ニート、試験を見学する。
今日の服装はそれなりに貴族っぽいものを来ている。色はあまり派手にならないよう、明るめの灰色と薄い水色のものだ。
「お嬢様、本当にこちらのネックレスはお付けになりませんか?」
「服装はそれなりにするけれど、今日の目的は試験を見ることですもの。必要ないわ」
残念そうな顔をするヒメルにそう返せばしぶしぶ引き下がってくれた。
申し訳ないなあとは思うけれど、あまり派手すぎるのは悪目立ちしそうだからね、なんたって学校の試験だ。
本当はいつも通り服装も質素にワンピースくらいで行きたかったんだけど、どこぞの誰かが要らぬ気を利かせて貴族用の席を用意してきたから服だけは豪華なものになってしまった。
本当に、いらない気の利かせ方だ。私がもっと社交的でずばずば言える人間だったら罵ってるぞ。
「御機嫌よう、オーデム宮廷魔術師長閣下」
「これはこれは、エルヴィーラ嬢。まさか足を運んでいただけるとは」
しかも、宮廷魔術師長の隣の席だ。
いや、これはあきらかに嫌がらせだよね?仲が悪いとか自分たちで噂しているくせにここを選ぶとか、明らかな嫌がらせだよね?
心なしか、周囲には人の気配がない。そもそも貴族の数は少ないからね、仕方ないね。別に私たちが避けられているわけではないよね。
仕方なく、宮廷魔術師長の隣に座る。私の後ろにはいつも通りハルが控えているが、彼もすでに帰りたそうだ。
「ドンナーさんに見に行くと言いましたから。結果も気になりますもの」
私の言葉に宮廷魔術師長はほう!と驚いたような声を上げる。
なんだ、私が見に来るのがそんなにおかしいか!
「いや、失礼。貴方が下々の者を気に掛けるとは、意外だったもので」
「あら、心外ですわ。私、縁があった方のことは気にかけておりますもの」
ねえ、とハルに話を振れば軽く肩をすくめた後小声で「巻き込まないでください」と抗議してきた。
「私としては貴方がいらしていることに驚いておりますわ。宮廷魔術師長のお仕事は多忙を極めると聞いておりましたから」
「これも仕事の一環ですからな。優秀な魔法使いを見つけることも、エルヴィーラ嬢の成果を確認することも」
「あら、そうですの。でしたらきっと驚いていただけますわ。あまりに優秀で、素晴らしい魔法を教えておりますから」
数席離れたところにいた貴族がぶるりと肩を震わせていた。後ろに控えた従僕に温かい飲み物を手配するよう頼んでいる貴族もいる。
今日はそんなに寒かったかしら? いつも通り風の膜を張っているから気づかなかったわ。




