ニートは面倒ごとが嫌いです。
長くなりませんでした(反省)
「ちょっとそこのあんた!」
その大声に髭面さん御一行以外の冒険者たちまでこっちに視線を向けている。「メイドさんだ」とか「まさか三人だけ?」とか煩い。
行列がざわざわとし始め、さらに縦ロールお嬢様に目をつけられてしまったらしい。
本当に迷惑だ。突如目立ってしまった私たちの気持ちにもなってほしい。
「お嬢、最初からそれなりに目立ってましたよ」
「三人だけ、それも私のメイド服は目立ってしまうのでしょう」
ハルとエリーザの言葉からはそっと目をそらし、こっちに近づいてきている縦ロールに視線を戻す。
「御機嫌よう、昨日会った方かしら?」
「私がせっかく忠告してあげたのに、またくるなんて。ここは貴方の遊び場じゃなくてよ!物見遊山なら帰ってくれないかしら?」
帰ってほしいのはこっちである。私の方が先に来ていたでしょうに。
ハルと髭面さんが私たちの間に入ってけん制し合う姿がさらに涙をそそる。無意味なことを頑張るハルが可哀そうだ。
「昨日、あなた方より先に行って、こうして今も五体満足ですの。これでわかってくださらないかしら?」
「運が良かったのよ!」
運がいい、それだけで先に進めるダンジョンなら世話ないだろうに。
運だけで牛頭がどうにかなるようなら、見せてほしいくらいだ。
「あんたら、生きてたんだな」
髭面さんの方は現在の状況を彼女よりは理解しているらしくとても驚いていた。驚いている時点で私が昨日言った言葉を理解できていなかったということだけど。
「これ以上関わってくるようでしたら、お嬢の敵と判断するぞ」
いつもより低い声でハルが忠告には聞こえないことを言っている。
どうやら怒っているらしい。激おこだろうか、マジおこだろうか。
別にハルはこのダンジョンを楽しみにしていたというわけではないだろうから、ダンジョンに入る邪魔をされて怒っているのではないだろう。
エリーザも私の後ろに控えながら縦ロールお嬢様に冷たい視線を向けている。
周りの冒険者たちはどうかといえば、少なくはないが多いわけではない女が三人も集まって何かが起こりそうな空気を醸し出していることに興味津々だ。いいから止めにこい。
「貴女!このハイデマリー・フェルトホフを無視するつもりなの!?」
縦ロールお嬢様が私を睨みつけながら叫ぶ。
無視をするも何も、私が答えたもの以外に何か言っていただろうか。
冒険者たちは彼女の家名にはあまり反応がない。この国の、それも王都や彼女の家の領地にいる人間でもなければそこまで聞く名前でもないのだろう。
そもそも冒険者は冒険のために国を渡る。この国に始めてきたものがいてもおかしくはない状況だ。
――だからと言って慢心して名乗ったりはしないけれどね。というか私が名乗ってもこのお嬢様ならさらに喧嘩を売ってきそうな気がしてきたわ、どうしましょう。
「お嬢?」
ハルがこちらを気にしている。ハルのことだから、ここで彼らに喧嘩を売るようなことはないと思うけれど――あ、だめだ。この人わりと切れるタイプだ。
この騒ぎに野次馬をしに来ているのか先頭が先に進まないのも痛い。いいからさっさとダンジョンに入らせてくれ。
頭を抱えていると向こうからほかのざわめきが聞こえてきた。
お嬢様は気づいていないがエリーザとハル、それに髭面さん御一行はどうやら私より先に気付いていたようだ。髭面さん御一行のうち数人はそちらに視線を向けている。
今度はなんだ、と思いながら私もそちらに視線を向けると、これまた昨日ぶりの人物たちがこちらにまっすぐ歩いてきていた。




