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ニート、恩返しされる。


 前回までのあらすじ。面倒なお嬢さんに絡まれている。昨日ぶりの人たちが現れた。以上。


「お嬢、現実逃避はやめてください」

「安心して、むしろしっかり現実を見ているわ」

 見ているからこそ現状を整理したのよ、別に飽きてきたとかじゃないわ。

「やっぱりあんたらか」

「エルさん、おはようございます」

 リーダーのヴォルスと女性のシヴァーチカがこちらに声をかけてくる。

 他のメンバーは縦ロールお嬢様御一行や他の冒険者に注意を払いながら近づいてきているようだ。

「おい、あれ……」

「間違いない、『金の槌』だ」

「あの、噂の……?」

 ざわざわと、私たちだけの時よりもざわめきが大きくなる。その中心は先ほど現れた彼ら、『金の槌』のようだ。

 周りのざわめきを聞くに、彼らは有名な冒険者パーティーらしい。

 確かに、髭面さんがこれいじょうはどうのこうのと言っていた場所からさらに先に進んでいたのだから能力には自信があるのだろう。

「あんたら、『金の槌』か。こいつはまた、大物が来たもんだな」

 髭面さんが驚いたような声を出す。縦ロールお嬢様はよくわかっていないようだが、他のメンバーがかみつきに行かないようになだめているようだ。

「話しているところすまんな、俺は『金の槌』の一応リーダーをさせてもらってる、ヴォルスだ」

「うわさは聞いてるさ。俺はルッツ。今はこのお嬢様に雇われている」

 髭面さんとヴォルスが互いに握手を交わす。

「それで、エル嬢と何を揉めてたんだ?」

 ヴォルスは私たちと縦ロールお嬢様たちの間に入るようにして会話に入ってくる。

 お嬢様は不満そうだったが髭面さんは話が分かる相手に会えてほっとしたという顔だ。

 いや、私だってちゃんと会話で来てたじゃないの、失礼な。

「ああ、いや。うちのお嬢様がな、ちょっと。俺たちも驚いてたんだ、あのエリアから帰ってこれてることにな」

 彼のパーティーメンバーたちも頷いている。

 失礼な、ハルもエリーザも、そして私も顔には出さないが少し不満に思っているぞ。

「エル嬢たちならそりゃあ大丈夫さ。俺たちも昨日助けられたんだが、見事なお手並みだったぞ。特にエル嬢の魔法は見事なもんだ。それが無かったら俺たちは帰ってこれていないからな」

 その言葉にひと際あたりがざわめく。

 髭面さんも目を見開いて驚いたという顔をしている。そこまで驚くことだろうか。

 ヴォルスの言葉にリリットたち『金の槌』メンバーは何度も頷いていて、彼の言葉が真実だと周囲に知らしめていた。

「本当に魔法使いだったのか……」

 髭面さんが思わず、といった様子で言葉を漏らしていたが何故私が嘘を吐く必要があるのだろう。

「貴方達が弱かっただけでなくて?」

 縦ロールお嬢様が疑うようにヴォルスを見た。髭面さん達が慌てて抑えようとするがヴォルスは首を横に振り、それにこたえる。

「一応、このダンジョン攻略組の中じゃあ上位に入ってるぜ。ほかにも強いやつらはもちろんいるが、ただの物見遊山連中に助けられるほど弱いつもりはない。それに、エル嬢の魔法はけた違いだ。上位ランクの冒険者でもここまでの奴はいない」

 ヴォルスの言葉にまだ不満げではあったが縦ロールお嬢様は口を閉じた。

 周囲の反応も驚きを隠しきれてはいないがおおむねヴォルスの言葉を信じるようだ。

 それほどヴォルスたちは有名な冒険者であり、その彼らが助けられたと口にしたことが重い言葉であるということか。

「わかった、俺はそれを信じよう。お嬢さん方も、疑うような真似して悪かったな」

「構いませんわ」

 髭面さんが私たちに謝罪をしてきたので代表して大丈夫だと答える。

 これで縦ロールお嬢様を抑えてくれるならそれだけで十分だ。

 抑えられないというのであればそれこそ言葉の謝罪は不必要だから縦ロールお嬢様を抑えておけよ、という気分だが。

「さて、お前ら、さっさと列に戻れ。先頭がちんたらしてっと今日の狩り分が減っちまうぞ!」

 ヴォルスさんが話はここまでだ、というように周囲の冒険者たちを怒鳴りつける。

 先頭の方からやじ馬に来ていた冒険者たちが慌てて列に並びなおし、ようやく列が動き出した。

「助かりましたわ、礼を言わせていただきます」

「いやいや、俺たちの方が世話になったしな。それに、俺たちにできるのはこんなことくらいだしよ」

 助けてくれたヴォルスに礼を言えば照れたように鼻の頭を書きながらなんてことはないのだと返される。

「エルさんたちも、途中から潜るのかしら。私たちは昨日のことを反省して、また少し上の方で連携の確認をするつもりなの」

「ええ、最奥を目指していますから」

 私の言葉にシヴァーチカもヴォルスさんも驚いたように目を見張り、しかし納得するように首を縦に振った。

「あんたらならできそうな気がするな」

「気を付けてね、としか言えないけど。でもエルさんたちなら無理ではないのかもね」

「あれだけの魔法使いですからね」

 二人が納得したように口を開き、魔法使いであるリリットも同意する。

 当り前だ、と思うがそれを口にするとまた面倒なことになりそうな気もするので軽く肩をすくめるだけに留まる。

「お嬢、そろそろ進みます」

「おっと、時間とらせたな。じゃあまた、ダンジョン内で会えればいいけどよ」

「ごきげんよう。そうですね、確率は低いと思いますけれど」

 ヴォルス達に別れを告げ、列を外れないように後に続いていく。

 面倒ごとになりかけたがヴォルス達のおかげでとても助かった。


 これなら今日中にたくさん進んで、うまくいけばボスに会いに行けるかもしれないな。



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