ニートと後日談
「――以上がユッタ・アイマーへの仮処分となる。現在は白亜の塔にて沙汰を待っている状態だ。二人とも、世話になったな」
今日は殿下に呼ばれて城に顔を出した。わざわざ書面での呼び出しだったのでちゃんと侯爵令嬢らしいドレスに化粧までしている。
場所は宮廷魔術師長の執務室。
もちろん、部屋の主もこの場で殿下からの話を聞いている。
しかし、後味が悪い。ヌガーを水分補給なしで一気食いした後の喉みたい。
そんな気分は紅茶で飲み込む。
うん、さすがはお城御用達の紅茶。美味である。
我が家もこの茶葉を仕入れてもらおうかしら?それともお城のメイドさんはうちのエリーザ以上に紅茶を入れるのが上手なのかしら?
「この話はこれで終わりだな。エルヴィーラ嬢も、呼び立ててすまなかった」
「私も関わった件ですもの、気になっていましたの。それに、宮廷魔術師長にもお話がありましたから」
私の言葉に殿下外のあたりを押さえる。腹痛かな?
「今回、他の問題が起こってしまいましたわ。ですが、私が正しいことは、試験で理解していただけたと思いますわ」
ドヤ顔で宮廷魔術師長を見る。まあ、表情はそんなに変わらないんだけど。
宮廷魔術師長も表情を変えずにその通りだと頷く。
「左様ですなあ」
お互いの視線がぶつかると、何故か控えていたメイドさんや殿下がぶるりと震えていた。
「これで無詠唱を学園で教えていただけるのではないかしら」
「教える側の人間がおりません」
「ドンナーさんがいますわ」
名案だと思った。ドンナー君は確かに気が弱いが丁寧な対応ができる子だから教える側も上手だろう。
それに、教えるという行為は自信が理解していないと難しい、と言われているから復習にもなるだろうし、ドンナー君にもメリットがある。
そう思っていたが、宮廷魔術師長は私を呆れたような目で見てきた。
「未来ある若者をつぶすおつもりですかな?」
うっ、そう言われればその通りか。
丁寧な対応ができる子だけど気が弱いから教師に物を教えるなんて精神が耐えられないかもしれない。というかそんな面倒ごとを押し付けたら周りと軋轢が生まれたりと彼の今後にもよくないのかな?
「では、どうしますの」
私の名案を却下されてしまった。私はほかに案はない。
相手の案を却下するなら代案があるんだろうな?ん?と宮廷魔術師長に尋ねればまるで当たり前のことのようにある提案をしてきた。
「――まず、教師達を指導していただきたい。無詠唱を覚えた教師で選択科目としましょう」
達ってことは複数かあ。面倒だ、それぞれの進度に合わせたりなんて無理だ。面倒だ。ううむ。
「面倒ですわ。どなたかおひとり、私が教えさせていただきますからその方にほかの先生方の教師役をお願いいたします」
「では、それをお願いします」
私の訂正を宮廷魔術師長は快く引き受けてくれた。
まあ、一人だけならドンナー君のときと変わらない、かな?現在の詠唱魔法が身に染みつきすぎて覚えるのが難しい可能性はあるけど。




