第14話 異常存在調査完了報告書 『連続空き家完全燃焼事件』
【機密指定:第二種秘匿案件】
異常存在調査室 第弐調査部隊
案件番号:E-0129
異常存在調査完了報告書
対象名称:連続空き家完全燃焼事件
危険度:C
分類:自然発生異能者
関連事象:異界接触
・概要
岩岡市文京区の住宅街を中心とした近隣地域において発生していた、無人の空き家が跡形もなく完全燃焼する連続事案について調査を実施。
第弐調査部隊による現地調査、近隣住民への聞き込み及び張り込みの結果、事件の首謀者を特定。
対象の確保及び事情聴取を完了したため、本案件の調査終了を報告する。
・対象情報
氏名:霧原 霞
性別:女性
年齢:17歳
身分:高校生
異能分類:異界接触型異能者
・確保経緯
これまでの事件発生時刻及び周辺住民から得られた情報をもとに対象の行動範囲を限定。
事件発生が予測される時間帯に張り込みを実施した。
聞き取り調査中、調査員とすれ違った際の様子から不審に思い、身元を調査し、特定。
自宅へ捜索へ向かい、任意同行を願い出るとこれを承諾。抵抗行為は確認されなかった。
・事情聴取
対象への聞き取りにより、以下の内容が判明。
対象は約二ヶ月前、睡眠時に不可思議な夢を見たとのこと。恐らくは夢という形で異界に侵入したとされる。
対象は異界内部において『天使』の姿をした存在と遭遇したと証言している。
起床後、高熱を発症。程なくして快癒後、自身の内に未知なる力の存在を感じる。
以降、能力が制御不能となった際、自身の体温が危険な領域まで上昇するようになった。
対象はこれを生命維持上の危機と判断。
自身の中の熱が上昇しきった時、能力の放出及び制御方法の確認を目的として、人が存在しないことを確認した空き家へ侵入して複数回にわたり異能を使用していたことを認めた。
この「上昇しきった時」というのは霧原霞本人の中にある一種の勘のようなものらしく、口では説明できないとのこと。
・異能
能力名
『熾天火』
対象自身を起点として高熱及び特殊な火炎を発生させる異能。
通常の火炎とは異なり、対象物を燃焼させるだけでなく、極めて短時間で完全な灰も残さない消失状態に至らせる高い熱量を有する。
名称については、対象が異能発現時に目撃したと証言する『天使』の存在及び、熾天使が炎と関連付けられることから便宜上命名。
現在、能力の詳細及び異界で遭遇した存在との関連性について調査継続中。
・対象の人間性について
事情聴取の結果、対象に意図的な加害目的は確認されなかった。
また、これまでの事件において人的被害及び死傷者は確認されていない。
対象は自身の行為によって発生した損害を認識しており、被害を受けた物件所有者に対する謝罪及び賠償の意思を示している。
確保後の調査にも協力的であり、異能調査室の指示に対する拒否行動も確認されていない。
以上の点から、対象には情状酌量の余地があると判断する。
・処遇
対象の未成年である点、事件による人的被害が存在しない点、本人に反省及び損害賠償の意思が確認されている点を考慮。
対象を刑事処分相当ではなく、異能調査室による保護・管理対象とする。
物件に対する損害賠償については、異能調査室が一時的にこれを肩代わりする。なお、これらは経費として経理に申請済み。現在審査中である。
また、異能の適切な制御及び社会生活への復帰を目的として、第壱実働部隊への編入を決定。
・配属先
第壱実働部隊
隊長:呉山 蛭子
対象は呉山隊長の直接指導下に置き、異能『熾天火』の制御訓練を実施する。
なお、対象は第壱実働部隊における初の副隊長候補として経過観察を行う。
・調査員所見
対象、霧原霞は、異能を悪用する目的で犯行を行ったわけではない。
しかし、結果として複数の建造物に甚大な損害を与えている。
本件は、人の卵事件以降に確認され始めた「異能を得た一般人が、自身の能力を理解できないまま事故的に異常事案を引き起こす」という事例の一つとして記録する。
異能者を単純に加害者、あるいは魂堕ち、または怪異として扱うのではなく、その能力及び本人の人間性を確認した上で処遇を決定する必要がある。
対象については今後、第壱実働部隊での訓練及び実務経験を通じ、異能の完全制御を目指すものとする。
・対応状況
犯人特定:完了
対象確保:完了
事情聴取:完了
被害者対応:継続中
異能管理:第壱実働部隊へ移管
本件をもって、連続空き家完全燃焼事件は調査終了とする。
担当調査員:第弐調査部隊隊長 夜崎 幽
報告書記録者:第弐調査部隊隊長 夜崎 幽




