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8 ほの…ぼの……?



 その後、パウルはクラウディアの舎弟となった。

 クラウディアは何度も断ったのだが、パウルがどうしてもと諦めないので、めんどくさくなってOKしてしまったのだ。押しかけ舎弟である。

 舎弟になった後に、クラウディアが王太子の婚約者であることを知ったパウルはとても驚いていた。が、同時に何やら納得もしたらしく「やっぱりクラウディア様はただの貴族令嬢ではなかったんですね。俺の人を見る目は確かだと自信を持ちました」と胸を張っていた。


 そして、パウルは思ったよりも賢い男だった。パウルは己の迷惑魔法を無効化したのはクラウディアだと気付いている。つまりクラウディアが相当な能力を有する魔法使いだと分かっているということだ。なのに、舎弟になってからのパウルはその事に一切触れない。触れてはいけないと理解できるあたり、なかなか見込みがある男だ。そうは言っても用心深いクラウディアはもちろん保険を掛けている。パウルがクラウディアの魔法の能力について口外しようとすれば、瞬時に彼の口が大きく裂ける保険だ。その名も【秘密をばらそうとしたら口裂け男になっちゃう魔法】である。そのまんま過ぎる。相変わらず命名センスは無い。


 



 今日の放課後も、クラウディアはギルベルトとともに学園カフェでまったりと過ごしている。


「ねえ、クラウディア。どうして王宮魔法使いが君の舎弟になっているんだい?」

 ギルベルトが何とも言えない微妙な表情でクラウディアに尋ねる。

「オホホ。パウルは私の事を尊敬しているのですって。最初は断ったのですけれど、どうしても舎弟にして欲しいと粘るものですから、ついつい絆されてしまいまして」

「そのパウルとか言う魔法使いは信用できるの?」

「私には絶対服従ですわ。ただ彼は少々性格に難がありますので、追い追い私が調教――いえ矯正していくつもりです」

「何か、妬けるな」

「ギルベルト様も調教をご希望ですか?」

「いや、違う! 違うぞ! そういう意味じゃない!」


「ギルベルト様と私が結婚するのは今から5年後でございましょう? それまでにパウルが立派な王宮魔法使いに成長出来たなら、彼を子供の専属護衛魔法使いにしたいと思っておりますの」

「子供……?」

「ギルベルト様と私の子供のことですわよ」

「へ? 俺とクラウディアの子供?」

「そうです。この私から産まれるのですもの。さぞかし美しい子でしょうね」

「クラウディアから産まれる……」

「(はっ!?)まさか、ギルベルト様。赤子はコウノトリが運んでくると……?」

 もしや王家の箱入り王太子には早過ぎた話題だったのだろうか? と焦るクラウディア。

「イヤイヤイヤ。俺、13歳だぞ!? ちゃんと知ってるからな!」

 真っ赤な顔で主張するギルベルト。

「それは失礼いたしました。オホホホホ」


 そこへパウルと公爵家の猟奇的な侍女がともにやって来た。

 二人はまず王太子ギルベルトに礼を取った後、クラウディアの側に控える。

「あら、もうそんな時間?」

 侍女に声を掛けるクラウディア。

「はい、お嬢様。お迎えに上がりました」

 普段はオカシナ様子は見せない優秀な侍女である。

「今日はパウルも一緒なのね。パウル、王宮の仕事は大丈夫なの?」

「はい、クラウディア様。今日は午後から半日休を取っているので、俺もお迎えに上がりました」

 パウルはクラウディアの舎弟になってからというもの、王宮の仕事が休みの日はほぼアードルング公爵邸に入り浸っている。立派な王宮魔法使いになれるようクラウディアから出される課題に取り組む一方で、兄ゲオルクの鍛錬に付き合わされたり、父に頭頂部の砂漠化を止める魔法を開発するよう命じられたり、母にパシリとして便利に使われたりしながら、けっこう楽しそうなパウル。ちなみに15歳のパウルと猟奇的なアラサー侍女は意外にも相性が良かったようで、いつも仲良くケンカをしている。年の離れた姉弟といった雰囲気だ。


「お前がパウルか?」

 ギルベルトに声を掛けられ、緊張した表情になるパウル。

「は、はい。王太子殿下」

 ギルベルトは、パウルの頭のテッペンから足の先まで全身をねっとりと舐め回すように視ると、おもむろに言った。

「ふ〜ん。イケメンなんだな……」

 パウルの顔色が真っ青になる。

「い、いけません! 王太子殿下! 俺はソッチの気はありません! お許しください!」

「は?」

 何を言われたのか意味が分からない様子のギルベルト。

 パウルの早合点に思わず噴き出すクラウディア。



 放課後の学園カフェには今日も優しい時間が流れている――ほっこりほのぼの。ほの…ぼの……?

 









 終わり



 ◇ おまけ ◇


パウル「クラウディア様。俺、どうしたらいいんでしょう? 王太子殿下に求められたら拒否出来ないですよね?」


クラウディア「そこは拒否しなさいよ。生半可な気持ちで受け入れるんじゃないわよ。BL舐めんな!」


パウル「受け入れる? やっぱ俺が下ですか?」


クラウディア「いいえ。個人的には従が攻めで主が受けの主従モノが好きだわ♡ そしてリバは許さない派よ」


パウル「クラウディア様の好みなんか知りませんよ! あぁ、どうしよう!?」


クラウディア⦅面白いから暫くこのネタで遊ぼうっと⦆




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