご飯も処理したかったし。

 茉里奈は色々試すんだよなー。ソースをいくつかあれば、一つづつ試すし、なんだかわからない物は味が分からないみたいで、確認してくる。

 記憶の味覚がしっかりしているのか、内容に納得すると美味しいですと言ってくれるし、確認作業も好きそう。

 

 大根をかつら剥きして、千切りにして、こちらも水に着けておく。


 峰岸さんはあまり量は食べないし、今日はお酒を飲みそうだから、少しずつ食べて貰えば良さそう。

 大変な生涯の割にグルメそうだし、さらっとリトアニア料理が出てくるくらいだから、ムサカは喜んでくれるかもしれない。

 国によって、家庭によって、色々な種類があるけれど、今日はじゃがいもと茄子を使ったギリシャ料理風を作る。

 お友達は、二人の女性を見たことがあるけれど、どちらも上品なおば様って感じだったし、峰岸さんと同じ感じで大丈夫だといいな。


 じゃがいもはどうかな? 竹串なんてものがないので、そのまま菜箸を刺してみた。うん、中まで火が通ってるね。


 ゴリマッチョな池橋さんは初対面過ぎて分からないけど、きっと筋肉にはたんぱく質を与えておけばいいはずだ。

 蒸した鶏肉も用意しておこうかな。唐揚げだとアケル君も喜びそうだけど、マッチョは炭水化物どうなんだろう。

 でも待てよ? 逆に影響しないから、ただただ好きな物を食べたかったりするのかな? コスもそう言ってたし。うーん、どうしようかな。

 肉物は棒餃子と昨日の豚肉と白菜の挟み鍋、ムカサも豚肉の予定で、鶏ハムはサラダに乗せようと思ってたから、そこそこの肉量か。

 やっぱり蒸し鶏にして、その代わりこってり目のソースを用意しよう。

 それなら茉里奈にも良さそうだし、一石二鳥だ。


 茹でたじゃがいもは皮をむいて厚めのスライス。


 チーム山田さんは誰が来るかな? 新人山田さんは確かちょっと料理に詳しそうだった。少なくともレストランで食事をしていたんじゃないかと思う。

 大先輩は、もう、ちょっと、ジェネレーションがギャップギャップだし、元僧侶と聞くと、沢庵と蒟蒻と豆腐の田楽くらいしか味が分かりそうな物がピンと来ない。

 醤油・味噌味なら分かるのかな。


 深めの鍋に油を注いで温め、茄子は水から揚げて、ひとくちミルフィーユカツも揚げ待機。


 あれこれ考えている内に、私は一体なにを目指しているのだろう? と思えて笑えて来た。

 確かに、これじゃ店はやりませんと言っても説得力がないかもしれない。


 フライパンにニンニクを入れてひと温め、そこに豚ひき肉と玉ねぎ、にんじん、セロリも入れて炒め、ホールトマトが無いからミニトマトとケチャップ、白ワインで煮詰めて、味付けはハーブソルトとコンソメ少々。安定のなんちゃってミートソース。ミニトマトの皮は目に付いたら取り出せばいいかな。

 じゃがいもと茄子は軽く素揚げ。ひとくちミルフィーユカツも揚げるだけでOK。

 おっと、クッキングシートで箱を作っておかなくちゃ。クッキングシートのサイズ的に天板に四つ置く感じが無難かな。強度も欲しいので二重にして、と。

 箱に、じゃがいも、茄子、ミートソース、じゃがいも、茄子、ミートソース、ホワイトソース、チーズ、と積み重ねて、オーブンに入れて後は焼くだけだ。

 棒餃子を焼きながら、別のフライパンで長ネギを炒め、卵かけご飯状態にしたご飯を投入、鶏がら顆粒出汁と塩コショウで味付けしたシンプル炒飯も完成。

 水から上げた大根は良く水を切って、ツナと和えて、味付けは各々に任せるからこれで完成か。

 昨日の豚肉と白菜の挟み鍋の残りは鍋で温め、サラダミックスにミニトマトの酢漬けと鶏ハムを並べて、サラダ二品で良いかな。

 白菜と大根皮の漬物は出すだけ、グリーンピースマッシュも盛ってスプーンでも刺しておけばOK。

 鶏肉は蒸すだけだから手間がかからなくていいね。

 パンピザとキッシュはオーブンが終わったら温めればいいから、あとはタレ関係か。

 長ネギをごま油で炒めて味噌と豆板醤で坦々風、ごま油とお酢と醤油の中華風、オリーブオイルとお酢と塩コショウの基本ドレッシングに、マヨネーズとソースとケチャップはそのままでいいか。

 わさび醤油とにんにく醤油、酢醤油も好みがありそうだからバラバラで出しておこうかな。小さい容器足りなさそう。容器ごとだすか。店じゃないんだし。

 トマトと玉ねぎとにレモン汁とタバスコと塩のなんとなくサルサっぽいやつと、ごまとみりんと味噌の甘めのタレ、ハニーマスタードもついでに。

 これだけあれば何とかなるかな。希望があればその場で作ろう。

 ついでに豆腐とチーズを切り、蒟蒻を茹でていたら、パラパラと皆が集まり初めて、皿や箸、飲み物なんかの準備をワイワイと手伝ってくれた。

 建物形状は店だけれど、ちゃんとホームパーティーみたいな雰囲気で、正直ほっとする。


 茉里奈には料理に説明書きを付けて貰った。少なくとも粘土味にはならないだろう。

 峰岸さんはお友達を一人連れて来たけど、先日はどうもと言われたので、展望台かシアタールームのどちらかの人なんだけど分からなかったので曖昧に微笑んでおいた。

 やっぱりムサカは知っていて、懐かしいわぁ、などと言いながら、仕上げにパセリをふってくれた。

 アケル君は新人山田さんと池橋さんと一緒にやってきて、大先輩とは会わなかったんだけど、一応連絡は入れて置いたから後で来るんじゃない? と、いきなり羊羹を食べ始めたので叩いた。

 新人山田さんは、嬉しそうに茉里奈の説明書きを覗き込んでから、あ、お土産です、と麦焼酎をくれた。自分で飲む分、だよね?

 それを見た池橋さんが、自分にも土産があると、一キロのダンベルを二本くれた。いらない上に、それって効果出るのだろうか?

 それから良い笑顔でグレープフルーツを握ってジュースにしてくれた。わぁ、なんかテレビで見た事あるような絵面。


 ムサカ、蒸し鶏、棒餃子、ひとくちミルフィーユカツ、豚肉と白菜の挟み鍋、大根ツナサラダ、鶏ハムサラダ、グリーンピースマッシュ、白菜と大根皮の漬物、炒飯、パンピザ、キッシュ、冷ややっこ、チーズ盛合せ、茹で蒟蒻、ソースが数種類、と。

 思ったより量はあったけど、どんな勢いで無くなるのかが良く分からない。足りなければかまぼことか切って出そう。


 それぞれに取り皿と飲み物が行き渡った様なので、厨房の片付けをしつつ声を掛ける。


「先にやっててー」

「ええー! 今日はなんか乾杯の音頭とか必要な感じっすよ!」


 とかアケル君は言うが、なんだそれ。

 峰岸さんまで、


「そうよねぇ。せっかくだし、乾杯したいわ」


とか言って首を傾げている。


「ええっと、それじゃ、」

「今晩は」


 適当に乾杯とだけ告げようとしたら大先輩がやって来た。このタイミングか!

 アケル君がゲラゲラ笑っていたので、わざわざ厨房から出てひっぱたいておいた。

 勿論、大先輩は困惑していたが、茉里奈から事情を聴いてそれは済まないと眉を下げて笑い、手近にあったワインをついで貰って、一緒に乾杯を待ち始めたので、仕方なく私もカップを持った。


「今晩は我が家の冷蔵庫整理にお付き合いいただきありがとうございます。残り物ですがどうぞお召し上がりください。いただきま……ちがえた。乾杯」

「かんぱーい」


 どうにも締まらない挨拶に、皆笑いながら乾杯してくれて、夕食は始まった。


「あ、コスにも声かければ良かった」


 唐突に思い出したので声に出して言えば、答えたのは峰岸さんだった。


「彼女、スモアしか食べていないって言っていたけれど、普通の食事も食べられるの?」


 遭遇していたらしい。相変わらず凄いな、峰岸さん。そういうアンテナでもあるんだろうか。


「食べないだけで、食べられるし、ちゃんと美味しいらしいですよ」

「声かけてみましょうか?」


 茉里奈が立ち上がって、店の入り口を開けて少し大きめの声で、声を掛ける。


「コスさーん。皆でご飯食べてますけど、来ますー?」


 そうか。隣の部屋感覚で連絡付くのか。

 茉里奈、ちょっと人間の常識捨てつつあるな。


「はーい。え? なに?」


 何故かチャイナドレスのコスが店内を覗き込んで慌てて引っ込んだ。


「いや、行かない。人口密度が高すぎる。溶ける」

「人口密度が高くても人体は溶けません。ではなにか食べますか? 色々ありますよ」


 茉里奈が物凄く冷静に対応しているのが面白い。

 私も茉里奈の後ろから覗いてみると、絶望的な感じに項垂れているコスがいた。


「こんばんは。大きめのお皿頂戴。適当に盛ったげる」


 パッと顔を上げて、コクコクと頷くと、パタパタッと奥に走って行った。

 お皿を持って戻って来たコスに、好みを聞いて、と思ったら、いつの間にか茉里奈と交代していた池橋さんが、


「よいしょっと!」


と、コスをひょいと持ち上げて店内へ。

 ええ。大変。パンツ見えちゃう。

 慌ててチャイナドレスのスリットを抑えつつ後を追う。

 ほいっと、池橋さんはコスを椅子に下して満足げな顔をしていたが、後ろで峰岸さん、激怒。


「そんな物みたいに担いじゃ駄目よ! 米俵じゃないんだから! 割れ物も持っているし、和香ちゃんがいなかったら下着が見えていたかもしれないのは分かっているの?」


 お小言は峰岸さんに任せて、コスを見れば顔を真っ赤にして石像化していた。


「コス、大丈夫?」

「……ダメですぅ……」


 あ、ですよね。

 アケル君はゲラゲラと笑い、茉里奈がそれをたしなめて、峰岸さんとその友人は池橋さんに反省を促していて、新人山田さんはあっちへこっちへ視線を彷徨わせてオタオタし、大先輩は朗らかに見守っている。

 カオス。


「せっかくだし、食べたいものある?」


 普通に聞いたらコスはいくつか指をさして皿を渡して来たので、出来る限り綺麗に盛り付けて渡し、そっとお見送り。

 マジすまんかった。


「全部旨いし、こういうの楽しいっすね」


 アケル君が笑って言った。


「そうね、楽しいわね」


 楽しんでと書いて寄こした佐藤さんがちらりと思考を横切ったので、今夜は大先輩に絡んでみようかな。




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死亡 十三日目(七日目)

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入手品:じゃがいも/茄子/業務用ギフトボックス(製菓用)/たこ焼き器


朝食:オープンサンド

昼食:魯肉飯

夕食:ムサカ/冷蔵庫整理ご飯

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