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6人の物語  作者: sanana
風景に溶けた人へ10のお題
26/26

シーツに包まって手招きする人。

こんなお題ではございますが、どうしてもエロくなりません。

つーかできません。もう仕様です。。。

「うわー、真理ちゃん、リネンだリネンー!本物っぽい!!!

 すごいきもちい!!!うわーい!!!」


ベッドのシーツに早速包まって、うふふとその感触を確かめている女がいる。

全く、どこのわんこだ、これは。


軽井沢のお金持ちっぽい別荘が並ぶあたり。

林の先にそっと続く小道があり、忽然とすっと背筋が伸びるような美しい建物が現れる。

これが、一見さんお断りのオーベルジュとは、誰も思わないだろう。

よく、美術館と間違われる、とは、管理をされているあかりさんのセリフ。


ここは、なんと隆之の祖父が隆之に譲った別荘なのだそうだ。

宝物のように大好きな場所とはいえ、使わないのはもったいないから、と、

弁護士さんを通して管理人兼大切に使ってくれる人を募集したところ、あかりさん夫妻が名乗り出た。


あかりさんは元々ホテルで働いていて、自分のペンションをやるのが夢だった。

旦那さんの英輔さんは腕のいいフレンチのシェフ、この二人に、この建物は宝物に見えたという。

高校生の隆之とあかりさん、英輔さんに、弁護士さんを交えて真剣に話し合った結果、

一見さんお断りのオーベルジュとして生まれ変わることになった。


隆之の気に入っている書斎を兼ねた部屋は使わない。

掃除に入るくらいで、お客様が来ている間は施錠してある。

その他の部屋は3室だから、一日最大3組まで。

もちろん隆之が過ごしたいときはよっぽどの無理を言わない限り最優先。


あかりさんの素敵なおもてなしと、英輔さんのおいしい料理で、

知る人ぞ知る、隠れた人気オーベルジュとなるには、時間はかからなかった、らしい。


「それ、多分アンティークのリネンよ。あかりさんコレクションだわ。」

ベッドに転がっているわんこ、もとい、薔子に言うと、きょとんとした顔をする。

「あかりさん、そんなコレクションまでしてるんだ。さすが…。」


あかりさんのコレクションは多岐にわたる。

とある画家を若いうちから支援していたら、いつの間にか某ビエンナーレに招待されるような

画家さんになっていた、とか、

ふと目について買ったカップひと揃えが、実は貴重なコレクションだった、とか、

天然な目利きとして評判が高い。


このオーベルジュのもう一つの人気要素は、そのコレクション。

あかりさんはそのコレクションを、日常使いにしてしまう。

部屋に飾られている花瓶も、ティーカップも、ダイニングテーブルも、

なかなかに驚きの品物、らしいのだが、

「使わなければ意味がないもの」と言って使われている。


「もー、そんなことより、これを堪能しない手はないわよ。

 真理ちゃん、こっちこっち。」


わんこがシーツをかぶって手招きをしている…。


「何よ、そんなに気に入ったの?」

「うん、すごい気持ちいいよ、ほらほら。」


手招かれるままにベッドに入ると、確かにやわらかいのに凛とした、気持ちのいいリネンだ。


「ホントだ、これはやばいわ、くせになる。」

「だよね、家のカバー類、変えて年期入れたくなるよね。」


気持ちのいいリネンにくるまって、どうでもいい話を延々としていると、

いつの間にか眠くなってきた。

まぁ、いいか、今日はのんびりだし、ご飯になったら誰かおこしに・・・・・


・・・・・


・・・・・


「でさぁ、遠藤。」

「なんだ。」

「何でこの二人、仲良く寝てるわけ?」

「知らん。」

「だよねぇ…。」


二人で小声で話し、ため息をつきながらベッドを見ると、気持ちよさそうに眠る二人がいる。

この部屋はキングサイズのベッドが一つ。

そこに二人仲良く眠っているのだ。


先ほど隆之の別荘に着いた。

いつ来ても素晴らしい外観と、毎日磨き上げられた宝物のような室内。

あかりさん、英輔さんの笑顔もうれしく、来るのが本当に楽しみな場所だ。

まずは荷物を部屋に置いてから、何をしようか、と話をしてたが、

いつまでたっても二人が降りてこない。

何度ノックをしても返事がないので、そっと開けると、これだ。


「あー、もう、今日の午後、この人たちはこれで終わりだね。」

「そのようだな。」

「じゃ、遠藤、俺らはどうしようか。」

「ひとまず下に行って考えるか。こいつらは飯になったら呼べばいいだろう。」

「そうだね。じゃ、そっと出ようか。」


まぁ、そんな休みもいいのかもね。


結局彼女たちは夕飯まで起きてくることはなく、夜は夜で眠れないと騒ぎ

なぜか全員久しぶりにやるトランプに盛り上がりすぎてほぼ徹夜となり、

次の日寝不足のまま帰ることになるのだが、それはまた別の話。


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