冒険には準備が必要です
ダンジョンに行ってもいいという許可はもらったけれど、すぐに行けるわけではなかった。
そわそわとしてしまったが仕方ない。早くいきたい気持ちがあるんだから。
しかし準備を怠ってはダンジョン攻略はできない。仕事に行こうと家を出て忘れものに気付いて家と通勤路を行き来するようなことになってしまう。たとえがわかりにくい?そうかしら?
一冒険者として、余裕のある準備が必要とされる。
例えば武器。エリーザの弓なら矢も必要よね。
「エリーザはこう、特殊な矢は使わないの?毒矢とか」
「私はそういうものはあまり。毒に関してはエル様がいるので危険ですからね」
私がそれに触ると思っているのだろうか……。さすがに毒だとわかってるものをむやみやたらに触らないわよ、効くかどうかは別として。
「私はこの弓と矢を愛用しておりますので、今回もこちらを使いますわ」
そう言って取り出されたのは木というより宝石のような緑の光を宿す弓と金属の矢じりのついた矢。
「この弓、材質は何かしら」
「こちらはエルフの里で作られる精霊樹の弓ですわ。私の弓の師がエルフの里から持ってきたものをくださったのです。軽く丈夫で、風の補正もあって照準が合わせやすいのですわ」
そう言ってエリーザは笑う。しかしエリーザはエルフに教えてもらってたのか、というかつまりこの屋敷にエルフが来たことがあるのか?
うーん、そういった記憶は頭の中で見つからない。私がしばらく領地に下げられてた時かもしれないし、なんならこの屋敷からエリーザが通っていたのかもしれないけれど。
謎を一つ手に入れながら、エリーザが弓と矢をひとまとめにするのをぼんやりと眺めていた
ハルの武器は盗賊退治の時と同じ片手剣である。形は西洋剣のような中央に厚みがあるもので何故かハルはそれを何振りか持っている。
全部同じだろうといったことがあるかとても呆れた目をされた。解せない。同じだろうどう見ても。
「お嬢、しっかり見てください。一応全部つけられた属性が違うんですよ」
そう言われて見てみれば確かに、炎属性の剣や風属性のついた剣などもその中に含まれている。
「そんなの、まとめてつければいいじゃない」
「普通はしませんし出来ません」
「私はできるわよ?してあげましょうか」
「いいです。集めるのが楽しいんですから」
やっぱりただの趣味じゃないか!
とはいえ、ダンジョンで有効な属性の剣を吟味し、それに合わせて防具も選んでいるらしいので雇うだけの雇い主は何も言えない。
言ってもいいんだけどハルはわりと聞いてくれないから。
でも、やっぱり全属性の武器とかあればいいのに。ラスボス戦前っぽくて素敵よね。
「そうだわ、ハル。シュタールたちのところに行きましょう」
「は、今からですか?」
「そうよ」
どうせだから知り合いのところに顔を出して、欲しいダンジョン製のものはないか聞いて来ようと思い立ち、ハルに準備をさせる。
ハルは驚いたものの仕方がないと一番軽い剣を腰に下げて家の外に向かう私についてきた。




