ニート、ダンジョンに到着する。
前回の状況だと馬車をどうするのか問題になったので御者を出しました。
その影響で前回の馬車に乗るくだりを若干変更しています。
門のところでハインツに挨拶し、その後ろから「今日は馬車だ」「普通だ」などというささやき声をもらい(その後ハインツに怒られてた)、ダンジョンを目指す。
ダンジョンの前はそれなりに人がいた。これが全部冒険者、というわけではないらしい。
「お店まであるのね」
ひと際賑やかな場所には露店が並んでいる。ダンジョンに入る前に持ち物を補充するためのもので、武器や防具も少しはあるが主役や保存食と回復薬のようだ。
値切る冒険者や財布の中を確認しながら肩を落とす冒険者、仲間に止められている冒険者もいる。
店側もわりと屈強な男が多い。喧嘩になったときに対処できるからだろうか、とも思ったが商品をもってくるのに力がいるからかもしれない。
そんな賑わう人だかりから少し離れた、比較的静かな場所にはテントが並んでいる。
「あれはなにかしら?」
「神殿関係ですよ」
御者に何か伝えていたハルが私の示した方を見て答える。確かに国教の紋章がついたひと際大きなテントがあり、テントは同じ色で統一されているようだ。
神殿というと、宗教関係か。なんだ、宿みたいなものもあるんだと思ったのに。
「回復系の魔法や守護関係の魔法を付与してくれる場所です。まあ、お布施が必要ですけど。それと、信心深いやつは出発前に祈りに行ってますね」
ものすごくどうでもよさそうな口調なのはハルがあまり宗教に好意を抱いていないからだろう。
わからなくもない。上の方の奴らは大抵金の亡者なので扱いが楽だが狂信者レベルの奴らは扱いが面倒である。
異教徒は排除せよだとか、異教徒が多いから多種族は国に入れるなだとか、酷い時は村を焼き払ったりする――こともあったらしい。
まあ、そこまですると国家間の問題、種族間の問題にまで発展するから秘密裏にそいつらは自分たちの上司から消されるのが世の常人の常であるためそこまでの狂信者は長生きしない。
それでもちゃんと祈れとか信心を見せろだとかうるさいので私は嫌いだ。
まあ、貴族の務めとして関わることもあるし、そこまで面倒じゃない、自分の信心を極めるだけの人なら毛嫌いはしないけどね。
「我々には必要ないと思います」
「同感です」
ハルもだが、エリーザもあまり近寄りたくないらしい。
御者はどうか、と御者台を見上げたが、彼はすでに帰るための支度をしていてこちらの話に興味を示してすらいなかった。
「では私はこれで。お嬢様、怪我をされないようにお願いしますね」
「わかってるわ。ここまでありがとう、オリヴァー」
名前を呼んで礼を言えばいえいえ、とおっとりした笑みを見せて彼は馬車と共に帰っていった。
帰りは私の≪瞬間移動≫が使えるし、馬車が必要なら呼ぶこともできるので問題はない。
「買うものもないわね……ダンジョンの入り口に向かいましょう」
「こちらです」
ハルに案内されて私たちは人混みを進む。
わりと遠巻きにされてるからぶつかることはないけれど、本当に人が多いなあ。




