ニート、ダンジョンに行く。二日目
二日目です。
昨日念入りにマッサージをしてもらったからか体に疲れは残っていない。
むしろ爽快だ。今日は昨日よりもしっかり歩くことができるだろう。ヒメル達に服を用意してもらいながら私は手を握ったり開いたりする。
いつもならエリーザもここにいて、率先して私の着替えを手伝うのだけれど今日は出発の準備の方をしてもらっている。
朝ご飯は私の大好きなオムレツだった。ゆで卵もおいしいけれどふわっふわのオムレツは朝から幸せな気分になる。
兄は私が今日もダンジョンに行くということに不満げだったが本人も今日は外の見回りがあるため食事を終えると部屋に戻っていった。帰りも遅くなるという。可哀そうだからなにかお土産を持って帰ってあげよう。宝喰いからとれる素材でいいかしら。
「ハル、準備はいいかしら。ハンカチは持った? 忘れ物はないかしら?」
「似合わないと前も言いましたよ。どこの母親ですか」
呆れた顔のハルにうふふ、と返す。一度はやってみたいからね、しかたないね。
一度ダンジョンまで行ったから今回は≪瞬間移動≫が使える。
普通の魔法使いはダンジョンに行くためだけにこれを使うことはないだろうが魔力が実質無限大な私には些細な魔力消費だ。ダンジョンのあるあたりに泊まることはできないのだからそれができる他の冒険者と違い移動手段を使うことは悪くはない。
「今日は昨日より早くからダンジョンで遊べるから、最下層を目指そうと思うわ」
「かしこまりました」
「了解です」
私の言葉に二人とも異を唱えることもなく頭を下げる。
「エル様、昼食をお持ちいたしました」
「ありがとう、料理長」
昨日のうちに頼んでおいたものを料理長自らが持ってきてくれた。今は後片付けや下ごしらえの準備が主な仕事だから料理長の方が手が空いているのだと本人は言っているが、そういうものだろうか。
「エルお嬢様。今日はお嬢様がお好きな『オニギリ』を作りました。お茶はそれに合わせて『リョクチャ』にしております」
「あらっ、それはうれしいわね。いつもありがとう、料理長」
「いえいえ」
差し出されたバスケットとお茶の入ったポットに手を叩いて喜べば料理長もにっこりと笑う。
私の無茶ぶりにも柔軟に対応してくれる料理長に『おにぎり』や『みそ汁』を作ってもらえるようになったのは本当に素晴らしいことだった。そのためにわざわざ味噌と米を輸出している国を探し出したのもいい思い出だ。その結果この国の貿易が上向きになったからお咎めを受けたりはしていない。
料理長の差し出したバスケットとポットは私の収納にしまい、エルデたちと料理長が見送る中、私たちはダンジョンへと飛んだ。
「確か、入り口にある装置を使うのだったわね」
記録というシステムの使い方をハルに確認しながらダンジョンへと入る列に並ぶ。
私は清く正しい令嬢なので部下だけに並ばせることはしないし割り込みなんてもってのほかだ。
「ちょっと、なんで私がこんなとこに並ばなくちゃいけないのよ! あんたたちで並んでなさいよ」
そう、こんな風にヒステリックに叫んだりも、しないのだ。




