ニートと主。
いったん湖からあがって水の膜を外す。
水魔法といえば、水をブレードにしたり鞭にしたり龍にしたりと形を与えたくなってしまうのだが、今回はどうしようか。
そう考えながら水を空中に浮かべてみる。原理は不明だがここら一体の空気が乾燥したわけでも目の前の湖が干上がったわけでもない。
「お嬢、大きい反応です」
「あら、湖にも主がいるのかしら」
池とか沼には主がいるイメージがあった。でも湖は考えたことがなかったな。
まあ、池の主や沼の主は鯰や鯉だと思うんだけど。
湖の中を探ってみると端の方から勢いよく近づいてくる存在に気付いた。ハルが言っていたのはこいつだろう、図体も大きいが強さもこの湖周辺では一番だと思う。
ダンジョンボスというわけではないだろうから、湖の主と呼ぼう。湖の主は明らかにこちらを狙っていた。
ハルたちに攻撃やその余波が向かわないように先ほどの水の膜を分厚く固くしたものを作り二人と私の間に置く。
私は水の塊を鋭くとがった矢の先や槍や銛や、面倒なので剣の形に変えて自分の周りに浮かせた。
グルゥオオオオオ!!!
ものすごい咆哮と共に湖から飛び出してきたのは巨大な魚だった。
口には肉食動物のような歯が並んでいて、明らかに私たちを食べようとしているのがわかる。
そんな湖の主の口の中と目のあたりを狙って、勢いよく浮かばせていた槍たちを飛ばせた。
グギャオオ
矢の先端で目をえぐり、槍が口の中にどんどん突き刺さっていく。
正直グロである。オーバーキルである。
苦悶の声を上げ、ビクンビクンとしばらくはねてから、それはぴたりと動きを止めた。
「ちょっと、やりすぎたかしら?」
「見た目があれですね。口にぎっしり槍と剣が詰まっているのは見ていて口が痛くなります」
ハルの言葉に対頷いてしまう。わかる、しかもちょっと量が多すぎて口の端が切れてるから自分の口の端を触ってしまう。切れていないのに痛く感じてしまう。
両眼には矢が刺さっていて、それも痛そうに見えるので軽く手を振ってそれらすべてをただの水に戻した。
「あ、水に戻したら血が水に溶けてもっと地獄絵図っぽいですわね」
出血量が実際以上に増えて見える。これぞマジック。
「あら、エル様。ドロップ品がありますわ」
「本当ね」
エリーザの視線の先にはキラキラと日の光を反射するきれいな、そして大きい魚のうろこのようなものが落ちていた。
「これは……あら、いいものね」
鑑定のために≪第三の目≫を使うとそれがブラオウギスの鱗というドロップアイテムだということがわかった。
結構丈夫な防具の素材の一つであり、ドロップ率は良くないものらしい。つまりそれなりのレア。まあ、この湖でこの主を中心に狩っていれば二日あればでてくるものらしいけれど。
「よかったですわね、エル様」
「そうね、シュタール達へのお土産にしようかしら」
とりあえずお土産を入れる予定だった袋に入れて収納する。
探知を広げてみるがこの主ほどの強さの宝喰いはこのあたりにはいないようだ。
「次の階層へ向かいましょう」
「了解です」
「かしこまりました」
他にも試したい魔法はあるが先に進みながら試せばいいだろう。
二人を促して、私は次の階層へ向かう階段を探すことにした。




