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 ヘイルムーンより更に北、クロトミュスコフという国がある。


 一年のほとんどの時期で雪が降る、大陸最北に相応しい極寒の国だ。

 国の北側は夏でも溶けることの無い雪と深い森、そして高い山々が人々の侵入を拒み、未だに開拓が進んでいない。そして南側には国土のおよそ半分を占める不毛の荒野が広がっている。


 今はまだ雪が残り草もまばらなその荒野だが、夏の間だけは草の生い茂る大草原となり、ここが北国だという事を忘れさせてくれる。

 その夏を狙ってここぞとばかりに羊達が放牧され、草原は大放牧地へと変貌する。羊肉と羊の乳、そして羊毛はこの国の人々にとって最も身近で、交易品としても国を支える大切な品だ。

 国民もみな羊の扱いに慣れ、男に至っては羊の世話が出来て初めて一人前と認められる程だ。


 しかし、そんな牧歌的な光景もほんの一時の事。

 雪国の短い夏があっという間に駆け抜け、夏よりも更に短い秋になると、草は枯れ果てたちまち元の荒野に逆戻りだ。

 そして長い冬には全てを覆い尽くす雪が降り、そこは雪以外何も無い一面の大雪原となる。


 一年の大半で作物が作れず、作れたとしても黒麦と牧草だけで精一杯だ。冬の間は羊の放牧はおろか人の移動すらままならない、生きていくのに厳しい地だ。






 そんな荒野の中にまるで雪を積み固めたような純白の城と、それとは対照的な薄暗い灰色の都がある。

 建国1000年と云われる北方の雄クロトミュスコフ、その王都スワンチカだ。


 街は石造りで、所狭しと密集した古い家々は歴史と伝統を感じさせる。しかしそんな古い町並みは同時に変わる事が無い、もしくは変わる事を許さない偏執じみた意思も見る者に連想させる。


 道はまるで迷路のように曲りくねり先が見えず、街中ですら関所のような門でいくつも区切られている。恐らくは攻め込まれる事を想定し、防衛の為にこのような造りをしているのだろう。


 人々は未だ厚い上着を着込み、寒そうに襟を寄せている。国で最も活気が有るはずの王都なのに、道行く人々は多いとは言えない。


 街の周囲をぐるりと囲む強固な城壁も空と同じ灰色で、それも相まってどこまでも高く、まるで地の果てまで続いているかの様に錯覚させられる。

 外から見る者には強い拒絶感と威圧感を、内から見る者に強烈な圧迫感と閉塞感を感じさせる。

 それはまるで入る事を拒むと同時に、出る事すら許さないと言っているかのようだ。


 かつては『北方守護』『北の白峯』『雪原の龍騎兵』など様々な名で恐れられ、北方大陸の覇者とまで言われた国だ。

 各地の戦場でその勇名を轟かせ、大陸屈指の強国として確固たる地位を築いていた。―――そう、かつては。


 近年では過去の輝かしい名で呼ぶ者はいない。もっと相応しく、そして広く知られた呼び名が有るからだ。


 『北の妄執』クロトミュスコフ。

 在りし日の栄華に縋り、過去の栄光を夢見る斜陽の王国。

 広大だったその版図を、強大だった権力を再びその手に。

 かつての領土を奪い返し、再び大陸に覇を唱える。それを国是として何代も突き進んできた、正に妄執に取り憑かれた国だ。


 しかし今、その長年の妄執を振り払い歴史を大きく動かすかも知れない英傑が、人知れず産声を上げようとしていた。











「姫様、ご報告がございます」


 その白く美しい佇まいから『白鳥城』と称される王城スワンチカ。

 だがその見た目とは裏腹に、城内は薄暗く陰鬱としていた。


 風を防ぐため鎧戸の窓はきつく閉じられ、外の光が全く入って来ない。そのせいで昼間でも蝋燭が灯されているのだが、安い獣脂の蝋燭を使っているのか酷い匂いだ。

 窓を閉じているのにそれでも隙間風が入っているのか、春になったばかりなのに酷く寒く、廊下を忙しそうに歩く侍女達の吐く息も白い。

 そんな城の中、最上階にある王族の私室に訪問者があった。


 暖炉には火が入っていて室内は十分に暖められている。まるで廊下の寒さが嘘のようだ。だが王族が暮らすにしては調度品や華美な装飾などが無く、一見すると地味で質素に見える。

 しかしながら作りの良い、落ち着いた色調の家具でまとめられていてこの部屋の主の趣味の良さが伺える。


 大きな窓にはなんと格子状にガラスがはめ込まれており、外から陽の光が差し込んでいた。残念ながら透明度は低く外の景色を見ることは出来ないが、誇張ではなくこの窓一枚で小さな屋敷が買えるほど貴重な物だ。


 その窓からの光に照らされたこの部屋の主、8才になったばかりの少女―――アイネイア・ド・クロトミュスコフは自身の体とは不釣り合いな大きな机に向かい、黙々とペンを走らせていた。


 少女は長い薄紫色の髪を飾り気の無い紐で束ね、無造作に背中に垂らしている。

 ただ『邪魔だから』という理由で束ねたのか、あちこちで毛が跳ねていて『お城で暮らすお姫様』がするような髪型では無い。恐らく侍女の手による物では無く、自分で勝手にやったのだろう。


 青紫色の大きな瞳や、雪のように真っ白な肌と薔薇色に染まった頰、小さな蕾のような唇も本来なら男女年齢を問わず、思わず見惚れてしまうほど可愛らしい。

 だが今は眉根を寄せて睨みつけるように書類に向かい、不機嫌そうに唇を真一文字に結んでいて台無しだ。とても8才の子供がする表情ではない。


「またですか…」


 侍女だろうか、先程控えめなノックと共に入室した女性がそんなアイネイアの姿に気付きため息を零す。何度言っても聞かないのですっかり諦めてしまっていた。


「姫様、ご報告がございます」


 入室時と同じように声をかけ、後ろ手でドアをノックし主人の反応を待つ。

 この慣れた様子を見るに、恐らく普段からアイネイアはろくに返事をしないのだろう。そもそも普通なら許可が無いまま王族の部屋に入るなどあり得ないのだが。


「………ん」


 ようやく気が付いたのか、アイネイアは僅かに目を上げ一言だけ発する。だがすぐに興味を失ったのか、視線を紙の上へ落とし書き物を続けた。

 しかし次の一言でその表情は一変する事になる。


「ヘイルムーンで白麦の栽培が成功しました」


 絶え間無く走っていた羽ペンがピタリと止まり、紙に向いていた顔がゆっくりと上がる。

 その目は先程までとは打って変わり爛々と輝き、その唇も大きく弧を描いている。まるで獲物を見つけた肉食獣のようだ。


「アトミカ、詳しく。それと今は執務中よ、呼び方には気を付けなさい」


「はい、失礼致しました『殿下』…聞こえていたのならお返事を」


「…善処するわ」


 アトミカ―――『比類なき』との異名を持つ、クロトミュスコフ筆頭騎士。彼女を侍女と見間違う事などあり得ないだろう。


 侍女であれば髪は邪魔にならないような髪型や長さにするのが常識なのだが、アトミカは長く艶やかなその黒い髪を腰の辺りまで伸ばしていた。特に結んだりしている事もない。


 血の色のような赤い瞳は切れ長で鋭く、肌は死人のように白い。鼻筋も通っており、誰もが思い描くような美しい顔立ちだ。しかし整い過ぎていてどこか人間離れした物を感じさせる。

 30代にも20代にも、いや10代の少女にすら見える不思議な雰囲気を持った女性だ。


 その服装も他に類を見ない。

 全身にぴったりとした、動きやすそうな黒いなめし皮の服を着ており、その女性らしい豊かな体のラインがはっきりと見て取れる。この世界の一般常識からすれば随分とはしたない格好だ。


 そして何よりその身に纏う空気。鍛え上げられた無駄の無い肢体と、隙の無い所作は明らかに武を収めた者のそれだ。

 それも生半な物では無い。恐らくは達人と呼ばれる領域に達した力量だろう。


「ヘイルムーンに持ち込まれた白麦ですが、1年目2年目共に発芽が3割、収穫は1割程でした。3年目には方針転換をしたのか、白麦を作らず黒麦の作付けだけでした」


「たしかアルテリーゼでは黒麦で税を払う場合、白麦の5倍の量だったわね。白麦を諦めて黒麦の収穫量を増やそうとしたのね」


「はい、そのようです。しかしディルトラント就任4年目の去年、また方針を変え白麦の栽培を再開していました。具体的な方法は不明ですが発芽が5割、収穫も3割まで向上していたようです」


「………それで?」


「今年は発芽の時点で8割を超え、このままでしたら収穫は5割は行くと予想されます。ただ試験農場で少数の作付けですので、収穫量自体はごく僅かです」


「へぇ…」


 たとえ今年の収穫がごく僅かでも、もし来年ヘイルムーン全土で白麦が作付けされ、それが5割も収穫出来れば税を納めるだけで話は終わらない。それはとてつもない財貨を生む事になる。

 ヘイルムーンが潤えば防備に使う金も増えるだろう。虎視眈々とその地を取り返そうと狙っているクロトミュスコフとしては到底看過出来ることでは無い。


 しかし『この北方の地で白麦が収穫出来た』という事実は福音にもなり得る。

 もしその技術、その知識ごとヘイルムーンを奪えたなら、クロトミュスコフの広大な荒野を麦畑に変える事が出来るかもしれない。


 この国で白麦が作れるようになり、富み栄えたならば。今のように無理に他国へ攻め入る必要も無くなるだろう。

 ………その富を使って武力を強化し、侵略政策を加速させるという可能性も有るが。


「それはいつの情報?」


「たった『今』です。追って確認を取りますが、私の『目』からの情報ですので間違いは無いかと」


 ここスワンチカからヘイルムーンまではかなりの距離がある。伝書鳩を使ったとしても数日は掛かるほどだ。

 しかし今回は秘匿性の高い情報なので、野生の猛禽類に襲われやすい鳩を使ったとは考えにくい。もし残された書簡を誰かに拾われれば一大事だからだ。


 そうなると直接人が運んだはずなのだが…。

 両国の間には大陸を南北に隔てる大河があり、これが今の国境となっている。

 そしてこの川には橋が架かっていない。5年前の戦争時、撤退したクロト軍が橋を落として行ったからだ。


 なので現在アルテリーゼとクロトミュスコフ、この二国間を行き来する事は物理的にとても難しい。

 休戦中とは言っても一触触発の緊張状態が続いているので密入国者は厳しく監視しているし、橋の跡地にはお互い砦を築き睨みを利かせている。

 その監視の眼を盗み川を越え、アルテリーゼに密入国しヘイルムーンの情報を集める。そして再び川を越えクロトミュスコフに帰って来る。不可能な事では無いだろうが…。


 しかもアトミカはこの情報を『今』と言った。

 何らかの方法で書簡を運んだとしても、それは『数日前』の情報のはずだ。

 一体どんな魔法を使って『今の情報』を手に入れたのか。


「ふふ、流石はアトミカね。『比類なき』の面目躍如と言ったところかしら?」


「恐縮です」


 その事を全く不思議に思っていない、と言うよりもその術をアイネイアは知っているのだろう。ごく当たり前のようにアトミカに賞賛を送る。


「それにしても『憎っくき』ディルトラントにそんな才が有ったとは驚きね。てっきり武勇のみの男だと思っていたのだけど。それとも有能な配下でも抱えたのかしら?」


 そう言うと完璧な所作でカップとソーサーを持ち上げ、すっかり冷めてしまっているお茶を口に運ぶ。


「…いえ、殿下。これはまだ確認が取れていないのでご報告しようか迷ったのですが」


「何?判断は私が下すわ。報告しなさい」


「かしこまりました。白麦の栽培に関して指揮を執っているのは、ディルトラントの嫡男だとの報告を受けています」


 テーブルにカップを置く際、カチャリと音をたててしまったアイネイア。

 礼儀作法を教わる教師から『もう私から伝えられる事はありません』とお墨付きを貰った彼女にしては珍しく、極めて初歩的なミスだった。


「息子?いくつ?」


「今年で5才になります」


「…にわかには信じられない話ね」


 『貴女がそれを言いますか』という言葉をアトミカはかろうじて飲み込んだ。

 僅か8才でクロトミュスコフの内政に関わり、父の政務を手伝っている『信じられない』少女をアトミカは毎日目にしているのだ。そんな子供がもう一人いたとしてもなんら不思議では無い。


「息子の優秀さを内外に示す為に自らの功績を譲った?…いえ、そんな事をしても逆効果ね。5才の子供に出来る訳が無いもの、あからさま過ぎて笑い者だわ。そんな事にも気が付かない程愚かなのか、それとも…」


 手の中の羽根ペンを弄り、誰に言うでも無くぶつぶつとアイネイアが呟く。

 それが彼女の考える時の癖だとアトミカは知っていた。なので邪魔をしないよう口を挟まず、考えが纏まるのをじっと待つ。


「ディルトラントはその事を喧伝しているの?」


「いえ、むしろその逆―――隠蔽しています。名目上の白麦栽培の責任者はディルトラント自身と、現地住民の顔役を据えているようです」


「………その息子の名前は?」


 息子の功績を隠し、自らの物としている。

 普通ならば褒められた事では無いが、それがもし『世間の目を息子から逸らすため』だったとしたら―――


「アルフリート・ヘイルムーンです」


 『信じられない話』も、途端に信憑性が増してくる。


「調べなさい」


「はい」


 アルの平穏な日常は、終わりを迎えようとしていた。











「………ところで殿下。私の勘違いで無ければ、それはカルディア帝国の資料では?」


 『それ』とは机の上に広げられた数十枚の紙のことだ。あちこちに書き込みや線が引かれ、相当読み込んでいる事が分かる。


「うふふ、そうねカルディアの資料ね。先日あなたに纏めてもらった物よ」


「………殿下」


「何よ。まだ何もしてないわ」


「まだ?そのうち何かするって事じゃないですか」


「アトミカ」


「…はい」


 アイネイアは物憂げな様子で窓の外を見やり、諦観のこもった吐息を漏らす。とても8才の子供とは思えない、まるで全てを悟っているかのような憂いを帯びた表情だ。


「未来なんて、誰にも分からないものよ」


「いや、もういいです。はい」


(もし、アルフリート・ヘイルムーンが噂通りの傑物であったなら、周りの者はさぞ苦労しているでしょうね………私のように)


 遠く離れた地で自分と同じ苦労をしているかもしれない誰かに、そっと同情を寄せるアトミカだった。


「はぁ…それで『姫様』次は何を企んでいるのですか?」











 一方その頃、ヘイルムーンでは。

 アルが麦畑の端っこで拗ねたように膝を抱え、地面にのの字を書いていた。


「いやごめん。ごめんって」


「…」


 そんなアルに向かってレイが謝り、何とか慰めようとしているようだ。


「あれだけ勿体ぶってたからさー、なんかもっとオレの想像出来ないようなすっげーもんだと思っちゃってさー」


「……」


「オレが勝手に期待し過ぎちゃっただけだからさー、アルは悪くないからもう気にすんなよー」


「………」


 いや、レイはただ面白がっているだけかもしれない。


「塩すげーよ。うん、塩はすげーよな。なんたって塩だもんなー」


「…………」


「アルー元気出せって、塩作るんだろ?オレも手伝うからさ。…あれ?でも塩ってどう作るんだ?」


「うがぁーーーーっ!レイわざとやってる!?わざとやってるよね!?」


「ソンナワケナイヨー」


「お手本のような棒読みだし!?」


「気のせい気のせい」


 我慢できずに叫ぶアルだったが、レイの方はいつもの様にのらりくらりと躱すだけだった。


 そうやって2人が騒いでいると、先に行っていたはずのエイルがテクテクとこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

 手に持っている籠が空っぽになっているので、お爺さんにおすそ分けを渡して来たのだろう。


「…お爺さんとお婆さんに、お野菜渡して来た」


「あ、ありがとうエイルねぇちゃん。…じいちゃん達なにか言ってた?」


「…顔出すから、ちょっと待ってろって」


「そ、そっか。じゃあちょっと待ってようか…」


 2人並んでぼーっと立っていると、普段は気にならないのに隣のエイルの事が妙に気になって仕方がない。


「………」


「………」


 チラリとエイルの顔を伺ってみると、畑や空を見ていて普段と変わりが無いように思える。

 しかし何だか気まずくて、いつもより沈黙が重い気がする。


「まどろっこしいなぁ、さっさと謝っちゃえよー」


「こ、こういうのはタイミングなんだよ!タイミング!」


「…」


 今レイとじゃれ合うアルを見ても、エイルの胸にさっき感じていたような激しい感情は湧いて来ない。


 エイル自身も何故自分が不機嫌になり、アルにあんな態度を取ったのか、その理由をよく分かっていなかった。

 最初はただ何となく嫌だな、と感じただけだった。


 アルとディアドラが楽しそうに話しているのを見ていたら、なんだか胸がモヤモヤとして来て。

 アルがディアドラにだらしない顔を晒しているのを見たら、何故だか無性にイライラして来て。


 そしてディアドラが去り際に囁いた『頑張らないと、誰かに取られちゃいますよ』という一言。


 自分がどうしたいのか、どうすればいいのか。エイルにはまだよく分からない。分からないけれど―――


(…アルを誰かに取られるは、嫌だ)


 最初に感じた、その思いだけは確かだった。






「…アル」


「あ、エイルねぇちゃん…何、かな?」


 呼ばれて振り向いた、ちょっと気まずそうなアルの顔。そんな顔をさせたのは自分だと、エイルの胸にチクリと痛みが走った。


「…アル、ごめんね」


 だから、謝るのも自分だ。


「エ、エイルねぇちゃんは悪くないよ!」


「…ううん、私が悪い」


「いや俺が―――」


「私が―――」


「あー2人とも謝ったんだから、それでおあいこにすれば?」


 誰かが間に入らないと、これは永遠に終わらないな…と悟ったレイがそう提案すると、アルとエイルの2人から「おーなるほどなー」と感嘆の声が上がった。


「エイルねぇちゃん、それじゃあおあいこで!」


「…うん、おあいこ」


「えへへ」


「…ふふ」


 さっきまでの気まずい雰囲気など感じさせない、いつも通りのアルとエイルを見て「世話の焼ける2人だなぁ…」と面倒臭さそうにしているレイだった。なんだかんだ楽しそうに笑っていたが。


「うぇっへっへ、これから急がしくなるぞぉー!麦と塩もそうだけど作りたい物まだまだいっぱいあるし!行きたい、探したい場所も!やる事リストアップしてタスク管理しないと忘れちゃうかも!帰ったら早速書かないとね!あっ!でもまずはーーー」


「うおーい、仲直り出来て嬉しいのは分かるけど、ちょっと落ち着けー」


 心配事が無くなったせいか、ハイテンションで色々叫び出したアル。途中意味の分からない単語があったが、レイは慣れたもので適当にあしらって落ち着かせていた。

 エイルは一緒になって「…おー」と掛け声を上げていたが、多分その場の雰囲気に流されているだけだろう。











「はぁ…それでアル―――」


「はぁ…それで姫様―――」


 レイとアトミカ、離れた場所でお互いの事も知らない2人だったがほぼ同時刻、同じ様に溜息を吐き「これを聞くのはオレの(私の)役目か…」と色々諦めた。


「お前今度は何をする気なんだ?」


「次は何を企んでいるのですか?」


 アルとアイネイア、2人ももちろん遠く離れていたが奇しくも同じように目を瞬せ、その幼い顔に不敵な笑みを浮かべた。


「何って…まぁ準備してるって意味で言えば―――」


「何って…そんな事は決まっているでしょう―――」






「戦争かな」

「戦争よ」


 二人の運命は、もうじき交差する。









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