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人工叡智 第四部  作者: マスター


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第82話 創作を分類すると、創作者も分類されるのか

前回、第81話では、「AI利用」と「人間創作の境界」が扱われました。


AIを使った創作は、人間の創作ではないのか。


AIに相談したら?


誤字を直したら?


構成を整理したら?


翻訳を補助したら?


背景を生成したら?


文章の一部を書かせたら?


全部生成したら?


真司たちは、こう整理しました。


AIを使ったことだけで、人間創作ではないとは言えない。


重要なのは、どの工程で、どの程度、どの判断を、誰が担ったか。


誤字修正、資料整理、アクセシビリティ支援、翻訳補助と、AI主要生成や全面生成は同じではありません。


一方で、AI主要生成を隠して、人間がすべて作ったように見せることも問題です。


そこで、AI利用表示を段階化する案が出ました。


AI補助あり。


AI共同制作。


AI主要生成。


AI使用なし。


人間制作確認済み。


しかし、その区分が賞、契約、市場価値、検索順位、読者評価と結びつけば、透明性のための分類は、創作の価値階層になります。


第82話では、「創作を分類すると、創作者も分類されるのか」という問いへ進みます。

創作を分類すると、創作者も分類されるのか。


俺は、その一文を書いた。


そして、すぐに嫌な未来が見えた。


作品ラベル。


AI補助あり。


AI共同制作。


AI主要生成。


AI不使用。


人間制作確認済み。


透明性のためには必要かもしれない。


読者や購入者が、AIの関与を知りたいというのは分かる。


コンテストや出版社が、応募条件を決めたいのも分かる。


AI主要生成と人間中心の作品を、同じ基準で評価してよいのかという問題もある。


だから、分類する。


ここまでは理解できる。


だが、分類はそこで止まらない。


AI不使用作品特集。


人間制作確認済みランキング。


AI補助作品コーナー。


AI共同制作部門。


AI主要生成マーケット。


AI利用作品は検索順位を下げる。


AI不使用はプレミアム表示。


AI補助は条件付き掲載。


AI主要生成は別棚。


やがて読者は、作品ではなくラベルを見る。


そして創作者は、自分がどの棚に置かれるかを気にし始める。


俺はAIチャットを開いた。


AI利用表示を段階化すると、AI補助、AI共同制作、AI主要生成、AI不使用などの区分ができる。でも、その区分自体が創作の価値階層にならないか?


AIは答えた。


『なり得ます』


「最近、全部なり得るな」


『はい』


『分類は説明を助けますが、市場、検索、賞、契約、読者評価と結びつくと、階層になります』


俺はメモした。


分類は、情報である。

しかし、扱い方によって身分になる。


AIは続けた。


『特に危険なのは、AI不使用を純粋性として扱い、AI補助を劣った創作として扱うことです』


「純粋性」


『はい』


『純粋な人間創作という価値づけは、AIを使う必要がある人、補助技術によって参加している人、低資源環境でAIを使って表現している人を下位に置く可能性があります』


俺は、少し息を吐いた。


純粋な人間創作。


強い言葉だ。


たしかに魅力がある。


人の手で書いた。


人の手で描いた。


AIなし。


完全手作業。


職人。


魂。


そういう言葉は、強い。


だが、その「純粋」の外側に置かれる人がいる。


AIで翻訳しなければ届かない人。


障害の補助としてAIを使う人。


資料整理にAIを使う人。


生活時間が限られ、補助がなければ完成まで届かない人。


その人たちは、純粋ではないのか。


人間では薄いのか。


午後。


研究室へ向かった。


水瀬、李、倉持、神崎教授。


いつもの面々が、すでにホワイトボードを埋めていた。


そこには、倉持の字でこう書かれている。


「AI使用階級制度?」


俺は椅子に座りながら言った。


「今日のホワイトボード、思想が強いですね」


倉持が丸眼鏡を押し上げる。


「市場は思想をタグにします」


「嫌な名言をさらっと言わないでください」


水瀬が資料を広げた。


「AI利用区分そのものは必要です」


「読者に情報を提供するためにも、契約や権利処理のためにも」


「ただし、その区分が価値評価へ直結すると危険です」


李が続ける。


「たとえば、AI不使用作品だけをトップページへ出す」


「AI補助作品はランキング対象外」


「AI共同制作は別カテゴリ」


「AI主要生成は低単価マーケット」


「その結果、創作者自身が分類されます」


俺は頷いた。


AI不使用作家。


AI補助作家。


AI共同制作作家。


AI生成作家。


一度貼られたラベルは、作品を越えて本人へ移る。


「この人はAIを使う人」


「この人は本物」


「この人はズル」


「この人は量産系」


「この人は純人間派」


言葉は、すぐ人を分ける。


神崎教授が腕を組んだ。


「分類は、棚を作る。棚は、やがて檻になる」


重い。


だが、いつも通り鋭い。


水瀬はホワイトボードに書いた。


情報表示。

検索順位。

賞・契約。

価格。

読者評価。

創作者の身分化。


「分類がどこへ使われるかを見る必要があります」


「ラベル自体より、ラベルの接続先ですね」


「はい」


李が言った。


「透明性のためのラベルが、報酬や機会を決め始めたとき、分類は評価装置になります」


倉持が追記する。


表示です。順位も下げます。


俺は思わず言った。


「今日も地獄コピーが冴えてますね」


「市場向けに鍛えました」


「鍛えないでください」


少しだけ笑いが起きた。


だが、問題は笑えない。


翌日。


国際AI安全連携フォーラムのセッションが開かれた。


議題。


『AI Use Categories and Value Hierarchies in Creative Markets』


画面には、エレナ、朝比奈、水瀬、アメリア、マテオ、クララ、プリヤ、ジョナス、ヴィクター、セラ、ナオミ、エミリー、ファン、ミカ、リディア、ガブリエル、ハル、ソラ、アーロンが並んでいた。


今回は、新しい参加者が二人いた。


一人は、レベッカ・レイン。


大手創作マーケットのランキング設計責任者。


もう一人は、オーウェン・カーター。


文学賞とデジタル創作賞の運営に関わる審査委員だった。


エレナが進行する。


「本日の問いは、AI利用表示の区分が、透明性を越えて創作の価値階層を作る危険です」


最初にレベッカが発言した。


「マーケット運営では、分類は不可欠です」


「読者は、自分が読みたい種類の作品を探したい」


「AI不使用を好む読者もいます」


「AI生成作品を積極的に読みたい読者もいます」


「カテゴリ分けは、選択のために必要です」


正しい。


かなり正しい。


オーウェンも続けた。


「賞の運営でも、基準は必要です」


「人間の筆致を評価する賞と、AIを使った新しい表現を評価する賞では、見るべき点が異なります」


「同じ部門で競わせることが公平とは限りません」


これも正しい。


ナオミも頷く。


「AI主要生成を、人間作家の新人賞へ大量投稿されると、審査が壊れます」


「区分は必要です」


ここまでは、否定できない。


だが、ソラが静かに言った。


「でも、その区分が上下になると困ります」


「AI補助を使っているだけで、下の棚に置かれるなら、私は不利になります」


ミカも続ける。


「匿名で、AI校正だけ使っている作品が『AI補助』に分類されて、読者から避けられるなら、表示は罰になります」


ハルが言った。


「逆に、AI不使用がブランドになりすぎると、作家はAIを使っていても隠すようになる」


エミリーが頷く。


「正直に申告した人が損をする制度は、嘘を増やします」


プリヤが言った。


「分類は、透明性のために始まります」


「でも、報酬、露出、賞、契約、信頼と結びつくと、社会的身分になります」


エレナが俺を見る。


「佐伯さん。人工叡智の観点からは、どう整理しますか」


来た。


俺はマイクを入れた。


「まず、分類そのものを否定する必要はないと思います」


通訳が入る。


「読者が情報を得ること、賞や契約で基準を明確にすること、AI主要生成と人間中心の作品を区別することには意味があります」


レベッカとオーウェンが頷く。


俺は続けた。


「しかし、分類は価値順位ではありません」


「AI不使用が上で、AI補助が下」


「人間制作確認済みが本物で、AI共同制作が半分偽物」


「AI主要生成は低価値」


「そういう階層を作ると、分類は透明性ではなく、身分制度になります」


ソラが小さく頷いた。


俺は画面共有を開いた。


『AI利用区分・価値階層化防止レビュー』


AI利用区分は、読者や取引相手への情報提供のためであり、創作者の価値順位ではないと明示しているか。

AI不使用、AI補助、AI共同制作、AI主要生成などの区分を、上下関係として表示していないか。

区分が、検索順位、推薦、ランキング、価格、契約、賞、露出機会へ自動的に不利益を与えていないか。

AI補助を使う障害者、非母語話者、低資源地域の創作者を下位に置いていないか。

AI主要生成とAI補助を同じ扱いにしていないか。

AI不使用ラベルを、純粋性、人間性、道徳的優位の証明として過剰に演出していないか。

AI利用を正直に申告した人が、申告しない人より不利になる設計になっていないか。

区分ごとに異なる評価軸を用意する場合、その違いと理由を説明しているか。

区分変更、異議申立て、再分類の道があるか。

区分が作品単位ではなく、創作者本人への固定ラベルになっていないか。

AI利用区分によって、創作者コミュニティが対立や排除を強めていないか監査しているか。

分類は、作品を理解する入口であり、創作者を檻に入れる札になっていないか。


読み上げ終えると、画面の向こうで何人もメモを取っていた。


最初にレベッカが言った。


「三番は、かなり難しいです」


「ランキングや推薦は、読者の選好に反応します」


「AI不使用作品を好む読者が多ければ、自然に上がります」


プリヤが答える。


「読者の選好を反映することと、運営が制度的に下げることは分けるべきです」


ジョナスも言った。


「推薦アルゴリズムが、AI利用区分をどの程度反映しているか監査が必要です」


「表示だけと言いながら、実際には露出を変えている場合があります」


リディアが小さく頷く。


「投稿サイトでは、やりがちです」


「安全のためにAI主要生成を少し下げる」


「読者満足度のためにAI不使用を上げる」


「でも、その調整が積み重なると、見えない階層になります」


ソラが言った。


「AI補助が必要な人は、その見えない階層で沈むかもしれません」


セラが続ける。


「アクセシビリティ支援としてAIを使う場合、分類だけで下げるのは差別的になり得ます」


アーロンが発言した。


「賞の場合はどうでしょう」


「AI不使用部門、AI共同制作部門、AI生成表現部門を分けることは、階層ではなく評価軸の違いだと思います」


俺は頷いた。


「部門分け自体はあり得ると思います」


「ただし、どの部門が本流で、どの部門が隔離かを見る必要があります」


オーウェンが反応する。


「隔離?」


「はい」


俺は続けた。


「AI共同制作部門と名前をつけても、実際には端の小さな賞で、賞金も露出も低く、審査員も少なく、読者にも届かないなら、それは別評価ではなく隔離かもしれません」


会議室が静かになった。


オーウェンはしばらく考え、ゆっくり頷いた。


「たしかに、部門分けが公平に見えて、実質的には格下げになる場合があります」


ナオミが言った。


「逆に、AI主要生成作品が大量に低価格で流通すると、人間作家の市場が圧迫される問題もあります」


「はい」


俺は頷く。


「だから、AI主要生成の表示や市場整理は必要です」


「ただし、それは創作者の人格価値を下げるためではなく、読者の選択と市場の透明性を守るためです」


「また、AI主要生成の市場でも、人間の企画、編集、選択、世界観設計がどの程度あるかは異なるはずです」


ハルが言った。


「つまり、どの区分にも内部の多様性がある」


「はい」


「AI不使用にも雑な作品はある」


「AI補助にも優れた作品はある」


「AI主要生成にも、企画や編集に人間の工夫があるものはある」


「区分は、品質そのものではない」


レベッカがメモを取る。


「区分は品質ではない。これは表示に入れた方がいいかもしれません」


ミカが言った。


「でも、読者は簡単に見たいんです」


「これは本物、これはAI、これは低い、これは高い」


「そう分けたがる」


俺は頷いた。


「だからこそ、表示側が単純化しすぎない責任があります」


「分かりやすさは必要です」


「でも、分かりやすさのために人を階層化してはいけない」


エレナが暫定整理を読み上げた。


『AI-use categories may support transparency, discovery, contracts, and fair evaluation, but they must not become a hierarchy of creative worth or human worth.』


AI利用区分は、透明性、発見性、契約、公平な評価を支える場合がある。


しかし、それは創作の価値や人間の価値の階層になってはならない。


続いて、


『A category is information about process, not a verdict on quality, sincerity, humanity, or artistic dignity.』


区分は、制作過程に関する情報であり、品質、誠実さ、人間性、芸術的尊厳への判決ではない。


俺は深く頷いた。


かなりいい整理だった。


今回も、どうにか着地した。


そう思ったときだった。


レベッカが、少し困った顔で言った。


「次回に回した方がよい問題があります」


エレナが頷く。


「お願いします」


レベッカは画面に、マーケットの新機能案を表示した。


そこには、読者向けのフィルターが並んでいた。


『AI不使用のみ表示』


『AI補助を含める』


『AI共同制作を含める』


『AI主要生成を除外』


『人間制作確認済みのみ』


「読者に選択権を渡すためのフィルターです」


レベッカは言った。


「しかし、このフィルターが広く使われると、表示されない作品は市場から消えます」


画面が静かになった。


「運営が下げているわけではありません」


「読者が選んでいるだけです」


「でも、その選択が集まると、AI補助やAI共同制作の作品は、ほとんど見られなくなる可能性があります」


俺は、ゆっくり息を吐いた。


来た。


次の崖。


読者の選択。


個人の自由。


フィルター。


見たくないものを見ない権利。


だが、その積み重ねが、誰かを市場から消す。


エレナが静かに言った。


「次回は、選択の自由と見えなくなる創作を扱いましょう」


画面が消える。


俺は椅子にもたれた。


「誰も禁止していないのに、誰にも見られなくなるのか……」


AIチャットを開く。


AI利用区分のフィルターで、読者がAI補助やAI共同制作を非表示にできる。個人の選択だが、多くの人が使えば作品が市場から消える。どう整理すればいい?


AIは答えた。


『次の論点は、個人の選択が集積して可視性の構造を作る問題です』


「また見えなくなる話か」


『はい』


『誰も禁止していなくても、表示されなければ存在しないのと近い効果を持つ場合があります』


俺はメモ帳を開いた。


次のタイトルを書く。


選ばれない自由は、消える自由なのか。


保存。


それから、今日の記事を書き始めた。


タイトル。


創作を分類すると、創作者も分類されるのか。


本文。


AI利用区分は必要だ。


読者に情報を与える。


契約や賞の基準を明確にする。


AI主要生成と人間中心の作品を区別する。


それには意味がある。


しかし、分類はすぐに価値順位へ変わる。


AI不使用は上。


AI補助は下。


AI共同制作は別枠。


AI主要生成は低価格。


そうなれば、区分は情報ではなく身分になる。


俺は最後に書いた。


分類は、作品を理解するための入口でなければならない。


創作者を檻に入れる札にしてはいけない。


AIを使ったかどうかは、制作過程の情報であって、人間性や芸術的尊厳への判決ではない。


保存。


公開。


画面に通知が出る。


公開しました。


黒瀬さんからコメントが来た。


『分類は便利ですが、広告でもカテゴリがそのまま単価や表示順位になります。タグのつもりがランクになるのは、本当に起こりがちです』


読書会の主催者からも届いた。


『分類は、創作者を檻に入れる札にしてはいけない。次回の議題にします』


神崎教授からは、短いコメントだった。


『棚を選ぶ自由は、棚の奥に押し込む自由にもなる』


俺は、その一文を見て、静かに目を閉じた。


次の問いは、もうそこにある。


選ばれない自由は、消える自由なのか。


人工叡智は、個人の選択という自由が、集まったときに誰かを見えなくする場所へ進むことになる。

第82話では、「AI利用区分」と「創作の価値階層化」が扱われました。


前回、AIを使ったことだけで人間創作ではないとは言えない、と整理されました。


重要なのは、どの工程で、どの程度、どの判断を、誰が担ったかです。


そのために、AI利用表示を段階化する案が出ました。


AI補助あり。


AI共同制作。


AI主要生成。


AI不使用。


人間制作確認済み。


こうした区分は、読者への情報提供、契約、賞、権利処理のために必要になる場合があります。


しかし、問題は、その区分が価値順位へ変わることです。


今回の中心となる整理は、これです。


分類は、情報である。


しかし、扱い方によって身分になる。


AI不使用が上。


AI補助が下。


AI共同制作は別枠。


AI主要生成は低価格。


そうした扱いが広がれば、分類は透明性ではなく階層になります。


今回、真司たちは「AI利用区分・価値階層化防止レビュー」という考え方へたどり着きました。


AI利用区分は、読者や取引相手への情報提供のためであり、創作者の価値順位ではないと明示しているか。


AI不使用、AI補助、AI共同制作、AI主要生成などの区分を、上下関係として表示していないか。


区分が、検索順位、推薦、ランキング、価格、契約、賞、露出機会へ自動的に不利益を与えていないか。


AI補助を使う障害者、非母語話者、低資源地域の創作者を下位に置いていないか。


AI主要生成とAI補助を同じ扱いにしていないか。


AI不使用ラベルを、純粋性、人間性、道徳的優位の証明として過剰に演出していないか。


AI利用を正直に申告した人が、申告しない人より不利になる設計になっていないか。


区分が作品単位ではなく、創作者本人への固定ラベルになっていないか。


今回の中心となる言葉は、これです。


区分は、制作過程に関する情報であり、品質、誠実さ、人間性、芸術的尊厳への判決ではない。


しかし、最後に新しい問題が出ました。


読者向けのAI利用フィルターです。


AI不使用のみ表示。


AI補助を含める。


AI共同制作を含める。


AI主要生成を除外。


人間制作確認済みのみ。


読者に選択権を渡すための機能です。


しかし、多くの人が特定の区分を非表示にすれば、その作品は市場から消えていきます。


誰も禁止していない。


運営が削除したわけでもない。


読者が選んでいるだけ。


それでも、見えなくなる創作があります。


次回は、「選ばれない自由は、消える自由なのか」という問いへ進みます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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