幕間 魔鏡計画
風のささやきも、誰かのぬくもりもない。自分以外には何者も存在しない空間で、私は唇を噛んでいた。
魔鏡と融合した人間……その特異性故か私の監視から外れてしまい見失っていたのだが、ようやくその位置を特定することが出来た。しかし、まさかこの地へ来ているとは予想外であった。
通常、人間側に魔鏡が取り込まれることはあり得ない。だが、発生した以上、例外は存在すると言わざるを得なかった。アレは異界の手によるものではなくまったく偶発的なものだろう。
あの娘は、魔鏡を制御出来てはいない。魔鏡の力に振り回されているだけだ。
では、完全な制御が可能となれば? 魔鏡の力すべてを自在に操ることが出来れば、異界のバケモノとも渡り合うことが出来るだろう。
もし、覚醒させ、抽出することが出来たのなら。それを、移植することが出来たのなら。
間違いなく、ヤツラへの切り札となるだろう。
しかし、危険だ。まったく未知の力であり、暴走などされては手に負えなくなるかもしれない。殺害すら危険だ。静観し、見守るのが望ましい。
……だが、それもいつまで望めるか。
近頃、この場所の近辺で小型のバケモノが徘徊するようになってきている。
この場所は、いにしえから変わらず隠し通してきたのだが……点滴が岩を穿ちいずれ貫通するように、積もり積もった僅かな漏れが秘匿を破ったのかもしれない。
もし、完全に露見した場合……アレを守り切ることは出来ないだろう。雑魚程度なら散らすのは容易いが、それもいずれ限界が訪れる。
では、どうするか。
魔鏡の娘を覚醒させ、利用し、すべての根源を断つ。
無謀だろう、しかし他に策もない。攻め込まれるのであれば、攻めるしかないのだ。
「人の世を、守るために……」
ちょっとガバがあったので整理しました。




