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ニートと炎魔法

投稿し忘れていた分です。2話連続投稿になります。


面倒なお嬢様から離れ、先に進む。

記録可能な階につき、いよいよ本格的に探索開始だ。

今までの階層とは違い、ハルもエリーザと同様に私の横で周囲を警戒している。エリーザほど熱心ではないように見えるけれど。

「それにしても、ダンジョンというものは不思議ですね」

エリーザが感心したように漏らした言葉に私も同意する。

今まではいかにもダンジョンです、といいたげな石造りのフロアばかりだった。壁もちゃんと見えたし灯りは松明だったりランタンだったりだ。

しかしここは一面の草原。天井は空のような青色で雲も太陽も浮かんでいる。

「こういった大きさを無視した空間が広がる階層から真のダンジョンが始まるなんて言われることもあります。宝喰いの強さもここから跳ね上がるので気を付けてください」

「確かに、今までとは違いそうね」

ハルの言葉に探知エリアを広げると確かに先ほどまでの宝喰いとは違う気配を感じることができた。

強さもだけど数も多い。これは普通の冒険者だと苦戦し始めるかもしれないなあ。

「広さもあるし、魔法も使いやすいわね」

「俺たちに当てないでくださいね」

ハルの言葉にあたりまえでしょうと返し、宝喰いの反応が強い方へと向かった。





「さすがは草原。獣が多いわね」

「狼系の宝食いは群れで襲い掛かって来るものですが、ここは数が多いですね」

灰色の毛並みの狼に囲まれながら感心したように呟けばハルも狼の群れをけん制しつつ同意してきた。

エリーザも弓を構えながら「森にいるものよりも大柄でございますね」と言っているのでダンジョン生まれは他のものより強いのだろう。ゲームだと改とかプラスとかつけられているのではないか。

「どうします?」

「試してみたい魔法があるから私の傍に二人ともいてちょうだい」

ハルに答えれば二人とも構えは解かずに私のすぐそばに集まる。

それを確認して、目の前の狼の目を見る。

野生の動物って純粋な目をしているイメージだったけれど、こいつらは濁ってるなあ。ダンジョン生まれは違うのか。

そんなどうでもいいことも思いながら体の中に小さな火種を作る。

色は赤。炎の中ではそれほど高温ではないが、肉を焼くには十分な熱さだ。

周囲にいる狼の数はわからないので私とハルとエリーザの周りを境目にして、狼が多そうな範囲をざっくりと囲む。その範囲の中に先ほどの火種を落とし、そこに燃料として魔力を注いだ。

瞬間、小さかった火種が巨大な炎に成長し、狼たちを飲み込んでいく。

「うわあ、凶悪」

「エル様の魔法は勢いがいいですね」

ハルの呆れたような声とエリーザの楽しそうな声を聞きながら炎をゆっくりと動かしていく。

逃げる狼も追いかけて燃やす。

逃げるものを追いかけるのはかわいそうかな、と思う反面自分たちで襲い掛かってきたのだから逃げるのはだめだろという気持ちもある。

まあ、炎の制御の訓練も兼ねて残念ながら敵対した宝食いは残らず炎の餌食にさせていただくのですが。制御のためだからね、仕方ないね。

ほとんどの狼は最初の段階で燃やしていたので逃げたものも含めて全滅させるのにはそれほど時間はかからなかった。

「炎はまずまずね。次は水をやってみようかしら」

それぞれの属性の魔法の精度を見極めるためにも、もうしばらくこのエリアを探索することにする。

「お嬢が戦っていると本当に俺の仕事が必要なのか考えさせられますね」

ハルがこぼした言葉にはエリーザが笑いながら慰めていたようだった。



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