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ニート、ラスボス戦を始める。

ドラゴン戦始まります。


 最後の階段を使えば、目の前に大きな門がそびえたっていた。

 この二段構え。「大丈夫?ここボスだよ?大丈夫?本当に大丈夫?」みたいな感じだな。このダンジョンの製作者優しさプライスレスすぎでしょ、優しすぎでしょ、製作者がいるのかはわからないけれども。

「準備はいいかしら?」

 扉の前で止まり、後ろに控える二人を振り返れば二人とも頷く。

 ハルはドラゴンのブレス対策として特性耐性の強い防具と剣に変えている。エリーザもここまでのメイド服だけでなく私の≪収納≫に放置されていた籠手も装備している。これも特性耐性がついているものだ。私が持っていても意味がないので入れっぱなしだったのを思い出して渡しておいた。

「では、参りましょう」

 ふっと笑みを浮かべ、扉に向き直るとその重厚そうな扉を軽く押す。

 それだけでギギィと重たい音を立てながら扉が開いていく。

 重たいのは音と見た目だけかよ、なんて言ってはいけない。恐らく魔法みたいなものなのだ。


 その扉の先、正面にその巨体はいた。


 黒色の皮膚。または鱗。

 扉の開いた音で目を覚ましたそれは暗い赤色の光を宿した瞳でこちらを睨みつける。

 扉の向こうは広い空間だった。見上げるほど大きな、前世の言葉を使えば西洋ドラゴンと呼ばれる二本の足で立ち上がり、二本の腕を持ったドラゴンがなんなく体を起こし、首を伸ばして吠えてもまだ余裕がある天井。

 うまく逃げればドラゴンのブレスも当たらないだろう広さの部屋。

 その中央に、ドラゴンはいる。

「エリーザ、ハル。いってきますわ」

「ご武運を」

 二人を扉から入ってすぐのところに残し、私はドラゴンの元へと近づく。


 オオオオオオオオオ!!!


 ドラゴンの吠え声は空気をびりびりと震わせる。後ろを見る余裕はないが、エリーザたちがいる方向から少し苦しそうな声が聞こえてくる。

 私も、自分の周囲に常に張っている風の膜が思いっきりびりびり震えてさすがに立ち止まってしまった。

 うわ、ドラゴン強い。

 恐らく、元々足止め用の攻撃の一種だったのだろう。私が立ち止まったところへドラゴンのしっぽが横なぎされてくる。

 おそらく、常人であればぶつかった瞬間骨が折れるか、最悪ぶつかったところから二つに割けてしまうであろう衝撃。

 慌てて空気の膜が割れる前にもっと固い空気膜を私の周囲に張る。

 何とか間に合ったがその膜ごと飛ばされて反対側の壁にぶつけられてしまった。

「エルお嬢様!」

「大丈夫よ!」

 驚いた顔でこちらに駆け寄ろうとするエリーザを止めるために声を張り上げ、立ち上がる。

 空気の膜をしっぽ側だけに張っていたら無事じゃすまなかったかもしれないが、私は自分をぐるりと囲ませる派だ。おかげで壁にぶつかったときもその空気膜が先にぶつかったため、怪我はない。

 怪我はないが、頭がぐらぐらする。衝撃はそれほど吸収されなかったのかもしれない。

 ドラゴンはしとめきれなかったことにいら立っているようで、またも吠えている。

 翼で思いっきり風を起こし、こちらにたたきつけてくるが風属性なら敵ではない。気流を少しいじってこちらにたどり着く前にそよ風レベルの強さになるように調節する。

 同時に私の周囲に炎の塊を作り出し、それをドラゴンに向けて飛ばす。

 叩きつけるようなスピードで飛ばしたそれによりドラゴンが一歩下がるがそれだけだ。ほんの少し鱗が傷ついただけといった様子で立っている。

「炎耐性はあるようね」

 そうつぶやいたとき、その通りだとでもいうかのようにドラゴンが口を開けてこちらを見た。

 その口の中に、黒色の炎が見える。

「あら、炎属性の方が正しいかしら」

 どれほどの強さか測るためにも自分の前に水の壁を作り上げる。厚みを持たせたそれに向かって飛んできたその黒色の炎は壁を貫通するほどの勢いでこちらに迫る。

 水壁の強度を少し上げ、もしもの時に備えて私を包む風の膜に水の膜を這わせる。


 炎が水の壁にぶつかった瞬間、激しい爆発音がした。



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