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理想の世界で苦しむ私へ  作者: Miley
TAKUYA's story
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Episode1


「俺じゃ凛ちゃんを幸せにしてあげることはできない。離婚しよう」


 夫の拓哉はそう言って、記入済みの離婚届をテーブルに置くと静かに部屋を出て行った。


 気づけば、頬を伝って一筋の涙が落ちる。


 こんな瞬間ですら私は「人間の涙って暖かいんだな…」と、まったく関係のないことを考えていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――




 拓哉と結婚したのは、5年前。


 同じ会社の同僚で、喫煙所で雑談するうちに仲良くなり付き合うまでに時間はかからなかった。付き合い始めてから2年ほどで同棲を始め「毎日会えるね」と笑いあった日々がキラキラと脳裏に輝く。


 私たちはそれぞれ転職し、私は東京で観光業のオフィスワークに就き、拓哉は県内の大手アパレルメーカーでプレーヤーとして働き始めた。


 休みも合わず生活リズムも違ったけれど、お互いに一人の時間を確保できる環境は悪くなかったし、同じ家に帰り、休みが被った日は二人でカフェに出かけ、たまには飛行機に乗って旅行したり、一緒にいる時間が少ない中でも楽しく過ごしていたと思う。


 家事や食事などの生活レベルが似ていたこともあり、喧嘩はほとんどない。拓哉が元カノと連絡を取り合っていたときには大喧嘩もしたが、それくらいの出来事だった。


 生活は安定していて、一緒にいる時間は幸せだった。「一生この人と一緒にいるんだろうな」と、互いに心のどこかで思っていた。

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