おまけ
とあるゲーム会社のオフィスより、お送りいたします
「た…大変です!佐々木さん!攻略対象者が、攻略できないという苦情が殺到してますっ」
そんな情報とともに営業部の鈴木が、企画制作部に駆け込んできた。
(……まあ、予想はついていたが)
うちのゲームは、他社のゲームに慣れているユーザーほど、クリアが困難になる仕様だ。
(……というか、「クリアできない」のではなく、「エンディングに気付いていない」だけなんだが)
「私も落とせませんでしたッ」
「わたしも!」
鈴木の勢いにつられたのか、その場にいた他の女子社員たちも、口々に文句を言いはじめる。
その女子社員たちに、企画制作部の責任者である佐々木は尋ねる。
「君たち、おまけモードはクリアした?」
「……おまけ?」
「なにそれ!?知らない!」
(……この子たちはリセットちゃんかな…)
それなら、きっと一生かかってもクリアはできないだろう。
「……おまけモードはしましたけど……対戦相手がいない人生ゲームって、つまんなくて……」
まだ、クリアはしていない、ということかな。
「ルーレット回して、進んでも大学→就職→結婚→出産→老後…って、あれ一体なんですか!!」
彼女がたどり着いたエンドに予想がついた。
……おそらく、『溺愛ルート』とスタッフが呼ぶ、あれだろう。
私の時間返してっ、と叫ぶ彼女。
(この子すごい。
あのルートをクリアしてる……!)
正式名称『最凶ルート』
「ドMでストーカーの同級生に一生愛される」という、バッドエンド中のバッドエンドである。
本来なら、「攻略対象との思い出」(告白や別れを含む)と「各ステータス」によって、おまけモードの内容が決定する。
「大学生活」「憧れの人との再会」「大学中退」「コネ就職」「宝くじに当たる」「元彼との復縁」「幼なじみと結婚」など。
さまざまな人生の転機が盛り込まれ、その後の主人公の人生を、すごろく形式で送ることができる。
実は、この「おまけモード」こそが、ゲームの真のエンディングであった。
……だが。
「……君は、ステータスの『運』を、まったく上げられなかったんだね……」
ステータスが高いほど、おまけの人生の内容はバラエティに富む。
……ただ、「運」が上がらなかった場合
彼から逃れるすべはない。
「佐藤さん、君を一生離さないよ」
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「藤色の君を抱きしめて」
[クリア一覧]
→『最凶エンド』
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ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございました。
後藤くんは書いているうちに生まれました。
…おまけを書くまでは、甘々な展開になった、と思ってました。
全国の「後藤」さん。ごめんなさい。
5話を書き終えた時点で、ジャンルを恋愛にしようとしていました。
おまけを書いてたら、作者もびっくり展開になりました。
……ホラーになったよ。
はじめの終わり方は
「……佐藤さん、一生離さないよ……」
でした。
これではジャンルが、コメディではないので、泣く泣く変更。
自分で読み返して、ぞっとしたため、「怖い」をタグに追加しました。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
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ありがとうございました。
※関連短編が四話あります。(一つはこれの短編版で、四つ目は3月1日に投稿します)
そのままでも独立した話ですが、一緒に読むと、より楽しんで頂けるかと思われます。
読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
渕澤もふこ