ニート、打ち合わせをする。
先に進む。
ダンジョンというのはいいものだ。進む道が決まっているのだから。
だだっ広い草原から次の街を目指して歩く、という行動に比べてどれほど楽か。まあ、今の私には探知能力があるから次の街を探知で探してそっちに歩いていくこともできるんだけどね。そう考えると前世よりよっぽど楽だわ、今世。
とはいえ、それはただ歩くだけならば、の話だ。
ダンジョンには敵が沸く。それはもう、沸くという言葉がぴったり当てはまるレベルで沸くのだ。
エリーザのはなった矢が敵の首に刺さる。その間をかいくぐって迫ってきた敵にはハルの剣が突き刺さる。
二人はまだ戦えるようだ。先ほどの休憩で余裕を取り戻したのかもしれない。それを確認しながら、私は地中から出てこようとしていた幼虫型の宝食いを土魔法で外に出すことなく駆除した。
ボス部屋が近くなったからだろうか、階層ごとに出てくる宝喰いに統一感が失われつつあるような気がする。
さすがに石で作られたゴーレムのような宝喰いとゴブリンのような宝喰いが同時に襲ってくるということはないが、森のようなエリアでは動物型から植物型、果てには虫のような宝喰いまでもが同時に襲ってくるようになった。
岩がごつごつしているエリアでは今まではいわばエリアでも別階層で出てきていた宝喰い達が同時に出てくるようになったし、さすがの私たちもさくさくとは進まなくなっている。
風魔法で宝喰いの頭を数匹分纏めて落としながらそろそろ最後の階層につけばいいのにと思う。
そう思いながら次の階層へ続く階段を見つけ、降りる。
「あら?」
その階層は今までとがらりと変わっていた。
どちらかというと最初の頃の階層に似ている。壁がしっかりとあり、松明もつけられている。
なによりも違うのは宝喰いの気配が一切しないことだろう。
「お嬢、もしかするとここは安全地帯かもしれません」
「安全地帯、ねえ。ダンジョンにご丁寧に作るなんて」
信じられないと思う。しかし、ダンジョンではよくあることらしい。なんてこったダンジョン。まるで攻略者のために配置しているみたいじゃないか。
「安全地帯があるということは、次の階層が最後です」
「本当に、まるでボス前セーブエリアだわ」
「せーぶえりあ、でございますか?」
私のつぶやきにエリーザが首をかしげる。これは私の失言だ。セーブエリアなんてこっちの世界じゃつかわない言葉だったわね。
ハルはちらりと私を見ながらも何も言わない。呆れているのか、興味がないのか。どちらにしろ失礼な奴だ。
「さて、せっかく安全地帯なんて作ってくださっているのだから、最奥での行動を考えましょう」
気を取り直して二人に提案する。
まず、ボスであるドラゴンを倒すのは私の仕事だ。私はそれがやりたくてここまで来たのだから当たり前だろう。
ではエリーザたちには何をしてもらうか。
「ドラゴン以外の宝喰いが出てきたときは、二人に対処を願いますわ」
「もちろんでございます」
「出なかったときは、手出しは無用ですか?」
「ええ、ドラゴンは私に任せていただきます」
ハルの問いに頷いて答える。エリーザもハルもさすがに心配そうであったが、そもそも私が苦戦する相手に二人が勝てるわけではないのだからごく普通の判断だろう。
その後も撤退の判断や道具の使用などを細かく打合せする。
そんな風に話に集中しているというのに、本当にここでは宝喰いは一切襲ってこなかった。




