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夏休みの思い出

 海での戦いから数日後、ロンは夜になると外へ出掛けるようになった。

 ……多分だが、(ほこら)に行っているんだと思う。


 あれから何事もない日常は続いている……ロンからも特に話もなく、普通にポテトチップスを要求し、珍しい食べ物に興奮して楽しい日は過ぎていった。


 ――そして夏休みを迎えた。


 パパの提案でママの実家に行き、畑を手伝う計画案が家族会議で可決された。

 ひとり反対票をあげた。お兄ちゃんは不貞腐(ふてくさ)れていたが家族みんなで、おじいちゃんとおばあちゃんに会いに行くことは大切だと思う。


 もちろんだが、ロンも連れて行く。


 パパがレンタカーを借りてきて、みんなで日帰りで行くことになった。

 前日は早めに就寝して真夜中に出発する。


 高速道路から見える街の夜明けを眺め。――車は進む。

 その景色を私は楽しんでいるがロンは爆睡中だ。


 空が明るくなったころ。高速を降りて普通の道路を走る。朝も早いのでそんなに車は走っていない。やがて景色は段々と田んぼと畑が多くなって来て到着。

 おじいちゃんとおばあちゃんが住んでいるママの実家に。


「おはよう、チハルよくきたねぇ」

 玄関でおばあちゃんが出迎えてくれた。


「おはようございます。おばあちゃん」と私は元気よく挨拶した。

「あらまぁ。キツネかい。随分とおとなしいねぇ」


 おばあちゃんはロンに気づいて頭を撫でる。

 こういう時のロンはおとなしくなすがままにさせている。


「おはようございます。お母さん。今年も来ました」

「ただいまぁ。母さん」


 パパとママがおばあちゃんに挨拶したところで奥から出て来たおじいちゃんも混ざり和やかに話し出したので、ロンを連れて庭にでた。


『なぁ。チハルちん。妾は何をするのじゃ』

「今日はおじいちゃんの畑を手伝うんだよ。ご褒美にメロンが食べられるよ」


『なんと、メロンかぁ。それはええのぉぉ』と目をキラキラさせる。


 そう。ロンは果物も好きなのだ。ママもよくいろんな果物を買って来ては食べている。このときにおこぼれをもらいにいく。


 この前なんか。初めてパイナップルを食べて喜んでいた。

 そうだよね。三千年前に一度目覚めたことがあるといっていたが、バナナやパイナップルなんか食べることないよね。


 なんやかんやと準備が整いビニールハウスに入り、メロンの収穫を手伝う。

 このほかにもトマトとキュウリも栽培しているが主に自分たちで食べているとおばあちゃんから聞いた。


 先におじいちゃんがビニールハウスの中で作業を始めているので、パパは収穫の手伝いをするが、私とお兄ちゃんは主に運ぶだけ。箱詰めは、おばあちゃんとママの担当だ。


 メロンの美味しそうな香りがするビニールハウスの中のお手伝いは何となく楽しい。

 外で様子をみているロンはビニールハウスに張り付いて残念がっていた。


 ――ようやく予定していた数の収穫を終えた。


「さて、お茶にしようかのぉ」とおじいちゃんがみんなに声を掛けた。

「「はーい」」


 さきに家に戻って準備をしていた。おばあちゃんとママが麦茶と取れたてメロンを一口サイズに切り分けてお盆に乗せ持って来てくれた。


「ご苦労さん。こっちで休んでくだされ」

「パパも、お兄ちゃんもメロンを用意したわよ。チハルも手伝ってね」

「はーい、ママ」


 ロンがその脇を美味しいそうに眺めながらついてくる。

『はやく食べたいのじゃ』

 ぴょんぴょん跳ねるロン。


 地面にブルーシートを広げてみんなで集まる。

 皿に盛られているメロン。私も一口食べて、ロンにも食べさせる。


『チハルちん。みずみずしいく美味しいのうぉ。くしゃくしゃ』

 ロンはニッコリと笑った。


「そうだね。ひと仕事を終えたあとのメロンは美味しいよね」


 メロンと一緒にひやしたキュウリとトマトも頂いた。

 お兄ちゃんは少し塩味が聞いたキュウリをバクバクと食べている。

 その隣でママとおばあちゃんも楽しそうに話が弾んでいる。


「チハルもありがとうなぁ」とおじいちゃんから礼を言われた。

「うん。楽しかった」

 おじいちゃんも私を見て顔をほころばせた。


 私が夏の暑い日にこんなこともいいなぁと思ったとき。

 ……パパからはこういう感じが「一団和気(いちだんのわき)」て言うんだよって教えてもらった。


 そのあと、あれこれとお手伝いは続き全てが終わると収穫したメロンを軽ワゴンに積んだ。


 ――おじいちゃんは運転席から私たちに声を掛ける。


「ワシぁは、道の駅で売ってくる。さきに昼にしてくれ」

 パパがおじいちゃんを見送るので私も側に立つ。


「お父さん。今日はお世話になりました」

「おじいちゃん。いってらっしゃい」

「また、来てくれな。チハルもいつでも遊びに来るんじゃぞ」

「はい、おじいちゃん」


 おじいちゃんは午後のお客さんも買ってもらえるように2回に分けて「道の駅」という道路にある休憩所でお手頃価格で売っているらしい。

 目印となる「俺の魂のメロン!」と箱に印刷されていた文字は謎だ。


『チハルちん。妾はこのメロンが大好きになったぞぉ。毎日食べてもよいのじゃ』

「お店で買うと高いから無理だよ。メロンゼリーで我慢して」

『うぅぅ。仕方ないのうぉ』


 そのあとは軽く昼御飯を頂いてから、おみやげのメロンもしっかりもらって、再び車で家路へと戻った。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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