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ニートの門限は夕食時です。


 そこから先はほとんど人に会わなかった。

 とても残念だ。回復魔法をもっといろいろと試したかったのに。

 探知に引っかかる人間も少なく、引っかかった者達はかなり統率が取れたパーティーのようで動きに無駄がなく、私たちが回復魔法を使う必要なんてない雰囲気だった。

 そこからまたしばらく歩けば、そろそろ帰宅の時間が近づいてくる。

「結局、中ボスには届きませんでしたわね」

「このダンジョンもそれなりに大きいので仕方がないかと。普通の冒険者よりは進んでますよ」

 私のため息にハルが慰めるようなことを言う。普通の冒険者と比べられるつもりはないのだけれど、これ以上はもう無理だ。

 一度ダンジョンまで来たのだからこれからは≪瞬間移動≫できる。そのためもっと時間が取れるようになる。

 ダンジョンで記録した階に戻れるみたいだからさらに進みやすいだろう。

 なにより、料理長の夕食が食べられないのはいただけない。

 また遊びに来ることもできるのだからちゃんと帰って兄に顔を見せて、美味しいものを食べて寝よう。

「じゃあ、帰りましょうか」

 ≪瞬間移動≫を発動するために二人を呼び寄せ、帰宅ポイントを玄関に指定する。

 今回の探索はここまでだ。







「おかえり、僕の可愛いエル!楽しかったかい?」

「あら、アル兄さん。ただいま戻りましたわ」

 玄関では笑顔の兄が待っていた。執事とエルデ、ヒメルも一緒だ。

「エル様、お食事の前に体を清めましょう」

「エリーザさん、お疲れさまでした。後は私たちに」

「お願いするわ。エル様、私は一度失礼いたします」

 エルデとヒメルが私を風呂場へ案内しようとする。

 エリーザも服を着替える必要があるからということで一度別行動だ。むろん、ハルも自室に戻るらしい。

「アル兄さん、一度失礼しますね」

「ああ、そうだね。疲れただろうしゆっくりするといい。じゃあ、夕食の時に」

「はい」

 兄に一礼してエルデ達を引き連れてお風呂へ向かう。

 ああ、確かに一日中歩いていたから足がパンパンだ。マッサージもしてもらおうかな。






 今日のお風呂はカモマイルとラベンダーに似た香草が浮かんでいる。

 私が疲れて帰ってくるだろうからと庭師が気を利かせてくれたらしい。明日にでも礼を言いに行こう。

「まあ、お嬢様の足がこんなに硬く」

「お疲れだったのですね、御労しい」

 エルデとヒメルが足をマッサージしながら嘆いている。

 いや、おそらくそれは私の運動不足が原因だからね?ダンジョンと関係ないからね?

 エルデ達は普通のメイドなのでエリーザのように護衛を兼任することはできない。

 その代わりにつめの手入れやマッサージなど、手に職を大量に持っているのだ。

「ああ、気持ちがいいわ……!」

 足が終われば腕、ついでに腰もお願いする。

 埃で汚れているからと髪も丹念に洗ってもらい、ケアもしてもらう。

 いやあ、自分で何もしなくていいっていいね。贅沢だね。

 用意してもらったのはゆったりとした青緑色のドレスだ。

 食堂に向かう途中でハル、エリーザと合流する。

 二人ともいつもの館で着ているような服に着替えて、埃も落としてきたらしい。

「お嬢様、明日はどうしますか?」

「そうねえ」

 ハルの問いにふむ、と考える。

 せめて中ボスくらいの顔は見たい。早めに。

 できればさっさとダンジョンをクリアしたい。ドラゴンと戦いたい。

「エリーザ、貴方は大丈夫かしら?」

「はい。矢もさほど消費しておりません」

「ハルは?」

「いつでもいけます」

 二人とも問題はないらしい。

「エルデ、ヒメル。なにか優先度の高いことはあったかしら?」

「しばらく王家主催の夜会などはありませんわ」

「旦那様もしばらくは大きな仕事はありません」

 ふむ、ならば本当にすぐに行っても構わないな。

「ハル、エリーザ。今日はもう下がっていいわ。明日もダンジョンに行こうと思うの。準備をお願いするわ」

「かしこまりました」

 二人が頭を下げて下がる。

「エルデ、ヒメル。そういうことだから、家のことはお願いするわ」

「かしこまりました」

 二人も頭を下げる。まあ、必要なことなんてほとんどないけれど、一応ね。

「楽しみだわ、ドラゴン。早く倒したいわ」

「エル様が楽しそうで何よりですわ」

「怪我には気を付けてくださいましね。エル様はもちろん、エリーザさんやハルさんも」

 うふふ、と笑えばエルデ達もにこにこと笑ってくれる。

 普通のメイドとはいえ、肝が据わっていないと侯爵家のメイドはやってられないのかもしれない。


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