ニートと風魔法
次の階層も緑生い茂るエリアだった。
草原ではなく森に近いのではないだろうか、見通しは前の階層ほどよくない。出てくる宝喰いは前のエリアと同様動物系が多く、新しいものとしては完全に木に擬態したものやどこかの本では大活躍していそうな蔓性のものなどの植物系の宝喰いたちがいるようだ。
「風魔法って、こういうイメージなのよねえ」
うねうねと伸ばされる蔓を端から≪風刃≫で切り裂きながら先へと進む。
エリーザはナイフに切り替えて自分に向かって伸びてくる蔓を切り捨てていき、ハルも剣で器用に牽制している。
この蔓が少々うざったい。飽きてきたともいえるだろうか。周囲の景色も木々ばかりで代り映えしないのにこの蔓が常に攻撃してくるためさらに代り映えのないものを見続けることになる。
これならまだ集団で襲ってきては倒された後のインターバルがある狼系の方がましというものだ。
私の使う風魔法も変わり映えするものではなく、せめて自分でできることだけはもっといろいろなものがあればいいのにと切に思う。
「風といえば、かまいたちもいいけれどあれは攻撃というよりも脅しよねえ。血が出なければ派手さが足りないわ」
「魔法というだけでも十分派手だと思いますが」
「どうせならもっと大きなことをしたいと思うの。そうねえ、ああ、そうだ」
ふと、いいことを思いついて立ち止まる。
蔓を伸ばしてくる本体を探知で探し、そちらへと進んでいくと大きな、これは確かに敵だろうとわかる植物がそこにはいた。
鼓動があるのか、ドクンドクンと体を収縮させている姿はとても気持ちが悪い。生々しいというのだろうか、いや、植物はあそこまで動かないと思うから生々しいは違うのか?
とにかく、見ていて気持ちがいいものではないその本体を前にすると先ほどまではこちらを捕まえようとしていた蔓たちが本体を守るように私たちの前に立ちふさがる形を取り始めた。
「意思があるようですね、この植物」
「どうされますか、エル様。邪魔でしたら我々が切り捨てます」
ハルとエリーザの言葉に大丈夫だと返し、その蔓ごと、植物性宝喰いを空気の球体の中に閉じ込めた。
「水の膜と同じものですか?」
「使い方が違うわ。あれは膜しか動かせなかったけれど、今度は中まで私の魔法の支配下にある空気が詰まっているわ」
そのまま中の空気を一気に外に放出する。
中の空気が抜け、空間が縮まろうとするが私の魔法で作られた膜がそれを許さない。中の宝喰い達は空気が突然無くなり、呼吸は愚か体温すら奪われる状況になすすべがない。
それは瞬間的なことであった。次の瞬間には中の宝喰い達が押しつぶされるようにぐしゃりと小さな塊にまで圧縮される。
一種の真空状態である。
魔法を解除するとそこには圧縮され、手のひらサイズにまで縮んだ植物性宝喰いだったものが残されていた。つついてみるととても固い。かちんこちんである。
もちろん、もう生きてはいないだろう。しばらく様子を見ている間に砂のように消えてしまった。
「うわ、えげつない」
「さすがエル様。敵に対して容赦というものを知りませんわ」
「ハルはいつものことだけれど、エリーザまでそんなことを言うなんてひどいのではないかしら」
引きつった顔のハルと表情を変えずに誉めるように容赦のないことを言うエリーザに少し心が折れた。




