異種族はファンタジーの基本です。
【お詫び】投稿されたものも含めてエルの口調の手直しをさせていただきました。話の流れに関係するものではありませんが、こちらで報告させていただきます。
「シュタール!シュタイン!ごきげんよう!」
「おお!?お嬢じゃねえか。今日はまた元気だなあ」
「これはこれは、ようこそお越しくださいましたフォルツァーノ様!」
今回はテレポートではなく馬車で工房が立ち並ぶエリアに乗り付ける。
テレポートでもいいのだけれど、シュタインはこうして乗り付けたときの方がノリがいい。
ある一つの結構大きな工房の前で馬車を降り、このあたりの武器屋や防具屋に用があったらしい冒険者の驚く顔を後目に扉を思い切り開ける。
そこにいたのは二人のドワーフ。兄のシュタールと弟のシュタイン、ここ、魔法道具工房の主である。
この世界には人間以外にも種族がいる。この王都でもよく見るのはワービーストと呼ばれる獣人と、魔法特化と遠距離特化の2タイプがいてそれぞれ冒険者としてひっぱりだこなエルフ。
あとは竜人かな。彼らは先に出した二人よりは見ないけど。
ドワーフは自分たちの国から出てこない。別に引きこもりなのではなく、自分たちに必要なものが自分たちの国で手に入るからだ。
必要なものが手元にあるんだからわざわざ不自由な外に出てまでやることはない、という考え方にはわりと同意している。
それでも彼らの作るものは一流で、他の国々はそれを輸入したり、自分たちの職人を弟子として派遣したりしてその恩恵にあずかるのだ。
そんなドワーフの中でも変わり者なのがこの兄弟。
わざわざ必要なものがほとんど手に入る母国から出て、人間の国で魔法道具を作ることにしたシュタール。
こいつも変わり者だがシュタインはさらに変わり者だ。
職人気質、頑固者、陽気で酒好きのイメージが強いドワーフに生まれたにもかかわらず、金勘定と商売が大好きだというシュタインは成人する前からドワーフの国を出るつもりだったらしい。
そこに外の世界で新しいものを見て作りたいとシュタールが加わり、兄弟二人でこの国まで来たのだ。
作り手はシュタール、販売はシュタインがしているのでこの工房はかなり利益を上げている。
まあ、それに私も一枚かんでいるのだけれど。
「お嬢、おめえ国のお偉いさんにでもあの機械人形のこと漏らしやがったな!おめえんとこの兄貴が視察に来たぞ!」
「あら、ごめんなさい。ちょっとねえ、口が滑ったというか、後ろめたいことがあると全ての言葉が自分を責めているように聞こえるものよねえ」
シュタールの言葉にそっと遠くを見つめる。あれは失敗だった。
しかし兄が担当して、さらに視察という形にしたということはお咎めはなかったのだろう。
あんなものを作ったとしれたらわりと大騒ぎになるから、隠したんだろうなあ、大変だったな、殿下。
「ヴェッターのところにも顔を出されたそうですよ。眼以外はエルヴィーラ様にそっくりだったと興奮しておりました」
「そっか、ヴェッターのとこにもか。あ、ヴェッターは今時間あるかしら?できれば会いたいのだけれど」
ヴェッターはこの工房から少し離れた古書店で魔法の研究をしている割と年を食ったエルフだ。こいつも変わり者で、どこが変わり者かといえばシュタールの良き友人をしているような奴だ。
別にエルフとドワーフが仲が悪い、というわけではないが、土を扱うドワーフと風を扱うエルフは話が合わないらしい。主義主張ではなく、根本的に会話が成立しないことがある、という意味で。
ある冒険者のエルフが、ドワーフの国でほしい魔法道具があるが話が噛み合わなくて行きたくないと言っているのを小耳にはさんだことがある。
「大丈夫じゃねえか?あいつの店は閑古鳥の巣だからな。俺が顔見てくるわ」
「お願いするわ、シュタール」
そう言って店を出て行ったシュタールを見送るとシュタインに促されて店の奥に入る。
そこは少し小さめの食卓と数個の椅子がある、簡素なプライベート空間である。
「護衛の方もどうぞ」
「いつもすまないな」
シュタインに勧められてハルも椅子に座る。私の隣ではあるがわりと警戒は解いている。
まあ、ここで私を襲うほどシュタインは愚かではないし力に自信のあるタイプじゃないからね。
そのまままったりと二人を待つ。
シュタインはこれぞ好機とばかりに新開発の魔法道具を私に紹介してくるが、私も協力して開発したものが多いしなにより私は自分でも作ることができるので買うつもりはないのだ。
「ああ、でもそのよくわからないけど暗闇で光る物体はいいわね」
「え、どこがいいんですか」
「さすがエルヴィーラ様!お目が高いですねえ。これは、まあシュタール兄さんとの開発で偶然できたんですが蓄光魔法を組み込むことで日中光に当てていれば夜も明るさを保つんですよ!まあ、≪光魔法≫よりは暗いんですが」
「ダメじゃないっすか」
シュタインの説明にハルが突込みを入れる。
いやいや、ハルはわかってない、わかってなさ過ぎる。
光をつける魔法=光魔法、火魔法というこの世界で魔法で光らせるのではなく、光を蓄えることを考えているところが凄いんだ。
これは新しい魔法の使い方を発明したも同然である。
うんうん、魔法道具関係の発展は良いものだなあ。




